第6話 置き土産
枯れ木の魔女ミストリア。
そう名乗った老婆の異様な雰囲気に飲まれ、俺とミキオは押し黙った。
老婆の周りに光に照らされた埃が集まっていく。
「さぁ、もっとゆっくり見せとくれ。この老いぼれに、あんたらの魔力をじっくりたっぷりとな……ウヒヒヒ……」
老婆が手のひらを向けてゆらゆらと指を動かす。
すると埃がその動きに連動し、俺たちの周りに集まってきた。
ミキオがごくりと息を呑む。
カッ! っと老馬の瞳が見開かれた。
「
老婆は自嘲気味に笑うと、ガタリと背中を跳ね上げた。
「
「ファルシオン……宮殿」
「
そこまで一気に喋ると、老婆は電池が切れたかのようにガクリと安楽椅子に崩れ落ちた。
「あぁ……ワシは……ワシは
急に老婆が小さく感じられる。
舞っていた埃もいつのまにか床に落ちていた。
「これが、私からの最後の置き土産さ」
「そんな、まるで……」
「いい、行きな。振り返るんじゃないよ。振り返ったら、地獄を見てきた枯れ木の魔女ミストリアがあんたらを呪い殺すからね」
これは、彼女の
今まで魔女と呼ばれてきた彼女の最期の時を邪魔してはいけない。
俺はミキオの腕を掴むと、魔女の棲家を後にした。
「あぁ……◯△✕■□……盟約通り、私を連れて行きな……」
ギャルゥオガオグルグリュギュルガオン!
「ひっ……! タ、タマ……?」
バタンっ!
俺はミキオが振り返らないように頭を腕で押さえつけると、後ろ手で扉を強く閉めた。
「行こう、北へ」
老婆の言った言葉。
『数多の犠牲を踏みにじり』
そのフレーズが俺の頭にこびりついて離れない。
踏みにじって……しまったのだろうか。
俺と、おやっさんは。
木こりのフランクを。
枯れ木の魔女ミストリアを。
でも。
それでも。
俺たちは進まなきゃいけない。
おやっさんを元に戻し。
俺達が元の世界に帰るために。
(あなたたちに残してもらった置き土産、大事に使わせていただきます)
村の外れまで歩いた俺たちはそこでやっと振り返り、深々と礼をした。
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