第134話 大暴れ、スライムだらけのモンスター・ハウス


 *5


 第2階層に昇ると、松明1つ無い暗いダンジョンだった──と、その瞬間。僕の中でトラウマになっている、けたたましい効果音が鳴り響いた。


 そして、ダンジョンは何1つ無い大きな箱状の空間が広がり、灯りも今までに無いほど明るい。


 間違いない。ここは、モンスター・ハウスだああああ!!


 辺りを見ると、悍ましいほどの数のスライム、スライム、スライム!

 スライム? なんだよ驚かせやがって、ただのスラ──うわああ!


 ビッグ・スライムの伸し掛かり攻撃を食らった。痛くは無いけど、意外と思いな。


 邪魔だなこのスライム。こんやろ!


 僕のパンチが余り効いていない? というかポヨンポヨンして可愛い──くない!

 邪魔なだけだ!


 「おい! クソ兄貴! こいつら殴っても殴っても平気な面してやがるぜ! どうやって倒すんだ?」


 おかしいな、スライムなんて序盤も序盤の最下級モンスターなのに、打撃無効化なのか?


 確か僕がやっていた、ダンジョンゲームのスライムは強くなればなるほどに、打撃攻撃が通用しづらく──ってことは、このビッグ・スライムは中盤以降の打撃が通用しにくいモンスターの設定されてるのか?


 だとしたら、鏡侍郎の打撃一辺倒の攻撃は通用しにくいぞ。


 有効な手段といえば、氷属性に弱いことだ。


 氷で固めて打撃で粉々にする戦法なんだけど──


 「おい聞いてんのかクソ兄貴! 打撃が通用しねーんだよ!」


 「こっちもだ! 呪詛思念の風や水も対してバリガチ効かねえ! どうやって倒すんだ? 鏡佑!」


 「コイツの弱点は多分、氷属性だ! 何か氷属性の攻撃ができるやつは──はっ!?」


 そうだ、前にバイクレース勝負の時に『呪氷道じゅひょうどう』を覚えたんだ! だとしたら行けるかも!


 「僕が、コイツらを氷漬けにするから、そしたら、思いっきり攻撃してくれ!」


 「氷漬けって、お前は水の流派の陰陽師じゃないだろ!」


 「その話は後だ! とにかく今は、僕が氷漬けにするから、そのあとで、渾身の一撃をかましてくれ!」


 「「あいよ!」」


 「一か八かの、『呪氷道』祭りだ! 食らえ! 『呪氷道』!」


 今回の『呪氷道』は滝登りの感覚ではなく、四方八方に分厚い氷の道が出来るイメージをした。


 そして、この何もオブジェクトがない空間でこそ、この技は真価を発揮する。


 僕が放った『呪氷道』の分厚い氷の道は、ビッグ・スライムたちを飲み込み、氷の道の中にビッグ・スライムたちが氷漬けにされていた。

 それも1つの大部屋全体が氷漬けになった。


 「今だ! 鏡侍郎! リコ!」


 「行くぜ! 来い! 【グランド・バーサーカー】! 『サウザンド・インパクト』! ウッぜええええええ!!」


 「俺もバリガチ決めてやらあ! 神速の『波動爪牙はどうそうが』だ!」


 幕切れは呆気なかった。


 ソロブレイの時は、かなり苦戦した相手だが、ビッグ・スライムがこんなに弱く思えるなんて。


 つーか、この2人が強すぎるだけか。


 「いよっしゃああ! あんだけバリガチたくさんいたスライムも、全部一網打尽にしてやったぜ! なんか倒し方さえ解れば、楽勝だな。んじゃそろそろ、大ボスの黒い霧状の扉が出て──こないな。なんでだ?」


 僕もおかしいと思っていた。あれだけの数のビッグ・スライムを倒したのだ。さっさと大ボスの部屋に行ける黒い霧が出てもおかしく──ぐへ!


 またもやスライムに押し潰された。今度は伸し掛かりではなくて、押し潰しだ。


 なんだ? まだ雑魚キャラが──ってええええ!?


 あの、金ピカの王冠を頭にかぶったスライムは──カイザー・スライムだ!

 終盤のラスダンの中ボスレベルのモンスターが、雑魚キャラでわんさか出てきやがった!


 こいらも、氷属性が弱点だけど、そのデカい図体に見合わず、とにかく早くて、すばしっこい。ビッグ・スライムと違い打撃も有効だが、一撃必殺の渾身の打撃じゃないと倒せない。


 「おいクソ兄貴! また訳の分からねー奴らが、湧き出てきやがったぞ! コイツらも氷が弱点なのか?」


 「いや、確かに氷漬けも効果はあるが、コイツらは打撃も効くんだ、でもそんじょそこらの弱い打撃じゃ全く通用しない」


 リコの『波動重撃はどうじゅうげき』なら一発だろうが、あれは単体相手の技だ、そう何回も連発して出せる大技じゃない。だとするなら、どうすれば──



 「ほう、打撃が効くのか、コイツも一度試したかったんだ。『サウザンド・ダンス』は滅多に使わねーからな! ぶっ潰れな! 『サウザンド・ダンス』! ウッぜええええええええ!!」


 僕が最初に見た技とは違っていた。

 鏡侍郎の瑠璃色に輝く『ゲイン』が昂るに連れて、【グランド・バーサーカー】の体格も大きくなる。


 そして、踏み蹴りではなく、大ぶりの回し蹴りが、カイザー・スライムを猛襲する。


 すると、無数にいたカイザー・スライムたちが、見る見る黒い霧になり、倒されて行く。


 なるほど、鏡侍郎の【グランド・バーサーカー】は、鏡侍郎の『ゲイン』の量で、大きくさせることが出来るのか。しかし、大きくなったのは、背丈ではなく、攻撃力も上がるんだな。


 あのカイザー・スライムの群れが一瞬で壊滅とは。


 僕が呆気に取られていると、黒い霧状の大きな扉が出現した。


 まあ、多分だけど大ボスはなんとなく想像がつくな。まあでも、入ってとにかく大ボスを撃破して上に昇るしかない。


 僕たちは、そのまま吸い寄せられるように、黒い霧状の扉の中に入った。

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