第137話 第3階層、デーモン、デーモン、またデーモン


 *8


 さてさて中盤の3階層でございます。


 今度はどんな──うお! いきなり出てきやがった! ダンスデーモンだ。


 コイツが妙なダンスを踊ると、一定時間、こちらも、ダンスを踊る以外と厄介な敵でして──ってえええ!!


 もう鏡侍郎とリコが変な踊りを踊っている!

 よし! ここは!


 僕は携帯電話の録画機能をオンにして、2人の踊りを録画した。


 「お、おい! クソ兄貴! 何録画してるんだ! やめろ!」


 「そうだぞ鏡佑! バリガチやめがれ! こっちは好きで踊ってるわけじゃねーんだよ!」


 まあ、やめろと言われるとやりたくなるのが人間の常でして、やめるわけありませんよ。


 「おいクソ兄貴! 覚えてろよ! もし録画機能をオフにしないと、この先ゆっくり安眠できねーぜ?」


 さて、お遊びはここまでだ。「解った。オフにするよ」


 てかさあ、弟に脅される兄って一体……。しかもそれを、すんなり受け入れるって一体……。


 それよりもだ、僕の記憶が確かなら、ダンスデーモンが出るなら、鏡があるはず。


 それはダンスデーモンの踊り封じのために、ダンスデーモンが踊っている時に、鏡の裏に隠れて、ダンスデーモンが自分で自分の踊りを見て、変な踊りをさせる戦法だ。


 あった! 鏡発見しますたよ〜だ! これで、この敵は無力化できる。


 よし、じゃあこの鏡の裏に隠れてっと、というか、あの2人はいつまで踊ってるんだ?


 まあいいや、僕がデコイになるか。


 ダンスデーモンにオブジェクトの石を投げて、攻撃力はないが、気がつくだろ。


 おっ! 命中。そして気がついた。「こっちだぞ!」


 今思ったが、オブジェクトの石を投げるよりも、声を出した方が早かったような気も……まあいいか。


 よし。早く来て自滅しろ! 自滅してるところに、透かさず攻撃──だ?


 何だこの風?


 僕が後ろを見ると、ウィングデーモンが嫌がった!


 コイツ素早いし、空飛ぶし、打撃も魔法も当たりにくい最悪のデーモンだぞ。


 うわ、また翼をバタつかせてきた。どうやら、鏡の裏から隠れさせない気だな。


 そう、デーモンはかなり頭がいい。アホな脳筋デーモンも多いが、圧倒的に知力に長けたデーモンが多いのだ。



 そして、僕は鏡の裏側に隠れていたが、ウィングデーモンの突風に煽られて、隠れていた鏡の裏から飛びてた。


 その先には、ですよね。ダンスデーモンさんが踊っていた。


 くぅ〜僕まで変な踊りをさせられるなんて。


 あっ! 鏡侍郎とリコが踊りから解放されているぞ!


 2人は不気味な笑みを湛えて僕の方に近づくと──携帯電話で踊りを録画されました。


 「いよっし! この踊りを動画サイトにバリガチ投稿してやろうぜ!」


 「そうだな!」


 何だキミたち、そういうところは息ぴったりなの?


 はあ、でもこれで天下の笑い者か……。


 「クッソー! なんでだ! バリガチ電波がねーぞ! 鏡侍郎の方は?」


 「こっちもだ。どうやら、外と完全に隔離されてるみたいだな」


 なんかよく解らないけど助かった……ん? この現状で助かったのか? まあいいや、助かったことにしよう。


 「おいクソ兄貴! この2体の悪魔はどうやって倒すんだ?」


 「簡単だよ。とにかく殴る以上。でも踊ってる方は、踊りに気おつけて倒せばいいけど、翼がある方は、素早いし、耐久力もあるから、以外と苦戦──」


 僕の話を最後まで気がつずに鏡侍郎がもう攻撃のモーションに移っていた。


 「来い! 【グランド・バーサーカー】! 吹っ飛びな! 『サウザンド・インパクト』!」


 鏡侍郎が現出させた【グランド・バーサーカー】の猛襲が始まるが。が、ダンスデーモンは一瞬で黒い霧となり消えたが、ウィングデーモンは空を飛び、ダメージは半分といったところか。


 「素早いのがお得意ならコイツでおしまいだ。『波動脚煌』蹴り!」


 「グルアアアアアア!!」


 断末魔の叫びを上げて、ウィングデーモンも黒い霧となり消えた。


 何だか今までのダンジョンにしては、妙に大人しいダンジョンだ。


 でもこの嫌な感覚、嵐の前の静けさをというか何というか──敵もたくさん湧いて出てくるわけじゃないのに、妙な感じがする。


 な、なんか近づいてくる気配が──上だ! 急に上から現れた、とう言うか、イベント的な感じで出現したんだろう。


 頭には羊の角に、片手には死神のような大鎌を携えて現れたのは、僕が知る鬼畜死にゲーのラスダンの中ボスでも、かなり苦戦した、アークデーモンだった。


 アークゴブリンの比ではない強さを誇る。


 まず魔法は無効化のくせして、向こうは自分にパワー、スピード、スタミナのデバフをかけてくる。


 おまけに最初から防御力が半端なく高い。とにかく理不尽を具現化したモンスターがアークデーモンなわけだ。


 唯一の倒し方は、デバフ効果が薄れて来たところに、渾身の一撃を加えること。だがそれが難しい。


 ソロプレイならね。


 今は回復薬も無いオワタ式だが、3対1である。


 これなら連携で勝てる!

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