第16話 一体誰が信じると?


「何を呆けている? 置いていくぞ?」

「あっ、ま、まってくださいっ!!」


 そして、今まではオリヴィアが魔物を倒していたのだが、ここからは魔物のレベルやランクが上がって来たようなので俺がオリヴィアの代わりに魔物を倒していく。


「あ、あの……?」

「何だ?」

「カイザル様は……何故今までその力を隠していたのでしょうか? 隠さずにいれば、その──」

「無能と他人から蔑まれる事も無かったのでは? とでも聞きたいのか?」

「は、はい……」

「フン、他人からの評価などくだらない。そんなものを得なくとも俺は公爵家の嫡男である事には変わりない。であれば、必要なのは力ではなく領地を経営する能力であろう?力などは外から雇えば良いではないか」

「…………」


 どれだけダンジョンの中を探索して来ただろう。


 かなり深くまで潜って来たせいか湧き出て来る魔物たちも討伐ランクA以上の魔物たちが増えてきており、そんな魔物たちを簡単に屠っていく俺の姿を見てオリヴィアはその疑問に耐えきれなくなったのか俺に『何故今までその力を隠して来たのか』と聞いてくる。


 そして、そのような質問が飛んでくる事は予め予想していた俺は、事前に考えていた答えをぶっきらぼうに返すのだが、それでもオリヴィアはどこか納得していないような顔をするではないか。


「…………で、でもやっぱりちゃんと評価されないのはおかしいと思いますっ!! このダンジョンから出れば私はちゃんとカイザル様の事を皆に伝えますからっ!!」

「好きにすれば良いと思うが、そんな戯言を一体誰が信じると?」

「そ、それは……」

「無駄な事で悩んでいないでダンジョンから抜け出す方法を考えた方が今は有意義ではあると思うがな」


 そしてこれが、俺がオリヴィアの前で自分の能力を隠さずに魔物を屠っていく理由である。


 勿論オリヴィアを見殺しにするという手も無い事もないのだが、それはそれで精神的に厳しいのと、そもそも俺が高ランクの魔物を倒した事をオリヴィアが他のみんなに伝えたところでまず誰も信じてはくれないだろう。


 それだけに俺の評価は地の底まで落ちているという事であり、今はその事がありがたい。


 それでもオリヴィアは納得していない表情をするのだが、これ以上言い合うつもりは無いのかそこで会話は終了してダンジョンの探索を続けるのであった。



◆オリヴィアside



 初めは何が起こっているのか分からなかったのだけれど、どうやら私とカイザル様は二人でダンジョンの中に取り込まれてしまったようだ。

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