第19話  楽観視していた


 結局私は、カイザル様やプレヴォ様の外見や外面だけで判断して、その内面を見ようとしていなかったのだろう。


 その結果がこれである。


 それだけ、この二人に興味が無かったという事であり、それで愛だの恋だのとカイザル様の前で言っていたのだからさぞ滑稽だったことだろう。


 結局、私はプレヴォと恋愛をしていたのではなくカイザル様と婚約破棄ができる切っ掛けが欲しかっただけなのかもしれない。


 そしてその副産物として恋だの何だのに浮かれていたのだろう。


 なんと幼稚で浅はかであったのか今の自分ならばそれが良く分かる。


 それは『カイザル様よりもプレヴォの方がヤバそう……』と直感的に思ってしまうくらいには。


 しかし、だからといってまた婚約破棄するわけにもいかず、これが恐らく私が犯した罪の禊なのだろう……。


 そんな事を思いながら私はプレヴォの話を右から左へと受け流していく。


 その後、学園は半休となり全員怪我などが無いか確認した後に問題なければ帰宅という流れとなったので、私も他の生徒と同様に帰宅する事にする。


 途中プレヴォが放課後デートしようなどと誘って来たような気がするのだが、そんな気分になどなれる訳もなく断ったのだが、これがこれから続くのだと思うと今から憂鬱である。


「ただいま帰りました……」

「やっと帰宅してきたか……。待っていたぞバカ娘」


 そして馬車に乗って家に帰ると、父親が玄関の前で仁王立ちして待ち構えているではないか。


 その姿から、きっと今日も勝手にカイザル様と婚約破棄をしてプレヴォと婚約する事を決めた事に対して怒られるのだろうなと思うものの、自分でしでかした事の重大さに気付いていない当時であればいざ知らず、気付くことができた今の私からしたらお父様の怒りが収まらないのも理解できるし、それだけの事をしたのだという事も理解しているので、昨日とは違って素直に受け入れて怒られようと思う。


「まったく、お前のせいで私がどれだけクヴィスト家に頭を下げて来たのか分かっているのかっ!? 危うく殺されるかと思ったぞっ!! むしろ私の家族を全員殺されたって文句など言えない程の事をしでかしたという事を理解しているのかっ!?」

「申し訳ございません。当時はそこまでの事とは思っておりませんでした……っ」


 本当に、当時の私は考えが浅かったとしか言いようがない。


 面子の為に生きているような貴族の、そのメンツに後ろ足で砂をかけた後に踏みつけるような事をしでかす事が、どれほどの意味を持つのか頭では理解していたつもりではあったものの『全部何だかんだで良い方向に有耶無耶に処理されるだろう』と楽観視していたという方が正しいだろう。

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