対成す世界の願魔導師(エディゼート)
北村陽
第零章 『あ』『の』『?』『?』『?』『?』『?』
第0話 『対』『界』『?』『?』『?』
――気づけばそこは、一面が青で渇き切り、音までも澄み切った硝子の草原。晴天と夜空が滲むように混ざった奇妙な空の下、如何にも怪しげな青年が崩れた姿勢で座り込んでいた。青年は近づく存在に気づいたのか、特に驚きもせずこちらを振り向いた。
――やぁ。お前が次の......いや、何でもない。
まず初めに。
これから俺がする話は、今聞いたところでわからないと思う。長い前置きが必要になるけど、俺は疲れることがしたくないんだ。
――なんでそんな語り口なのかって?雰囲気ってやっぱ大事だろ。俺のこと、どう見たって怪しいと思わないのか?おい、すぐ頷くな。はぁ、別にお前がどう思おうと俺はこのまま続けるぞ。
まぁ、気を取り直して。どうかあっちの世界の物語を見てからまた来てくれ。一区切りずつでいい。もしくは一気に見た後思い出すようにここに来るのでもいい。
もし見てきたって言うのなら、きっと少しはわかるかもしれないな。この物語を見届けているのなら。
――内容や概念が複雑で難しくてよくわからない?はは、そうだな。確かに難しいかもしれない。まぁ、これは俺のせいだ。それにありふれていて、目新しさも、あっと驚くような急展開もない、長い長い物語だ。でもどうか、一つの暇つぶしだと思って見てくれ。
――これが俺の、手を伸ばしても届かなかった世界だから。
――――――
《1》
――この物語とも呼べる出来事のきっかけを知る者は、俺を含めてわずか三名だ。
それ以外は知る必要もないし、もう終わったことなんだ。
だがそれでも縋りついてしまった愚かで傲慢な俺たちは、『対』という明確で曖昧な概念に手を伸ばした。
その結果、何が起こったと思う?
その答えは『今この時点のお前』にはわかるまい。いや、もしかしたら気づいているかもしれない。まぁいい。
――もう一つの世界、『対界』に理を体現し人々に恵みを享受させる『守護者』が現れ、その光より生まれし『影の番人』が異端を排除せんと蠢きだした。小難しくかっこつけて言うとこんな感じだ。
さて、異端を引き起こした異端者の俺はこれにてしばらく消えることにするよ。物語の一区切りがつくその時まで。じゃあな。
――そう言って、男は消えてしまった。
――――――
《2》
――男の姿はまだ現れなかった。物語が一区切りついていないのだろう。
――――――
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