第135話 第2階層の大ボス、カイザースライム・ナイト


 *6


 大ボスの間に入ると、そこはどこかの、お城の中だった。


 またイベントシーンか──って、嗚呼、やっぱりだ。やっぱりカイザースライム・ナイトだよ。


 ラスダンの中ボスとして登場するシンプルに強いボス。


 打撃も効くが、なんと言っても、コイツの耐久値だ。もはやバグレベルに近い。


 殴っても殴っても中々倒せない、HPオバケ。おまけに動きも敏捷でカイザースライムの上に跨っている巨大なナイトの大剣の大振りが凄い。


 当たれば致命傷。当たらなくても大振りのからの真空波が、意外とチマシマこちらの体力を奪っていく。


 コイツの攻略法は至って単純。と言うか、攻略法なんてない。物理でガンガン攻めていく。以上。


 「うむ。やはり午後のティータイムはチャーイに限るな──む、何やつ? 私の午後のティータイムを邪魔する不届き者は、即刻始末してくる!」


 何がティータイムだよ。てかムービーシーンは終わりか。

 さて、ソロプレイでは散々痛めつけられたが、こっちは打撃特化の奴だらけ。ボコボコにしてやろう



 「鏡侍郎! リコ! コイツの倒し方は簡単だ。とにかく殴りまくるだ! だが、油断するな! あのナイトの大剣は必ず避けろ!」


 「単純でいいじゃねーか! そういうシンプルな敵を待ってたんだぜ」


 「俺もバリガチ同意だな。要は殴るだけってのがいい!」


 「「いくぜ!」」


 2人の猛襲が始まった。


 まず最初に先手を打ったのは、鏡侍郎の『サウザンド・インパクト』だった。

 次にリコの『波動重撃はどうじゅうげき』だ。この2連コンボの前に、さてカイザースライム・ナイトさん。どう出る?


 「ぐぐ、猪口才千万! この大剣の錆となれ!」


 おっ! HPが半分以下になると言う台詞だ。つまり、もう一度同じ攻撃をすれば、倒せるってことじゃん、楽勝だな。僕が出るまでも無い。


 「おーい! 鏡侍郎! リコ! 今の攻撃をもう一度やれば倒せるぞ!」


 「んだよ。バリガチ歯応えがねえやろうだ!」


 言うなり──2人はまたも同じ攻撃をして、何なく撃破した。


 「うぐぐ、ぐぬ、小癪、小癪、後は頼んだぞ! 兄弟!」


 そう言い残すと、黒い霧状になって消えた。


 おかしいな、こんな台詞は聞いた覚えが無いんだが──と、その瞬間、上から、新手のカイザースライム・ナイトが現れた。


 「兄弟の無念。ここで晴らさせてもらう!」


 いやいやいや、そんな設定ありませんから。


 あの物乞いのやつ、なんか仕掛けをいじったな。


 だが、鏡侍郎とリコの手にかかれば、一蹴できる。


 「鏡侍郎! リコ! そいつも全く同じタイプの敵だから、さっきの技を2回打ち込めば勝てるぞ!」


 「あいよ! ってか、お前もバリガチ闘いやがれ!」


 ごもっともな意見であります。


 「いや、僕は敵の動きを見て、本当に同じタイプか見ないといけないから、コイツらはゲーム内の敵だ! お前らゲームには詳しく無いだろ」


 「そう言われちゃそうだが、言い返せねーのもバリガチ癪だぜ! だが鏡佑! ちゃんとアドバイスしろよ!」


 「ああ! もちろんだ!」


 そうコイツらはゲームをやったことがないから、この場で唯一、敵の弱点や行動などのアドバイスができるのは僕だけなのだ。


 だから攻撃に参加せずに、守りに徹している訳である。決してサボっている訳じゃないからね。


 そうこうしている内に、2体目も撃破! さてと上に行く階段が──出ねえ!


 「何と、私まで、兄弟……あとは頼む。グフっ!」


 そう言うなり、またしても、新たなカイザースライム・ナイトが現れた。


 一体何体の兄弟がいるんだよ! 永久に終わらないとかないよな?


 あれ? もしかして──いやいや悪い事は考えるな、過去に似たような経験が──だあああ! だから悪い事は考えるな。


 そんな思案をしている内に、鏡侍郎とリコは3体目のカイザースライム・ナイトも難なく撃破していた。


 「もはや……ここまで、集え! 兄弟!」


 あっ……嫌な予感的中するかも。


 三体目のカイザースライム・ナイトが言い放つと、前に倒された2体のカイザースライム・ナイトが復活し、そして──合体した。


 まあスライムだから合体はありだけど、この合体はかなり厄介な合体だ。


 スライムだけ巨大化するだけでも、カイザースライムなので厄介なのに、何とカイザースライムに跨っているカイザースライム・ナイトまで巨大化するのだ。


 その意味は、今までの10倍ぐらいの耐久値と、攻撃力がグーンと伸びること。


 だから大剣の大振りを避けても、今までは真空波だったのが、音速の衝撃波に変わる。


 僕はこのパターンのゲームを1つだけ知っている。超鬼畜理不尽死にゲー『ダーク・ダンジョン』通称、ダクダンにも登場するこのカイザースライム・ナイトのイベントで登場する、ラージカイザースライム・ナイトだ。


 そして、敏捷性も今までの比ではない。


 だが打撃で倒すことには変わりないが、ま〜当たらない当たらない。


 そんなこんなで、なぜか知らないが、この鬼畜ダンジョンで、鬼畜この上ないラージカイザースライム・ナイトと戦うことになった。


 多分コイツに勝てば、晴れて上層の階段が登場すると思うが、コイツに勝つためには、僕も含めた、三人の連携技が必要になるな。

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