10.30分ぶり2回目の再会

「あああ、もう俺は知らねぇぞ。外せっつってもむりだんな」


 店主の慌てようがすごい。ちょっとかわいそうになってきたな。別の場所でやったほうがよかったかもしれない。


 ともかく、この仮面、名前を『アルキミアの仮面』というらしいがその効果がわかった。さすがに装備した後なら、効果の確認ができるらしい。


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呪われたカースドアルキミアの仮面アルキミアマスク


攻撃補正・小

防御補正:マイナス・小

DEX強化

MP強化

VIT弱化

【呪い】

 【共生】

 【呪力強化】


 偉大なる錬金王アルキミアが作り出した装備品のひとつ。彼の技術の結晶たる装備は隔絶した性能を持っていたが、彼の死とともに変質。力を与える代わりに装備者を蝕み、代償を課す呪いの装備へと変容した。

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 これは、壊れ装備じゃね?。


 絶対に外せないことと、ピーキーであることを除くなら、あまりにも強い。効果をまとめると、殴られる前に殴れ、防御なんてさせん!って感じだ。そもそも俺は防御を上げるつもりがなかった。そもそもソロで持久戦なんてやってられんのだから、やられる前にやれ。短期戦上等だ。つまり俺にとっては神装備だ。


「く、くくく」


 想像以上の装備効果に、つい笑いがこみ上げる。


「ど、どうした?もしかして呪いでおかしくなったか?」


「いや、いいや。全く問題ない、絶好調だよ。いや全く、素晴らしい。あぁ店主。そんな顔しなくてもいい。俺はちゃんと正気だし、後悔も一切していない」


「いや!あぁ、いや、そうか。お前がそういうならそうなんだろう。それはお前の問題であって俺がとやかく言うべきことじゃないからな」


 いやホントこの店主、まともなことしか言わないな。なんでこんな怪しい店やってんだろう。


 そうだ、店主に迷惑かけちゃったし、詫びとしてモンスターの置物も一つ買っておこう。ネコ科っぽい動物で双頭で、足が6本あってしっぽは7本あるというなんかよくわかんないモンスターの置物を選んだ。なんのモンスターかわからないが作りはいい。気になったのでなんのモンスターか聞いたらこんなモンスターはいないらしい。製作の過程で指示が入れ替わりまくって出来上がった謎の置物だそうだ。


 さて、さっきは神装備だと言ったし、店主にも問題ないとは言ったが、一つだけこの仮面について気になることがある。そう、呪いだ。共生とか呪力強化とか、効果が想像しずらい。

 呪力強化のほうは解呪を弾いたことから、呪いを解きづらくしてると思われるが、ほかに効果があるかもしれない。共生のほうは本当にわからない。寄生とかじゃないならそこまで悪いだけの効果じゃないだろうと一瞬思ったが、生物学的には寄生も共生の一種だったはずなのでその限りじゃないかもしれない。


 というわけで、効果を調べるために知ってそうな人を訪ねることにした。


「来てもいいとはいいとは言ったけど、まさか30分もせず来るとは思わなかったよ」


 カレンがあきれたような声で言った。


「俺も来るつもりはなかったけど、知りたいことができちゃったからね」


「用件はその仮面のことかな?なんというかデザインは地味だけど、素材は結構よさそうだね」


「そう、この仮面の効果にわからないのがあって、それを聞きに来たんだ」


「わからない効果?装備の効果は大体見ればわかると思うんだけど……ともかく確認するから貸してくる?」


「ああいや、この仮面、呪われてるから外せないんだよ」


「呪いの仮面!?なにそれ、そんなものあるの?めっちゃ危ないじゃん」


 どうやら前例はないらしい。それでもこれの危険性を一瞬で見抜くあたさすがだな。


「露店を回ってたら見つけたんだ。漂流物らしい」


 そういいながら仮面の効果をとったスクリーンショットをカレンに見えるように表示する。


「アルキミアマスク………アルキミアって小国家連合にあるダンジョンの名前だよね。それが王都まで流れ着く?いや、呪いの仮面ならそれもあり得るか。効果もすごいね。ピーキーというか尖りすぎてる感じがするけど」


