第25話 生きる活力が自然と湧いてくる
そして私はとある商人に拾われ回復役によって最低限の回復をされた後奴隷商へと売られてしまう。
何故神はまだ私の事を殺してくれないのか?
何故商人や奴隷商はこんな身体になった私を殺さずに生かそうとするのか、私にはいくら考えても理解できなかった。
死にたいけれども奴隷商によって隷属の魔術をかけられている私は命令によって出された食事は食べるように言われている上に自殺や自傷行為も禁止されている為、食事を拒否したり、壁に頭をぶつけたりして自殺をする事も許されずに、ただ死んだように生きながらえる日々が続いた。
そんな時に私のご主人様が現れて、私を買ってくださった。
当初はそういう性癖だと勘違いしてしまっていたり、召喚したスライムの身体で全身を包まれた時はテイムしているスライムの餌にするのかと思っていたのだが、そういう事をされる事も無く、意識が回復した私が目にしたものは、失った筈の四肢と視野が広がった感覚であった。
「…………なんで、なんで殺してくれないのだっ!! やっと私は皆のもとに行けると思っていたのにっ!!」
私が気を失っている間に何をされたのか分かった私は『まだ死ねない。まだ仲間の元へ行くことができなかった』という感情をご主人様へぶつけてしまったのだが、ご主人様は言い返す事も無くただ私が落ち着くのを待ってくれた。
「でも、アーシャの仲間や家族の思い出はまだアーシャの中にある。アーシャが生きている限りその人たちはアーシャの思い出の中で存在し続ける。その思い出さえも亜竜に奪われるのか?」
そしてご主人様は私が落ち着くと、そう優しく語りかけてくる。
その言葉は私の中に、乾いた土に水をかけるかのごとくスッと入り、生きる活力が自然と湧いてくる。
「もう大丈夫そうだな……」
「…………あぁ、大丈夫だ……ご主人様。」
そんな私を見て、雰囲気が変わった事に気付いたのかご主人様が『もう大丈夫そうだな』と優しい声音で声をかけてくれる。
そして私は、ご主人様の胸を借りて小一時間声を出して泣き続けるのであった。
◆
「本当に、最初から本気を出しても良いのかい?」
あの日から数日後、私はご主人様の実家へと一緒に戻り、中庭で武器を手にしてご主人様と相対していた。
何故武器を持った状態でご主人様と相対しているのかというと、ご主人様からの要望で手合わせをするように頼まれたからである。
しかしながら、いくらご主人様の要望と言えども私は冒険者ランクAであり、流石に本気で相手にする訳にはいかないと思った為、一度確認を取る事にする。
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