第14話 さぞ滑稽に見えていた事だろう


「ダンジョンが……変化した……?」

「そのようだな。どうやらこのタイミングでダンジョンが進化したみたいだ」

「で、でも……このダンジョンは、文献からみても過去五百年は進化しておらず、低レベルの状態が最終ランクのダンジョンであったはず……。普通のダンジョンではダンジョンマスターを討伐してダンジョンコアで制御しない限りは百年から二百年程度で進化する筈なのに……」


 オリヴィアの言う通りダンジョンは百年から二百年周期で進化し、そしてダンジョンマスターを倒してダンジョンコアで制御する事によってダンジョンの成長を止める事が出きる。


 そして制御したダンジョンは国の管轄の元一般市民に開放されるのが通常である。


 しかしながら俺たちが潜っていたダンジョンはそもそも低ランクダンジョンであるにも関わらずダンジョンマスターを討伐せずに運用されている珍しいダンジョンでもあった。


 そのメリットは、人の制御下におかれていない生のダンジョンを体験できるという事なのだが、そもそもこの世界にとって自然の一部であるダンジョンを、制御下に置いていないにも関わらずどうにかしようというのが、そもそも無理があったのだろう。


 前世でも今世でも、いくら強くなろうとも牙を剥いた自然相手には人間というのはちっぽけな存在にすぎないのだから。


 それに数万年と存在し続けるものもあるダンジョン側からしてみればたった五百年程度の年月で分かったつもりでいる人間たちは、さぞ滑稽に見えていた事だろう。


「逆に考えればいつ進化してもおかしくない状態であり、それがたまたま運悪く俺達の授業中に起きたって事だろう?」

「そ、そんな……」


 その事実にオリヴィアは顔面蒼白になっていく。


 まぁ、確かに普通に考えれば、経験豊富な冒険者であればいざ知らず、ただの学生が進化して未開拓のダンジョンに置き去りにされたという状況は不安でしかないだろう。

「ほ、他のみんなは大丈夫なの……っ!?」


 そして、その事実を受け入れても尚他人の心配ができるオリヴィアは、俺には勿体なさ過ぎるくらいに良い女なのだろう。


 その点に関しては婚約破棄をしてくれて良かったとさえ思う。


「他の人の事を心配するよりもまずは俺たちが無事にこのダンジョンから脱出する事が先決だと俺は思うが?」


 しかしながら、他人の事を思えることは美徳であるとは思うのだが、それで自分の事がおざなりになってしまい、死んでしまっては元も子もないので軽く釘を刺しておく。

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