第15話 どこまでお人好しなんだか
「ご、ごめんなさい……」
「それじゃ、気を引き締めてダンジョン探索でもするか」
そして俺たちは進化したダンジョンの中を進んで行く。
中にいるモンスターたちは幸か不幸か今のところ進化する前のモンスターたちと変わらず討伐ランクの低い魔物、スライムやゴブリンといった魔物たちが中心なのだが、明らかにダンジョンが進化する前と比べて魔物のレベルが上がっているのが分かる。
それだけならば良いのだが、あくまでも湧き出る魔物がスライムやゴブリンが『中心』というだけで、進化する前には出なかった高ランクの魔物もちらほらと出現してくるので、それら討伐にオリヴィアの魔力、体力、精神力はすり減っていくのが見て分かる。
どうせこいつの事だから『無能と呼ばれるほど弱い俺の為に一人でこの場を切り抜けよう』とでも考えているのだろう。
本当に、どこまでお人好しなんだか……。
ちなみに他の生徒なのだが、俺とは別に地上にいるマリエルから『マイマスターとアバズレ以外は全員地上部に吐き出されて無事でございます』という連絡を受けているので、その点に関しては一安心だろう。
しかしながら『ストレージから出ている状態』である以上マリエルをストレージから出す事もできない状況ではあるしマリえもんの手を借りられないという事でもある。
ちなみに、俺がマリエルに一カ月間指示や会話をしない状態が続けば自動的にストレージへ収納される機能はあるものの、流石にこのダンジョンの中で一か月もの間過ごすなどバカげている。
「そ、そんな……サラマンダーが出てくるなんて……っ!?」
それに、他の者達をストレージから出したところでどのみち説明しなければならないのであれば俺が自分でこの現状を切り抜けた方が簡単だろう。
「か、カイザル様……ここは私が引き留めておきますので逃げてください……カイザル様っ!?」
とりあえずオリヴィアがサラマンダーを相手にしている間に逃げろと言ってくるのだが、俺は無視してオリヴィアの前へ庇うように出る。
「何故この俺様がこんな魔物ごときから逃げなければならない?」
「な、何故って……、このサラマンダーの討伐ランクはC以上であり、私では勝てる見込みがかなり低いから──」
「頭が高いぞ、トカゲ擬きが。散れ」
「─……へ?」
そして俺は無詠唱で風魔術を唱えて、見えない刃でサラマンダーを切り刻み倒す。
その一連の流れが一瞬で終わってしまい、目の前で起きた光景をオリヴィアは脳内で処理できなかったのか固まってしまっているようだ。
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