第3話 今の俺であれば理解できる

 そして俺は、今の状況に変わらず気付いていない体で自分のクラスへと向かう。


 すると、教室の中で俺の婚約者であるオリヴィア・ド・ロレーヌとプレヴォ・ド・ドゥアーブルが楽しく談笑している姿が見えるではないか。


 以前の俺であればこの時点で怒鳴り散らしていたのだろうが、さて、どうしたものか。


 正直な話婚約者であるオリヴィアが俺に愛想を尽かしているのは分かるし理解もできる。


 そして俺の婚約者と楽しく話しているプレヴォがオリヴィアの事を狙っている事も、プレヴォを見れば簡単に分かってしまう。


 それこそ、前世の記憶が戻る前の俺ですらその事に気付けるくらいには。


 というかこのプレヴォは侯爵家長男であり成績は魔術剣術は勿論座学も優秀、まさに文武両道である上にイケメンと来ている。


 唯一俺が勝っている部分は親の爵位が公爵でありプレヴォよりも上であるという事くらいなのだが、それ以前に性格がゴミ過ぎる時点で俺がオリヴィアに好かれるなどというのはあり得ない事くらいは、今の俺であれば理解できる。


 ちなみに授業とはいえ俺とプレヴォの戦闘による勝敗はゼロ対十三である。


 勿論ゼロが俺であるので、人として性格は勿論物理的な強さにおいてもプレヴォよりも劣っている為、客観的に見てオリヴィアのタイプがどちらかなど火を見るよりも明らかであろう。


 ここで強くなると努力するのではなく、金と権力の力でどうにかしようとするあたりが俺のクズ具合が窺えるのだが、想像の通り俺とオリヴィアとの婚約は金と権力を使って半ば強引に取り付けたものである。


 これで自分に惚れていると今まで思っていたのだから本当に今までの俺はどうかしているというか、ただのバカであったのであろう。


 さて、オリヴィアとプレヴォが二人でいる所に入ると色々と面倒くさい事になりそうなので正直言うと教室へは入りたくはないのだが、ここで立ち止まるのもそれはそれで不自然なので俺は意を決して教室へと入って行く。


 すると俺が登校するのを待っていたのかのようにプレヴォが即座に反応すると、勝ち誇ったような笑みを浮かべ、こちらへ来るではないか。


 それを見て俺は物凄く嫌な予感がしたので、頼むからその予感は外れてくれと思うのだが、当然そう都合よくいく訳もなくプレヴォは俺の前まで来ると、挑発的な笑みを浮かべてくるではないか。


 そしてそんなプレヴォの後ろには俺から隠れるようにオリヴィアの姿が見える。


「やっと登校して来たようだねカイザル・ヴィ・クヴィスト。 実は今日、君に伝えなければならない事があってね」

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