第132話 第1階層の大ボス、ゴブリン・ロード


 *3


 黒い霧状の扉の中に入ると、教会だった。

 ん? なんか知らないが壮大なBGMが──え? 教会の祭壇で祈ってるあの緑色の司祭はもしかして……。


 「嗚呼、この憐れなる者たちに安らかなる死を」


 喋ってる……僕が知り限り、喋るゴブリンの大ボスはゴブリン・ロードしかいない。


 てか、動けないんだけど、これはゲームでいう強制ムービーか?


 「さあ、邪神様の前に平伏しなさい」


 お、やっと動けるように。


 って、おい! いきなりビーム魔法の洗礼かい!


 しかもでかいな、司祭の姿に魔法まで、それにあの身の丈は、まさしくゴブリン・ロードだ。


 しかし、テレビゲームじゃなくて実際見るとデカいな〜。

 多分10メートルぐらいはあるぞ。


 まあゲーム通りなら、こいつの弱点は知ってるんだけど、その弱点がここでも通用するかだ。


 でもなんか少し感動している自分がいる


 だって、テレビゲームではなく、VRゲームみたいに、超リアルに──いや、攻撃されたらリアルに死ぬけど、それよりも、なんかゲーマー魂を熱くさせるってやつか? よく知らんが、目の前で僕の知ってるゲームの大ボスと闘うのは心が躍る。


 「おい鏡佑! このデカブツの倒し方、バリガチ知ってそうな顔だな? さっきからニヤついてるぞ」


 え? え? 顔に出てた?


 「ま、まあ。もし僕の知識がゲーム通りなら、こいつの弱点は首だ。首さえ攻撃すればすぐに倒せる──けど……」


 「けど、なんだ? バリガチはっきり言えよ」


 「あいつ、近づけないんだよ、いや、厳密には近づけるけど、魔法で近づけないんだ」


 「ああ? 魔法だ? バリガチ意味不明なこといいやがるな」


 かぁ〜これだからゲームやってきてない奴は。

 普通魔法ぐらい知ってんだろ。


 「おい。こいつデケー図体のわり素早いぜ! 俺の射程から逃げやがる!」


 「鏡侍郎! 闇雲に闘っちゃダメだ! ちゃんとリズムがあるんだよ!」


 「だったら早く教えやがれ!」


 そう、こいつには一定のリズムがある。

 

 それは魔法のビームを放った瞬間に消えて、右か左のどちらかに移動するのだ。そして移動直後は、魔法詠唱で1.5秒ほどのインターバルで動かない。


 そこを狙う。


 しかし、問題はまだあるのだ。ゴブリン・ロードは黄金の首輪をしている。だから首への攻撃はまず、その首輪破壊から始まるが、首輪を破壊すると、無数の上肢が上半身から生えて、マフラーみたい腕や手が首に巻きつき、自分の首を守のだ。さらに、その防御力が異常に高く、守りの手と攻撃の手がある。


 つまり攻撃の手は、地面に張り手をしながら押し潰してくる攻撃だ。

 スピードはそんなにないが攻撃力が高い、食らったら最後、しかも手が無数にあるから、ここは攻略と言うよりも、運に任せたローリング回避しかない。


 しかも無数の手の攻撃だから、パリィもできない。

 そして、理不尽極まりない攻撃を回避しつつ首への攻撃。

 守りの手が少なくると、また手が増えるから、ある程度減ったら、頭に登って首にジャンプ斬りが正攻法だが、こっちは3人だ、いけるな。


 「解った。じゃあ僕が指示を出すから、お前らはその指示通り動いてくれ!」


 「なんかバリガチ癪だがしょうがねえ! 乗った!」


 「俺もだ。こういうゲーム感覚的なもんはクソ兄貴が得意だからな」



 こいつら、教えてあげるのに、堂々と嫌味言いやがって! まあいい、ちゃんと動いてくれるならな。


 「よし! じゃあまず鏡侍郎は、そのゴブリンに攻撃してくれ! それとリコは鏡侍郎が攻撃したら、この敵は消えるから、消えた直後の敵の場所を起点にして右に移動して攻撃態勢に入ってくれ!」


 「「応!」」


 おや? なんか本当にゲームしてる感覚だ。しかも連携技が出せるなんて。


 ソロプレイのゲームの敵だから、倒す時に装備やらアイテムやら買い込んだっけなあ……。


 まずは鏡侍郎の【グランド・バーサーカー】の攻撃を当てるとこだ──よしよし、鏡侍郎のやつ、上手く壁際に追い込んで超絶殴打ラッシュをしているな。


 はい消えた。初見殺しの、攻撃して消えて、そこから真横からの魔法ビーム攻撃。


 だが、今は違う!


 僕は左に移動っと。さあどっちから来る?


 うお! 目の前に! 左か!

 早速、魔法詠唱し始めたぞ。そんじゃ首の黄金首輪めがけて攻撃だ!


 「詠唱なんかさせるかよ! 『波動穿孔はどうせんこう!』」


 僕の攻撃はクリーンヒット! 黄金の首輪は見事破壊に成功!


 「なんという罪深き者たち。本当の苦しみを知れ」


 はい出ました、無数の理不尽な手だ。


 「次はどうすればいいんだ? つかなんだ? あのバリガチ多い手は!」


 「リコ! こいつの弱点は首だって言っただろ? 僕とリコはこのまま、攻撃を避けながら首を攻撃する!」


 「おいクソ兄貴! 俺はどうすればいいんだ?」


 「鏡侍郎は僕が合図したら、敵の首めがけて渾身の攻撃をしてくれ! それまでは回避に徹してくれるか?」


 「解った!」


 いいねいいね連携取れて来たよ、さらばソロプレイ!

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