 さすが情報屋、アルキミアの情報もしっかり持っていた。


「あ、そうだ。アイシオ君、君この攻撃補正、防御補正の効果ってわかってる」


「?普通に攻撃力が上がって防御力が下がる効果でしょ?」


 与えるダメージが上がって、受けるダメージが増える。とにかく攻撃的な効果だと思っているが。


「まぁぱっと見、そう読めるよねぇ。実際はもっとすごいよ。」


 まじ?ダメージが増えるだけでも十分すごいと思ったんだけど。


「攻撃補正は攻撃に補正がかかるんだよ。攻撃力じゃなくてね」


「あんまり、違いがわからないんだけど」


「つまり攻撃の一連の行動すべてに補正がかかるんだ。攻撃ダメージが増えるのはもちろん、アーツや魔術の発動が早くなったり、命中しやすくなったりって感じでね。防御も同じく防御行動全体に補正がかかる」


 なるほどー。

 この瞬間、俺は、このマスクの評価を一段階下げることにした。メリットは十分あるので超優良装備であることは変わりないのだが、防御のマイナスが思ったより大きい。つまりこれ回避や受け流しにもマイナスになるってことだろう。特に回避にマイナスってのがきつい。防御にステータスを振りづらい以上ダメージを受けない前提で行きたいのに、回避やパリィまで難しくなると、自爆するだけの兵器みたいな戦いしかできなくなる。回避用のスキルも探したほうがいいかもしれない。


「本格的にピーキーな装備だな」


「そうだね。そんな装備が呪われてるなんてとんだトラップだ。まぁ鑑定もせずにつけるのが悪いと言えばそれまでだけど」


 そんなアホはそうはいないだろ。


 俺?俺は鑑定できたとしてもつけただろうかノーカンってことで。


「で、俺としては呪いのほうが聞きたかったんだけど」


「いやぁ、情報屋としては悔しいことこの上ないんだけど知らないんだよねぇ、両方」


 まぁじぃ?本格的にこの仮面ユニーク説が強くなってきたぞ。現状、未確認の効果をもった、明らかにほかの装備品と違う、つけたら一生外れない仮面。うーん、匂いたってきたな。


「とりあえずその呪いの情報と仮面の情報、まとめて買い取らせてもらえないかな。どんな状況で買ったのかとか詳しくしりたいな」


「いいよ。できれば積極的に広める方針で行ってほしいな。さすがに呪いの内容がわからないのはちょっと気持ち悪いから、ほかの事例が集まったほうが嬉しいからね」


「ちょっとしか気持ち悪くないんだ。私だったらすごい怖いなぁ。拡散はそのつもりだよ。呪いのアクセサリーがあるって怖すぎるからね。そういった注意喚起も込めて大々的に拡散させるつもりだよ」


 まぁあの注意喚起のアナウンスがある時点で、事故ってつけるみたいなやつはいないだろうが、その可能性が減るならそのほうがいいだろう。こんなんで引退とか嫌すぎるからな。


「代金はまず1万AGで、調査の内容次第で追加って感じでいいかな。正直、呪いのことってあんまり知らないから正しい査定をしかねるんだよね」


「問題ない」


「じゃあそういうことで。いやぁ初日から2回も新情報をとかすごいね。君に声をかけてみとよかったよ」


「俺としてはちょっと慌ただしすぎるから落ち着きたいんだけどね」


 残念ながら両方とも自業自得なんだよなぁ。でもしょうがないじゃないか。目の前にあまりにも気になるものがあるんだもの。突っ込まずにいられる奴なんているだろうか?いや居ない。


「私の個人的な経験則としては君みたいな人は、多分ずっと面倒事の渦中にい続けるタイプだと思うよ」


「いやな予言だ……」


 俺もそう思うから余計いやだ。


「ふふ、シンシャタイムスはいつでも情報提供を歓迎してるからいつでも来てね」


「支払いで破産させてやる……」

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