第6章 鬼畜モンスターダンジョンで大暴れ

第130話 まさに絵に描いたような、鬼畜モンスターダンジョン


 *1


 海、海、海、海いいいいいい!!


 もう海は懲り懲りなんだよな、でも、あと一週間でアルゼンチンに付けば陸路だ。


 唯一の楽しみといえば、飯の時間ぐらい。


 リコも鏡侍郎も海釣りに熱中しているが、僕は子供の時に川釣りに行って、川に落ちて流された思い出があるから、釣りはトラウマなのだ。


 まあ僕の計算で行けば無事にアルゼンチンに付けば30日以上の猶予があるから、ウユニ塩湖まですぐだろ。


 もしかして、ローザたちのグループよりも早く着いたりして。


 僕があれこれ思案していると、またもや汚い物乞いのオッサンがクルーザーで追いかけてきた。


 「待ってくれ! お前らを南極に飛ばして時間稼ぎをすれば、前に貰った金の10倍出してくれるって、ジェイトが言うもんだから、お前らを南極に連れて行く!」


 「でやがったな! 海の藻屑にしてやる!」


 「ちょっと待った! 今度も条件付きの勝負はどうだ? 俺は5階層までしかダンジョンを作れないが、俺は5階層のラスボスになる。お前らが5階層に無事に着いたら、俺を殴りたいだけ殴ればいい。それに、ダンジョンを攻略出来なかったらペナルティーで南極行きだが、もし攻略出来たら、一気にアルゼンチンの港まで行ける。それでどうだ」


 鏡侍郎は振り上げた拳骨を収めると、暫し考え込んでいた。


 「おい。その話、嘘じゃねーだろうな?」


 「嘘じゃねーよ。こっちだってリスクを承知の上で、お前らに提案してるんだ。それにこの提案を持ち出すのが、俺がダンジョンを作る能力の条件だからな。俺の能力は相手が承諾すれば自動で発動するんだ」


 自動発動か、僕の【リザルト・キャンセラー】の能力に似てるな。


 「それにだ。今度のダンジョンはシンプルなダンジョンだ。モンスターやトラップがあって、1階層ごとにボスがいる。どうだ、教えられることは全部教えたぞ。やってみるか?」


 うーむ1週間の短縮は非常に魅力的だが、はてさて皆々様の反応は……。


 「バリガチ面白そうじゃねーか! ちょうどひと暴れしたいと思ってたんだ!」


 「俺もだ。それに5階層でテメーをぶっ倒すチャンスだしな」


 「それじゃあ決まりだな。条件クリアだ!」


 そう言うと、海面から突如またもや円錐形の5階建てマンションぐらいの高さがあるダンジョンが現れた。


 もう慣れっこだが、ダンジョンに入る為には黒い霧状の入り口に入らなければいけない。


 そしてお約束の黒い霧状の入り口が登場。


 さてと3人ともやる気満々だし、今回はガチのゲームのダンジョンみたいだから、僕が先導しないとな。


 ──────



 ダンジョンの中は本当に絵に描いたようなダンジョンだった。


 松明の薄い明かりに、煉瓦造りで古びた構造、水滴の音に、牢獄のような雰囲気だ。


 「ギギギ、ギギャ!」


 おっといきなりモンスターだ! しかも定番中の定番ゴブリンの登場。


 まあ流石にHPゲージは無いか。


 さてと、それじゃあ──「ギギャアアアア!!」


 なんだ? まだ攻撃してないのに、断末魔か?

 って、こいつ仲間呼びやがったぞ!


 10匹──50匹──100匹──って、どんだけ仲間呼んでるんだよ!

 モンスターハウスでもこんなにモンスター出てこねーよ!


 「おい鏡侍郎! 頼めるか?」


 「ああ、もちろん! 来い! 【グランド・バーサーカー】!」


 うん、いつ見てもあのグロい姿は慣れない。


 四本腕に漆黒の肌、顔が前と後ろにあって、長い舌を出しながら牙を剥き出しにして笑っている。


 慣れない……。


 「頼むそいつらを──」


 「言われなくても解ってる! 吹っ飛びな! 『サウザンド・インパクト』! ウッぜえええええええ!!」


 4本の腕から繰り出される超高速の殴打が、ゴブリンたちを一蹴する。


 「これじゃあ肩慣らしにもならねーぞ。こいつら数だけ多くて、全く強くねえからな」


 それもあると思うけど、鏡侍郎の『現出型』の異形の化け物が強いだけでは?


 まあそんなこと言ったら、大喧嘩になると思うから言わないけど。


 ととと、なんだこの地響きは──あ、オブジェクトの壁が破壊された。


 その破壊された壁の奥から現れたのは、ゴブリン・キングだった。


 でかいなー。5メートルぐらい?

 今までのゴブリンは手に小さな棍棒を持っていたが、こいつは両手に鉄の剣を持っていやがる。

 ゴブリン君も出世すると、こうなるのか。魔物のレベルが上がって行くのは会社に似ている。


 地位が高くなればなるほど、良いスーツに、良いネクタイ、良い時計その他もろもろ、良いものばかり、代表的なのは車かな? いきなり高級外車に乗り始めるとか。


 とまあ、人間と魔物の地位が上がると、似ている考察はさておき。


 「行けるか? 鏡侍郎!」


 「ああ! 吹っ飛びな! 『サウザンド・インパクト』! ウッぜええええ!」


 あれ? コイツの烈撃凄くねえか? 鏡侍郎の攻撃を捌いて──あああ! 惜しい、やっぱり鏡侍郎の超絶殴打ラッシュには負けるか。


 そのままゴブリン・キングは黒い霧状になって消えた。


 ととと、また地響き、さっきよりもでかいな。つーかオブジェクト壊すなって警告出るのに、モンスターは壊して良いのかよ。


 つーか、なんか遠くの方から、地響きと壁がどんどん壊れる音が──うわー出たー! 前に僕がダンジョンゲームで舐めて挑んだら瞬殺された、アーク・ゴブリンだ!


 マジかよまだ第1階層でアーク・ゴブリンだと?


 しかも腕が6本もある。


 僕が言うまでもなく鏡侍郎は『サウザンド・インパクト』を繰り出していた。


 まあこれで終わり──じゃないぞ! このアーク・ゴブリン、鏡侍郎の【グランド・バーサーカー】の腕を掴んでやがる。

 つまり攻撃が封じられた!


 「野郎! だったら、ぶっ潰れな! 『サウザンド・ダンス』!」


 鏡侍郎が現出させた【グランド・バーサーカー】が踊り始めた。

 いや、まあ踊りだけど、何この地響きは、立っていられない。


 僕はそのまま、尻餅をついた。みるとアーク・ゴブリンも尻餅をついている。


 すると、すかさず【グランド・バーサーカー】の蹴りの猛襲が始まり、アーク・ゴブリンは仰向けになって倒れた。

 そこに追い打ちをかけるように、アーク・ゴブリンの腹の上で地響きとともに踊り──いやあれはもうストンピングに近い。しかも幾千回のストンピングだよ……。


 その踏み蹴りは顔面に首に胴体。特に腹部の上での踏み蹴りが多かった。


 踏み蹴りの最中は、その地響きで周りのオブジェクトが全て倒壊するのではと、不安になるほどである。


 流石のアーク・ゴブリンも、この技には耐えきれず断末魔の叫びとともに、黒い霧状になり消滅していく。


 しかしまあ、鏡侍郎のパワーもさることながら、まだ1階層ですよ。

 1階層でアーク・ゴブリンなんて相手もマジで殺しにきてるな。


 つっても、自分から刺客って言ってるんだから、殺しにきてるのは普通か。

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