◆2:スローライフへの第2歩

第27話 所詮はガキのする事だ


◆カイザルside



 アーシャと手合わせは、この世界の強者がどの程度のものなのか測る上でかなり有益であったと言えよう。


 それでもまだこの世界の住人がどれほどの戦闘力を持ち、どんな能力を使えるのか全て分かった訳ではないので油断は禁物だろう。


 そもそも前世で俺が死んでしまった理由が、その油断からできた隙を死に際の敵に狙われてしまい対処が遅れてしまったからである。


 その瞬間俺の命は無理でも部下だけは何とか守ろうと判断して動いたのだが、その結果部下が生きているのか、防ぎきれずに巻き込まれて死んでしまったのか確認できずに俺は死んでしまった。


 せめて生きていて欲しいと今では願う事すらできない。


 もうあんな経験をしない為にも、大切な人を守る為にもまずこの世界の強者がどの程度か知れたからといって油断して同じ轍を踏むわけにはいかないからな……。


 そんな事を思いながら俺は馬車に揺られて学園へと向かう。


「どの面下げて今日も学園に来たんだ? カイザルよぉ?」


 すると早速プレヴォがちょっかいを出してくるのでそれを無視して歩く。


 鬱陶しい羽虫ではあるものの、実害と言えば五月蠅いだけである。


 その程度で『鬱陶しいから』と、学園内で叩き潰せば学園の規則的には俺の方が悪くなってしまうだろう。


「知っているんだぜ? どうせあのダンジョンの異変もお前が仕組んだ事なんだろう? そして俺にオリヴィアをけしかけたのも、お前が裏で糸を引いて俺を貶める為の罠だったんだよなぁ?」

「何度も言うが、違う。出鱈目は止めろ」


 しかしながら嘘を否定しないとそれを肯定したと捏造されるのが貴族社会であり、この学園の生徒達から見れば戯言だと分かるようなバカな話だったとしても貴族の嫡男として今まで生きて来たプレヴォが話すのであればしっかりと否定しなければいけない所は否定していかないと学園の外であることない事を言いふらされてはたまったものではないからな。


 恐らくプレヴォの事である。


口頭だけの言った言ってないという弱い証拠では噂は流れるかもしれないがそれでも俺の評価を著しく下げる事は出来ない事くらい理解しているだろう。その程度の事でここまで煽り続けるのも不自然である事を考えれば、プレヴォの執拗な態度は懐に録音系の魔道具を仕込んでおり『ほら、コイツは否定しなかった』と証拠を捏造しようとしているのであろう。


 そんな見え透いた罠に引っかかる訳が無いのだが、だからといって鬱陶しくないわけではないのでそろそろぶっ飛ばそうかと考えている。


 所詮貴族の元嫡男と言えども所詮はガキのする事だ。


 逆に録音されると立場がヤバくなる、簡単に破綻してしまう作戦であるという事すら気付けていないのだろう。

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