第3話 山小屋発見!

 おやっさんの身長が伸びた。


 そして、欠けてたお守りも少し直ってた。


 つまり……?


 おやっさんとお守りは元に戻る……?


 え、どうやって?


 俺達がしたことといえば。


『狼に石をぶつけて撃退した』

 

 ……レベルアップ?


 もしくは。


『左利きを矯正しなかったから?』


 あるのか……そんなこと?


 う~ん……。

 ま、どうせこのまま進んでいけば、いつかわかるか。

 レベルアップなのか。

 はたまた。

 おやっさんの心残りを叶えてあげたからなのか。

 どちらにしろ、はっきりわかってるのは。


『おやっさんは元に戻る』


 戻る。

 戻るんだ。

 出来る、恩返しが。

 つっても俺、おやっさんに助けられてすぐ死んじゃったんだけどね……。


 しっかし、びっくりしたなぁ。

 あの、おやっさんが。

 俺にガミガミ小言ばっか言ってたおやっさんが。

 俺を褒めたことなんか一度もなかったおやっさんが。

 俺を嫌ってるとばかり思ってたおやっさんが。

 まさか。

 命をかけて俺を守ってくれるなんてなぁ……。


 にしてもこっちのおやっさん──つまりミキオは、自分がデカくなったことも、お守りが直ったことも大して気に留めてない様子。

 そらそうか。

 俺も子供の頃はなんでも受け入れてたし。

 幽霊だって普通にいると思ってたもん。

 俺にとっては奇跡でも、ミキオにとっては普通に感じることなのかなぁ。


 ただ……ひとつだけ気になることが。

 もし……。

 もしだよ?

 もし、このままミキオが成長したとしてさ?

 それって……。


 俺の知ってるおやっさん、なんだろうか。


 俺の知ってるおやっさんは右利きだ。

 このミキオは左利きでいくことになった。

 すでに道をたがえてしまってる。


 う~ん……?

 パラレルがどうのこうの……?

 やべ、俺頭よくないからわかんね……。

 そんな俺のパラレルおやっさんへの考察は、ミキオの「じょぼじょぼ音」によってすぐに打ち切られた。


 じょぼじょぼじょぼじょぼ~!


「ぎゃはは~! 大噴射~! ゲラゲラ!」


 はぁ……。

 山の中で立ちションかよ。

 しかもまぁ楽しそうに遠くまで巻き散らかしてるしさぁ。

 ガキだなぁ……ったく。

 これが、あのいかつかったおやっさんかよ……。


「おう! 兄ちゃんもシッコしねぇのか!? 我慢は膀胱に悪いんだぞ!?」


「あのなぁ? 山の中での立ちションってのは危険なんだぞ? それに水分補給だって次いつ出来るかわからないのに……」


「へ? 水ならあそこでもらえばよくね?」


「あそこって、そんな都合よく家なんかあるわけ……」


 あった。


 めっちゃあったわ。


 ぽつんと一軒家。


 おいおい。


 YOUはなぜ森の中で掘っ立て小屋ぐらしを?


「俺たち迷子なんだろ!? あそこで飯とか食わせてもらおうぜ!」


 ミキオがズザザ~と斜面を駆け下りていく。


「ちょ……! まだ安全って決まったわけじゃないから……! あぁ、もうっ!」


 ミキオの後を追って。


 俺は森の中に佇む掘っ立て小屋へと駆け出した。

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