14 歩んだ軌跡について
「という事は……お二人共、シエスタさんが何をやろうとしていたのか、聞いていなかったんですか?」
「お恥ずかしながらね」
シエスタの父は小さく息を吐いてから言う。
「僕たちはただ僕らの仕事を継ぎたいと。そして少しでも必要としてくれる人が多いかもしれない王都に行くと。そんな事しか聞いていなかった」
「後は生計を立てるために兼業で冒険者をやっていたという事くらい」
「そう……ですか」
……なんとなく、勝手にシエスタの気持ちが分かった気がした。
(あの人も……俺と同じような事、考えていたのかもしれねえ)
レインも言えなかった。
先月の一件の後まで、アヤに自分のやっている事をカミングアウト出来なかった。
……相手が親しければ親しい程、否定されるのが怖いから。
それこそ自分もアスカの後押しが無ければ言えなかった訳で。
……結局シエスタは言えず終いだった。
個人の胸の内の事を考えても、どこまでいっても憶測の息を超えない訳だが、それでもきっとこんな感じだったのではないだろうか。
……そして。
「それでその日記にも……抽象的な話しか書かれていなかった」
「改めてだけど日記は人に見せるつもりで書かないからね。もっともその限りでは無いだろうけど……少なくとも娘の日記はそういう類のものだったわけだよ」
そして一拍空けてからシエスタの父親は言う。
「……教えてくれないか。僕らの知らない娘の事を」
「……俺で話せる範囲でよければ」
シエスタは結局両親に話せていない訳だから、それを勝手に告げる事になるのが良いことなのかは分からないが……。
(……いや、良いんだ)
伝えられた自分だから分かる事もある。
……きっとこれは伝えた方が良いことだ。
それにどの道……何も話さないなんて事はできない。
この場に自分が足を運んだ事もそうだし、なによりそれではこの人達にあまりに酷だと、そう思ったから。
だから何も隠さず、シエスタの事を話す。
「あの人は……このままだとこの先の医療が陥る問題を回避しようとしていたんですよ」
「問題の……回避?」
医療の未来の為にやれる事をやろうとした、立派な行動の事を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます