第131話 まだ第1階層なのに、脅威のゴブリンダンジョン
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僕の勘が正しきれば、おそらく第1階層はゴブリンの巣窟──いや魔窟である。
だって、さっきからゴブリンしか出てこないんだもん。
しかもRPGだったらゲーム中盤以降のボスキャラである、アーク・ゴブリンがモブで登場──いや、第1階層ダンジョンの中ボス的な感じなのか?
とにかくだ、ゲームバランスがぶっ壊れてる!
僕の仲間たちの強さもぶっ壊れてるけどさ……。
それにしても、鏡侍郎のあの技はなんだ?
地響きで殆どのオブジェクトが破壊されている。
これじゃあダンジョンじゃなくてモンスタハウスだろ。
しかし、ダンジョンといえばモンスター無限湧きのルールがないな。
もしかして、他の下位のゴブリンは、アーク・ゴブリンが討伐されて威嚇的な能力で、無限に湧かないのか?
「ピシャアアアア!!」
ダンジョンで空中からモンスターの鳴き声……嫌な予感が……まさか僕のトラウマの……。
「ピシャアアアア!!」
声のする方を見てみた──はい出ました、僕のトラウマことゴブリン・デビルだ。
理不尽にもゴブリンのくせに縦横無尽に空を飛んで、攻撃してくるし、なんか口から溶解液みたいな酸を出してくるし、魔法は使わないが鋭い牙と爪で攻撃してくるモンスター。
しかも、結構序盤の大ボスだったりするから、戦う前の神秘の薬草なる、普通の薬草の5倍は回復量があるアイテムを、最低でも20個は必要になる大ボスだ。
この鬼畜ボスに何回倒されてリセットしたことか。
そして、何が鬼畜かっていうと、いつも溶解液なのに10回中、1回は火炎放射をしてくる。名前は確か、憤怒の業火だかなんだか、しかもその技って終盤からの雑魚キャラがよく使う技であって、決して大ボスといえど序盤で出してはいけない反則技なのだ。
「なんだこいつ! 口から変な緑の液体を飛ばしてきやがる!」
「鏡侍郎! 気をつけろ! その液体は強力な酸で、プラチナ防具を装備して腐食無効の加護の護符を装備しないと、一瞬で溶けるぞ!」
「ああ!? プラチナ? 装備? 何を言ってやがる!」
まずい、ついゲームの知識──もとい、ゲーム脳で語ってしまった。
そうだここはゲームじゃない。ピース能力で作られたダンジョン。
だから敵も倒したら黒い霧状になり消える。つまりドロップアイテムなし。
それに、ここまで宝箱1つ無いということは、自分の能力で倒せということだ。
きっと酸を使うピース能力者とかがいるのだろう。それに空中を飛び回る敵に対して鏡侍郎のピース能力との相性も気になる。
このダンジョンは天井が5メートルほどで距離が長く無いから、前回の魔女戦の時みたいに、天井が30メートルぐらいの場所ではない、つまり鏡侍郎の【グランド・バーサーカー】の射程圏内に収まる。
「鏡侍郎! そいつに攻撃を当てられるか? かなり素早い敵だぞ!」
「バカにすんなクソ兄貴! 俺の【グランド・バーサーカー】は射程は短いがスピードとパワーは最強だ! 吹っ飛びな! 『サウザンド・インパクト』! ウッぜえええええええ!!」
言うなり鏡侍郎の【グランド・バーサーカー】の
そう、こいつの厄介なところは数あるが、攻撃さえ当たればこっちのもの、何を隠そう、ゴブリン・デビルの防御力は紙装甲なのだ。
こいつは、素早い動きで攻撃が当たらず、魔法も余り効かない。その上、向こうの攻撃は多彩である。
だが、鏡侍郎の攻撃は見事にスピードとパワー重視のピース能力であることは間違いない。
でもなんでだろう、こんな更地と化したダンジョン内で上に上がる階段が無い。
何かのバグかそれとも──このダンジョンに湧き出るモンスター全てを倒さないと上の階にはいけないのか?
うむ、きっと答えは後者だな。
とまあ、そんなことを考えてる時に来ましたよ。やっぱりこいつ炎攻撃もしてきやがる。
明かに、僕が前にやったゲームのゴブリン・デビルそのまんま。これパクリでゲーム会社に──いや能力者にしか見えないか。
しかし、有名なゲームだが、あの物乞いのような汚いオッサンもプレイしてたのかな?
ピース能力は無意識化がなんちゃらって前に僕のピース能力である【リザルト・キャンセラー】が言ってたし。
今じゃ全然使って無いけど……あいつ今後出番あるのか?
「これで終わりだ! 吹っ飛びな! 『サウザンド・インパクト』! ウッぜえええええ!!」
「ギシャアアアアア!!」
断末魔の叫びでありますね。
つーか鏡侍郎強っ! リコはサボりすぎ! 僕もだけど……。
「おいリコ! なんでお前は攻撃に参加しなかったんだ?」
僕の質問に首を傾げるリコ
「だってアイツらは全部、鏡侍郎の獲物だろ? 鏡侍郎が援護してくれって言うなら、援護するけど、アイツの獲物を横取りしたら後がバリガチ面倒だからな」
あらまあ、鏡侍郎の性格をよく理解してらっしゃる。
しかも、僕は1人で昔、ゴブリン・デビルに苦戦した記憶で一杯だったので、鏡侍郎がどのように闘ったかみていない。
まあ勝てたならそれでいいけど。
「おいテメーら! 呑気こいてないで気合い入れて行くぞ!」
鏡侍郎がそう言って指を差した方角には、大きな黒い霧状の扉があった。
ええええええ!! ここまでやって、まだ上に上がれないの?
これってもしかして、1つの階層づつに大ボスがいるってことじゃん。
大ボスを倒さないと上にいけないってことじゃん。
ゴブリン・デビルよりも強いゴブリンなんて、僕はあと1匹ぐらいしか知らないぞ。
でも、とにかくだ。ここの階層の大ボスを倒さないと上にいけないのは確かだ。
僕ら3人はそのまま、黒い霧状の扉の中に入った。まあ正確には、3人と1匹な訳だが。
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