第129話 ミステリーダンジョン3階層、消えた凶器、植木鉢の正体、札束はどこに
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このまま順調に行けばさっさと、このダンジョンから出られるぞ。
しかもこっちには、ミステリー大好きオタクの鏡侍郎までいるんだ。
戦闘では誰も思いつかない応用技のリコ。
ゲーム系ならどんとこいの僕。
ミステリー系なら敵なしの鏡侍郎。
そして、意味不明な存在だが、やたら戦闘特化のビビ。
意外と良いメンバーかもしれないな。
そう思っていると、またもや大きな音のアナウンスが流れた。
『ミステリーダンジョン3階までようこそ! もう説明は不要ですね。ではでは、これから始まるミステリーを見て謎を解いていただきます。ですが、もしここで、3問の問題を出して、全てに答えられたら、このダンジョンから出る権利が与えられます。どうしますか?』
「もちろんYESだ! さっさとしな」
鏡侍郎がアナウンスに促すと、突然劇が始まった。
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見るからにお金持ちが住んでいそうな豪邸に強盗が入った。
強盗は2階から侵入し。昼下がりだったのもあり、令嬢はお昼寝中で、その部屋には、宝石の山だった。
強盗はすぐに令嬢の喉を鋭利な凶器で突き刺し、令嬢は死亡。
そして、ゆっくり宝石を盗もうとしたところ、運悪く執事に見つかり現行犯で捕まってしまった。
だが、お目当ての凶器がいくら探してもない。
外には庭師がいるので、2階から凶器を捨てたと思い執事が質問すると、窓すら開かなかったと証言している。
強盗は本当に凶器を持っていなく、ナイフ一本も見つからなかった。
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『それでは、凶器は何か──』
「うるせえ! 俺たちには時間がねえんだ。さっさと答えるぜ。凶器に使われたのは時計の長針だ。その長針を喉に突き刺して殺害し、血を拭って、すぐに時計に戻した」
『正解です。では次のミステリーをご堪能下さい』
────────
とある探偵に正午に相談したいことがあるから来てほしいと、男から電話があった。
そして、探偵は正午に男の家に行くと、男は猿ぐつわをされて、ロープで両手両足を縛られ、コスモスの植木鉢も茎が真っ直ぐに生えて倒れている。
探偵はすぐに男の猿ぐつわを外すと、昨晩強盗が入って襲われたそうだ。
その時の時刻を探偵が聞くと夜の11時頃だと言った。その発言を聞いて探偵は急に大笑いした。
「嘘をついてもダメですよ。しかし、なぜこんな手の込んだ偽装工作をしたんですか?」
男は苦笑いをすると。
「君が優秀な探偵かどうか調べるためさ」と答えた。
では一体どうして探偵は男が偽装工作だと気がついたのか?
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『それでは答えてもらいましょうか』
「おい! これのどこがミステリーなんだ! 猿でも解るぞ!」
え? 僕には解らなかったけど……猿以下ってこと?
「正解はコスモスの植木鉢だ。もっと詳しく言うなら、普通植物は重力に逆らって育つ。だから半日以上も植木鉢が倒れていたら、コスモスの茎は上向きに伸びている。だがコスモスの茎はまっすぐってことは、探偵が来る直前に偽装工作したってことだ」
『正解です。さあ残りは後1問です!』
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とある喫茶店に泥棒が入った、泥棒は札束だけ盗み、全部で20万ドルの札束を盗んだのだ。
そして、すぐに逃げようと、喫茶店から出ると、ものの数十秒で運悪く巡回中の警察官に見つかってしまい、その挙動不審な態度から捕まってしまった。
だが、驚くことに、その男からは20万ドルはおろか、1ドル札や小銭すら出てこなかった。
証拠不十分の為、その泥棒は釈放された。
そして、その2日後には、なにもしていないのに、泥棒は20万ドルを手に入れたのだ。
しかし警察の尾行を恐れて、その喫茶店には行っていないし、共犯者もいなく、たった1人で20万ドルを手に入れたのだ。
泥棒はどうやって20万ドルを手に入れたのか?
────────
『これが最後のミステリーです。よくよく吟味して回答してください』
「ああ、吟味してやるぜ。お前らのバカらしさをな!」
『では正解が解ったということで──』
「当たり前だろ」
鏡侍郎はアナウンスの声をまた遮った。
僕にはさっぱり解らない。ピース能力でお金を消したのかな?
いやいや、そんなわけないか。
「正解は、札束を郵便配達のポストに入れただ。最初から自分の家に送られるように名義も書いてある封筒に札束を入れた、もし硬貨なんて入れたら音が出るし怪しまれる。だが札束だけなら音も出ねーからな。それに2日後ってのが一番のヒントだ。普通郵便はだいたい2日後に来るからな」
『正解です。ではお約束通り、このミステリーダンジョン攻略おめでとうございます。外に出る為の出口は、目の前の黒い霧の中を入ってください。ではでは』
アナウンスが終わると僕たちの前に、黒い霧状の出口が現れた。
「やれやれ、全く肩が凝るミステリーだったぜ」
鏡侍郎が独りごちる中、黒い霧状の出口から外に出ると──円錐に変化していたクルーザーが元通りになっていた。
よかった。これで南極まで飛ばされずに済んだ。
だが、また1人だけ、怒っている人がいた──鏡侍郎だ。
「あの汚ねえ物乞い野郎! どこ行きやがった! あんなくだらねえミステリーなんざ用意しやがって。もっと難問を期待──いや、とにかくぶん殴らないと気が済まねえ」
難問を期待って……やっぱり少しワクワクしてたのか。まさか鏡侍郎がミステリーオタクだったとはな。
ちなみに、今後のルートに関してだが、リコとのジャンケンに負けて、航路になった。
はあ……一週間も海の上かよ。
第5章・了 デッドデイまで残り、39日と22時間。
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