第119話 いざ、狂気の鬼畜ダンジョンへ


 *2


 まずは、地下1階層か。


 松明のおかげで暗い場所もよく見えるが、まさに石でできた迷宮だな。


 マッピングしようにも、5分置きに地形が変わるのかよ、でも何かしらの設定があるはずだ。

 決して変わらない設定が。それを確認するためにも、携帯電話で録画しておかなくては。


 何か決定的な何かがあると思う、じゃないと5分置きに地形が──ッ!


 『5分経過。地形と地下への階段の場所が移動します』


 おいおい、短すぎだろ5分。


 まだ体感2分ちょいなのに──っと、なんだこの地響きは?

 ああ、そうか、地形が変わる地響きか。


 「なあ、リコ。この壁邪魔だと思わないか?」


 「ああ。俺もバリガチそう思ってた。んじゃ壊すのは鏡侍郎担当ってことで」


 「解った。来い【グラウンド・バーサーカー】! ぶっ壊れな! 『サウザンド・インパクト』! うぜえええええええ!!」


 しかし、壁には傷1つ付いていない。


 「おかしいぜ、この建物。俺の全力を込めたってのに」


 次の瞬間、警告音が鳴り響いた。


 『警告、警告。過度なオブジェクト破壊行為は許されていません。次回また同じことをすれば、ペナルティーとして、また始まりの地下1階層から始まりますので、ご了承ください』


 まあ。隠し扉とかで、軽く押してみたりとかはあるけど、今のは確実にゲーム内オブジェクトを壊しにきてるよね。


 あれでクリアできたら、誰も苦労はしないぞ──っと、また地響きか。


 しかし、あのオブジェクトを殴ってるとき、プリンみたいに揺れていたが──僕は録画しておいた、鏡侍郎が殴ったオブジェクトをチェックしてみると、面白いことが解った。


 確かに傷はついてないが、少しだけ色が薄くなってる。テクスチャーのバグか何かだろうか?


 ん? 僕は咄嗟に後ろを見た。


 すると、この動画と同じ、色が薄くなっている壁が僕の背後にあった。


 そうか、やっぱり5分置きに地形を変えるなんて無理があったんだよ。


 こちとら、小学校1年生の時からゲーマーだぞ! ゲーマー魂を舐めるなよ!


 僕がほくそ笑んでいると、鏡侍郎とリコが詰めよってきた。


 「おい。何がそんなに面白いんだ? クソ兄貴!」


 「いや違うよ! 鏡侍郎のおかげで、謎が解ったんだ」


 「なんだよ謎ってのは? さっさと言いやがれ!」


 「解ったよ。さっき鏡侍郎が殴った壁のオブジェクトの色が少し薄くなってたんだ」


 僕は鏡侍郎に録画した動画を見せた。


 「確かにな。んで、それの何がおかしいんだ?」


 「ちょっと後ろを見てくれ」


 鏡侍郎が言われるがまま、後ろを見ると唖然としていた。


 何せ、さっき鏡侍郎が殴った壁が、後ろ側にあったのだから。


 「つまりこれは、あれか?」


 「ああ!? お前らさっきから、何バリガチこそこそしてんだよ!」


 リコが割って入ってきたので丁度いい。2人に説明するか。


 「このダンジョンは5分置きに鏡写しみたいに反転してる。だから5分経過したら5分休んで、またマッピングすれば、このダンジョンの地形が解る」


 「マジかよ! バリガチお手柄じゃねーか鏡佑!」


 まあ、僕じゃなくて携帯で録画しておいたから、携帯のおかげなんだけどね。


 まあギミックが解ればこっちのもんだ。


 どうやら、このダンジョンは5分置きに配置を変えることを重視して、モンスターやトラップの類はないようだ。


 そしてあっと言う間に地下5階層まで降りるや否や、またあの声だ。


 『地下5階層まで無事に到着、おめでとうございます。このダンジョンのギミックを見破るとは流石ですね〜。しかし! このダンジョンには地下5階層に中ボスを配置し、見事地下10階層には大ボスを設置してありますので、どうかお楽しみください。嗚呼、なんてフィアーなダンジョン! まさにマッド・ランド最大級のアトラクション! ではではこれにて』


 なんだか、鏡侍郎じゃないが、僕も『ウザイ』と言いたくなってきた。


 しかし中ボスか。地下5階層って言ったらこの場所だよな。


 いきなり背後から来るとは思えない。


 ならば、また黒い霧か?


 僕があれこれ考えていると、案の定の目の前に黒い霧が出現した。


 「どうやらここが、中ボスの部屋みたいだ」


 「おい。なんでそんなこと、バリガチ解るんだ?」


 「ああ。俺も気になるぜ」


 いやいや、貴方たち2人の方がどうかしてるよ。


 普通に考えて怪しいでしょ! ボスって感じでしょ!


 まあ1から説明してたら、それこそ44日あってもの足りないからやめておこう。


 「とりあえず、ここが中ボスの部屋なの! とにかく入るよ!」



 ──────



 黒い霧の中は、祭壇に辺り一面が蝋燭だらけの部屋だった。


 そして、僕らの方へ急降下してくる何か。


 これが中ボスだろう。


 「キヒヒヒ。私は恋慕の魔女『ラブ・ウィッチ』。ねぇ? 私綺麗? おや良い男がいるじゃないか」


 そう言う中ボスは、見るからに、鏡侍郎を見てた。


 箒に跨り魔女の帽子を被り縦横無尽に部屋中を、飛び回っている。


 と言うか、羽虫のようにブンブンと鏡侍郎の周りを飛んでいる。


 どうやら、鏡侍郎のことが気に入ったようだ。


 「こいつの相手は俺だ。『サウザンド・インパクト』が通用するか試してみたいしな」


 言って、中ボスの魔女と鏡侍郎のバトルが今、始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る