第4話:掃討
現在
ソマリア沖 パトナ号
作戦自体は極めてシンプルだ。海賊どもへの強襲と人質の救出。
ブリッジを押さえた次なる俺たちの目標は居住区の制圧だった。しかし事態は一刻を争う。
俺は部屋の奥の端末を見やり、「ランサー、
「朝飯前です」ランサーはぶっきらぼうに応えた。
「監視カメラの記録映像から船長が囚われている場所を割り出してくれ」
頷いたランサーは警備システムの手前に転がる遺体を蹴ってどかし、さっそく作業に取り掛かった。
「エローナ、お前は彼女を援護しろ」
「了解」感情を表に出さぬようエローナは応え、外階段から敵が上がってきた場合いつでも撃てるように片膝をついて屈み、
「ロドリゲス、お前は俺と来い。ランサーが船長を捜索する間、船内の掃除を続けるぞ」
「待ってました」ロドリゲスが気合を込めていった。
ブリッジには真下の居住区へと通じるドアが一か所あった。ロドリゲスがそのドア開けて、まずは隊長である俺が先陣を切って跳び込んだ。
自分たちを歓迎するはずの銃声が聴こえないかと、耳をそばだてた。今のところ敵の姿はなく、船内には波の音と船体のきしむ金属音だけが不気味にこだましている。そして足元からは波による上下左右の揺れがじんわりと伝わってきた。
船内は明るかったので、俺は暗視ゴーグルを外した。
「階段はクリア。
狭い階段を降りる間もヴァイパーをしっかり目線の高さに構え、いつでも撃てるよう構えておく。数歩遅れて、ロドリゲスも後に続いた。
居住区の廊下に出ると、俺は折り敷いた。敵の姿をはっきり捉えた。海賊が一人、AKライフルを胸に抱いている。
「
敵と遭遇したことを告げた俺は引き金に掛けた指に力をこめ、ヴァイパーの連射を放った。
「
俺は男が完全に死んだことを確かめると、他に動きがないか廊下を見通した。廊下は人同士がぎりぎりすれ違える程度の幅しかなく、両壁にはいくつか扉がある。
「廊下クリア」
廊下の安全を確保すると、俺たちは左右の扉を一つひとつ開け、船室内を手際よく捜索していった。医務室、船長室、寝室は無人だった。
そして最後の船室に突入しようとした時、ロドリゲスは俺に注意を促した。中で動きがある、と。
よく気づいてくれた。感心しながら俺は頷くと、物音を立てないよう慎重にドアの脇側に移動した。
それを見たロドリゲスは反対側のドア脇に立ち、3本指を立てて、2、1、とカウントを取った。0と同時に俺はドアを蹴り開け、間髪入れずにロドリゲスが室内に飛び込んだ。俺も数秒遅れて後に続き、中の状況を素早く見定めようと努めた。
そこは食堂で、室内には2人の人影があった。いずれもAKで武装した海賊たちで、あまりに突然の出来事に愕然とし、慌てて銃口をこちらに向けようとしている。人質の姿はいない。
「ウーバーイーツだ」初めに突入したロドリゲスは冷静に標的に狙いを定め、素早く連射した。被弾した拍子に身体を震わせた海賊は、ぐったりして動かなくなった。
「
俺は残り一人の海賊に歩み寄ると、強引にその場に押し倒した。
「
海賊の男は呟いた。その顔は恐怖で引きつっている。
「ほう、アラビア語か」
俺は装備をガバメント
「
アラビア語で問いただしたが、男は怯える一方で答えようとしない。
「カム・アンツン?」
もう一度、今度は男の額に銃口を強く押し付け、引き金に指をかけた。いよいよ命の危険を感じた海賊は、悲鳴交じりの声で答えた。
「
それだけ分かれば充分だ。俺は「ゲッタウェイ」のスティーブ・マックイーンよろしく片手で自分の顔を覆うと、海賊の頭部に弾丸を一発撃ち込んだ。海賊は床に頭蓋骨と脳の破片をまき散らし、大きく痙攣した後その体は動かなくなった。
「敵を排除。居住区、オールクリア」
「ジャンクフードの食べ過ぎでサイコパスの血でも目覚めたのか、コール?」
「俺はダン・ホワイトほどブチ切れちゃいないよ」まだ痙攣している死体の脚をどかしながら「これで7人始末したことになる」
〈隊長、人質を見つけました〉そのとき、ちょうどランサーから無線連絡が入った。〈船長は拷問されたあと、後部船倉に移されたようです。映像が残っていました〉
「よくやった。そこまで分かれば充分だ。こちらも居住区の掃除を終えたところだ」次に俺は全員に呼びかけた。「敵はあと8人残っている。甲板で合流し、船の船尾へ向かうぞ」
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