第140話 理不尽な大ボス、ギガントデーモンを撃破しろ


 *11


 ギガントデーモンを甘く見ていた。いやこのダンジョンの鬼畜さと言うべきか。

 何という理不尽だ。

 僕がやったことがある鬼畜死にゲーの『ダーク・ダンジョン』もここまで理不尽じゃ無かった。


 だが3体に分離したギガントデーモンを倒さなければ。


 かと言って思いつくことは──あっ、ああああ!! そうだ!! あったよ!


 同士討ちさせればいいんだ。


 もしこのダンジョンが鬼畜死にゲーの『ダーク・ダンジョン』を模倣して作ったのであれば、行ける。


 そう、『ダーク・ダンジョン』こと通称ダクダンは、リアリティーを追求するために、敵の攻撃が敵に当たっても、ダメージ判定が入ることだ。


 そして、攻撃を受けたら反撃するという行動は同じ、だったら、同じ場所に3体を固めればいいのだ。


 つまり、バカデカイ落とし穴に3体を落としてから、そこに攻撃すれば、棍棒の強力な一撃で同士討ちしてくれる。


 問題は、落とし穴を誰が作るかだな。


 まあこの手の地味な作業は、全部僕に任されるんだけど。


 だが、この手しか無い。あとは落とし穴ができたら、ちゃんと落とし穴に入ってくれるかだが──これはもう強引に落とすしかない。


 一応、昔ながらの手法で落とし穴に草木を敷いておきたいところだが、何にもない洞窟だからな。


 地面も周りも岩石だし。

 本当に落とす作業は、何とか無理矢理に落とすしか無いのだ。


 よし、プランはできた。あとは落とし穴を作るまで、鏡侍郎とリコがデコイになって、僕へのヘイトが来ないようにしてもらわないと。


 「鏡侍郎! リコ! コイツらを一気に倒すプランができたから、できるだけ、僕にあの3体のデカブツを近寄らせないようにしてくれ!」


 「お! マジかよ! バリガチ了解だ!」


 「こっちもいいぜ!」


 よし、じゃあ落とし穴を作りますか。


 そして、僕はありったけの『波動重撃』を何発も打ち込んで、ギガントデーモン3体が入れる大きな落とし穴を作った。


 しかし、オブジェクト破壊は禁止されてるのに、アナウンスが無かったな。


 これが正攻法なのか?

 まあそんなことはどうでもいい。今はとりあえず、この落とし穴に、あのギガントデーモンを落とさないと。


 現在、鏡侍郎とリコはギガントデーモンのデコイで隅に追いやられている。


 僕の作った落とし穴は戦闘場の洞窟の真ん中に作った。つまりだ、あいつらを、今度は真ん中まで来させないといけない。


 「おーい! こっちの準備は整った! 今度は真ん中まで移動してくれ!」


 「「応!」」


 鏡侍郎とリコは上手いこと落とし穴の近くまで3体のギガントデーモンを誘導してくれた。


 「おいこれ、まさか落とし穴か? おいクソ兄貴! この落とし穴に落とせばいいのか?」


 「正解! まずこの落とし穴に入れないと、プランは全て水の泡だ!」


 「そういうことね! だったらバリガチ俺に任せな!」


 リコが言うなり、一列になった3体のギガントデーモンの最前列のギガントデーモンが落とし穴に気がつき、立ち往生しているところに、最後尾のギガントデーモンに渾身の『波動重撃』を食らわせた。


 つまりドミノ倒しの要領である。


 そしてその作戦は上手く行った。


 最後尾のギガントデーモンが押されて、最前列のギガントデーモンが落とし穴に落ちると、真ん中のギガントデーモンも最後尾のギガントデーモンに押されて落とし穴の中に落ちた。


 そして、ギリギリ踏みとどまった最後尾のギガントデーモンは、攻撃を受けると自動的に反撃するプログラムを利用して、大振りの攻撃をすると、足を滑らせ、自分から落とし穴に入ってくれた。


 何ともマヌケな絵面である。


 よし、準備はできた。あとは、中の落とし穴のギガントデーモンに攻撃すればいいだけだ。


 それができるのは──あいつの技しかない!


 「鏡侍郎! 落とし穴の中にいるデカブツ3体に、『サウザンド・ダンス』をしてくれ!」


 「解ったぜ! 来い! 【グランド・バーサーカー】! ぶっ潰れな! 『サウザンド・ダンス』!」


 鏡侍郎の攻撃が3体のギガントデーモンを猛襲する。


 踏み蹴り! 踏み蹴り! 踏み蹴り! 敵が密集してる分だけあって、ダメージ量も半端じゃないぞ。


 ダンスを踊っている時の強い地響きもダメージに入っているようだ。


 よし! ここで決めてくれよ!


 鏡侍郎の攻撃が終わると、ギガントデーモンは持っていた棍棒をブンブンと振り回し、それが仲間に当たっていく。


 おお! ダメージ入ってるじゃん!


 やっぱりこのダンジョンは鬼畜死にゲーの『ダーク・ダンジョン』を模倣している。


 そして、まずは1体目が黒い霧状になって消えた。


 その後も立て続けに、2体目が黒い霧状になって消えた。


 いいぞいいぞ! 残るは虫の息の1体だけだ!


 これならば、行けるぞ!


 僕は高くジャンプして、そのまま落とし穴にダイブする形で、ギガントデーモンを倒す最後の一発、『波動重撃』をお見舞いした。


 すると、僕の目の前で、ギガントデーモンは黒い霧になり消えた。


 ふぅ。一時はどうなるかと思ったが、敵がデーモンだが、この脳筋ギガントデーモンは賢くないから、何とか勝てた感じだ。


 デーモンといえば、人間を誑かす賢いモンスターと思われがちだが、このギガントデーモンは図体だけデカくて脳みそは鳥波なのだ。


 つまり、敵に突っ込んでいくだけ。


 そして、地面から地響きが鳴ると、上層の階段が出現した。


 第3階層でまさかの、アークデーモンやギガントデーモンの襲来があったのだ。もう上の階層に行っても、どんなモンスターが出現したって、さほど驚かないだろう。


 そして、僕たちは、第4階層の階段を昇った。

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