第139話 第3階層の大ボス、ギガントデーモン


 *10


 何だかやけに湿っぽくて埃くさい洞窟だな。松明があるから灯りには困らないが、無かったらビビを召喚していたところだ。(もはや召喚獣扱いになっている)


 まあ大方どんなボスかは──うおっと、すごい地響きだ。


 来るか来るか──出たあああ!! ギガントデーモンだ!


 モニター越しだと小さく見えるが、実際に見ると凄く大きいです。


 太った体に巨体で棍棒を持ち、飛べないのに、飾りがわりのコウモリの羽。


 コイツはとにかくパワーとHPオバケ何だよな。しかも体幹が異常に高くて中々怯んで倒れないし、一発でも攻撃を食らうと死ぬし、デバフしても瀕死状態だし、何回攻撃しても、あんた一体いつになったら死ぬのってくらいHPが高い。


 これだけデカいギガントデーモンの地響きで倒れない松明って……瞬間接着剤でくっついてるのか?


 それはそうと、倒すのは至って簡単なんだが、コイツの攻撃の棍棒ブンブン丸(自分で名付けた)を避けながら倒すわけだが、とにかく、のろいくせに、攻撃のモーションだけ異常に早いし、体幹も異常に高いのだ。


 なのでそこだけ気をつければ怖くないが、ここはもう戦闘を長引かせないで一撃必殺で倒すか。と言うか、ちまちま攻撃するよりもその方が理にかなっている。


 計算から行けば鏡侍郎の『テンサウンド・インパクト』と僕とリコの『波動重撃』コンボがクリーンヒットすれば倒せる。体幹が崩れてそのまま地面に倒れて死ぬからな。


 ソロプレイの時はHPオバケのコイツに泣かされたが、3対1を舐めるなよ。


 「おい! コイツはどうやって倒せばいいんだ? クソ兄貴!」


 「コイツはとにかく耐久値が半端ないから、一撃で倒そう、それと手に持ってる棍棒にも気おつけてくれ! コイツは動きは遅いが、なぜか攻撃だけ速いんだ!」


 「んじゃバリガチ決まりだな! 文句なしに猛攻撃すりゃいいんだ!」


 「いや! コイツは攻撃すると、必ず反撃してくるから、できれば一発でトドメを刺したい!」


 2人とも頷いた。理解してくれたようだ。


 さてと、まずは鏡侍郎の攻撃でHPを半分以上削り、鏡侍郎に反撃している最中に『波動重撃』でトドメだ。


 卑怯だとか言わないように。


 これも戦法。勝たなければ意味がない、ならば臨機応変に対応するのがって奴だ!


 よし! 行くぞ! ってあれ? 動けないぞ? ああ、ムービーね。これスキップできない強制ムービーなのが面倒だよな。


 ギガントデーモンが棍棒の手入れをしている。


 棍棒の手入れって、剣とかならわかるけど、ただのデカい木の棒でしょ!


 「ウギギギ! コイツで人間どもをペシャンコにする快楽はたまらん──ん? なんだ? 人間の臭いが!」


 こっちだよ〜。手を振ってみた。


 「おのれ人間! 我が家に土足で踏み込むとは! ペシャンコにしてやる!」


 ああ、我が家だったの? 松明しかない我が家か、リフォームした方がいいと思うんだが。


 うわ! やっぱりコイツの棍棒ブンブン丸の速さは異常だ。


 一発でも当たれば即死級、まあゲーム内での話だけど、実際にゲームで何回即死したことやら。


 だがコイツの理不尽じゃないところは、単純性だ。


 本当に攻撃力とHPだけの敵だから、時間は長引くが必ず倒せる。


 ゲームの時だと、両手大剣使っても、全然HPが減らなくて、1時間ぐらい戦ってたな。


 「鏡侍郎! 頼む!」


 「応! 吹っ飛びな! 『テンサウザンド・インパクト』! ウッぜえええええええええ!!」


 うお〜。いつ見てもすんごいラッシュだ。パンチが早すぎて、常人だったら腕が消えたように見えるだろうな。多分昔の僕だったら、そうだったと思う。


 しかもラッシュなのにパンチが重い重い!

 お、ラッシュが終わったか。敵が反撃の態勢に入っている。


 そんじゃ行きますか!


 「リコ! またダブル『波動重撃』だ!」


 「あいよ! ってか、バリガチ命令すんな! 俺は年上だぞ!」


 今まで、複雑怪奇なモンスターばかりで余裕が無かったから、ずっと言い返せ無かったんだろうな。でも今回は単純な敵だから臥龍のオッサンみたいなこと言ってやがる。


 だが、攻撃は確実にクリーンヒット!


 巨大岩石も砕くほどの重撃がダブルで──あれ? 反撃もしてこないし、黒い霧にもならない。


 ここに来てバグか?


 「グヌ。グギギギ!! おのれ人間! 我の魂は3つ、今こそ真の姿を見せる時!」


 そう言うと、ギガントデーモンが3体に分離した。


 どひゃあああああ!! 何この理不尽!!


 こんなのゲームには無かったよ、いやマジで無かった。

 バグでしょ、どう考えても。


 でもこの状況で、どうやって倒す? ちまちま攻撃すれば倒せるが、3体に分離したってことは、僕たちは1人でギガントデーモンを相手にしないと行けないわけじゃん!


 ギガントデーモンの卑怯者! まあソロプレイなら普通なんだけど、でもこれは違う、さっきのアークデーモンの時も思ったが、あの死にゲーの『ダーク・ダンジョン』の上をいってる。


 まあ今は、そんなことよりも、この理不尽極まりないギガントデーモンの分離をどうするかだ。


 勝てない敵はいない、必ず突破口があるはずだ。

 まずは、1人1人で、相手をして、何か攻略ポイントがあれば、そこを叩く。


 相手も、理不尽ならこっちだって理不尽に対応させてもらうだけだ。


 それじゃあ、また振り出しに戻ったが、やるしかないな!


 覚悟しやがれギガントデーモン!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る