第一章 対界召喚編

第1話 プロローグ 不可解な存在が織り成す世界

 願う力が魔法になる、そんな世界に僕はいたのだ。

 ――だから、今思えば過ぎた願いはたちを呪っていたのかもしれない。

「のろい」「まじない」、とにかく永遠を求めた。関係に、思いに、すべてに、ずっとずっと変わらない呪いを。

永遠なんてありえないと心のどこかに思いながら、それでもずっと――。



――――――



「ねぇ――、もし願い事がひとつ叶えられるとしたら、またみんなと出会うまで何度でも生まれ変われるようにしてください、って......」


 少女は傷だらけで倒れこむ青年を抱きかかえながらそう囁いた。


「......もう聞こえないか、今までありがと。でも、一つだけお願い。必ず私を見つけてよね――、絶対だよ。どこにいても、どんな姿になっても」


 少女は悲しい表情を浮かべて眠る青年を抱きかかえながらそう囁いた。


 ――もうじき崩れ行く世界を背に、二人の少女は青年に告げた。

 

「「それじゃあ、――またね」」


 ――この声に、俺は応えられなかった。


 ――この声を、僕は覚えていられなかった。


 悔いはやがて願い、願いはやがて力となって崩壊と創造を歪ませていった。

 概念に分解され、曖昧な定義のまま、それでも世界は力の行使に従うままに姿を変えていく。一人だけじゃない、異なる誰かの願望を全て余すことなく織り交ぜて。


 ――その先に待つ世界に飛び込むのは僕だ。


 ――待つ世界の者として生きるのは俺だ。


 二つの願いに二つの器。願力の歪みに応える代償は、すぐさま『対界』へと現れた。

 織り成す世界は対を成し、新たな物語を紡ぎ出した。――物語に身を閉じ込めた不可解な存在によって。

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