第3章 狂気のダンジョン攻略、【マッド・スカルプチャー】
第118話 狂気のダンジョンへ、イラッシャーイ
*1
ぐほあ! オーストラリアの港に到着したのはいいが、寒い! 寒すぎる!
「お、おい。お前ら寒く──はッ!」
見ると2人ともコートを着ていた。
なんだよ、コートあるんじゃん。
「おいリコ! 僕の分のコートも──」
「ああ……バリガチ悪い。コートは2着しか無かった」
な、なんですとおおおおお!
「じゃあ、じゃあ僕のコートは? このまま凍死しろってか?」
「凍死はしないだろうが、バリガチ寒いだろうな」
「うるせー! ここは平等にジャンケンで決めるぞ! さーい、しょーは……」
「そんじゃ、俺はクルーザの燃料補給にバリガチ行ってくるぜ!」
「あっ! 逃げた! 待てリコーーーーーーー!!!!」
「やれやれ、全く肩が凝る野郎だぜ」
数分後、リコが戻ってきた。
「バリガチ悪かったな。これからの航路は寒くなるから、タクシーで鏡佑のコートを買いに行こうぜ! これでいいだろ?」
「まあ悪くないけど、先にコート3着用意してろよ」
言って──三人でタクシーに乗り、コートが売ってる繁華街に向かった。
しかしオーストラリアか。僕の人生で絶対に行かないと思っていた、漣や太陽に照らされた美しい海。
うーむ、ここは動画でも撮って録画しておこう。
「お客さん。オーストラリアは初めてかい?」
ん? やけに流暢な日本語だな。
「え、ええ。まあ初めてです」
「そうかいそうかい、この季節ならサンタがトナカイで橇に乗ってるんじゃなくて、サンタがアイススケートをしてる姿が見れますぜ」
「は、はあ……」
どうでもいい内容だったが──なんだが酷く眠いな。
リコも鏡侍郎も寝てるみたいだし、繁華街に着く数十分だけ寝ておくか。
──────────
「う、うーん、もう食べられないよ……」
「おいクソ兄貴! なに寝言こいてんだ! 早く起きやがれ!」
鏡侍郎の怒鳴り声で、眠い目を開くと──外の風景は真っ暗だった。
光1つない場所だ。なんだか暗黒の深海みたいだぞ!
何がどうなってるんだ!?
「この! チキショー! バリガチ硬えぞ! なんだこのドア! 開かねえじゃん! 鏡佑の方は!?」
「僕の方もダメだ! おい鏡侍郎! そっちのドアは!?」
「いやダメだ! 助手席のドアも開かねえ! おいオッサン! さっさと車を止め──な、なにいいいい!?」
滅多に驚かない鏡侍郎が驚いている。
一体何事だ?
「有り得ねえ。さっきまでこのオッサン、ベラベラ喋っていやがったのに……中身はただの人間の形をした風船だ!」
その時、仰々しいほど大袈裟なパレードの曲と、けたたましい声で喋る男の声が聞こえた。
洒脱とは程遠い、鼓膜が不愉快になる声だ。
『おっほん! 私はこの狂気ダンジョンのアトラクションのオーナー。通称フィアーでございます。皆様は今からこの狂気のダンジョン。マッド・ランド・ダンジョンの最下層まで目指してもらいます。ちなみに、最下層まで行きダンジョン攻略をクリアしない限り、決して外には出られません! 嗚呼、なんというフィアー!! それでは皆様のご健闘を祈ります』
不愉快な音は止まり、車も止まった。
そしてゆっくりと車の運転席のドアが開く。
「どうやら、言うことを聞くしかないようだな。肩が凝るが、ここはあのふざけた声の野郎をブチのめす為に、癪だがお招きに与って、このふざけたお遊びに付き合ってやるしかねえようだ」
鏡侍郎がいうなり、タクシーのドアは全て開き、仰々しいパレードの曲と、これまた仰々しい遊園地のような、様々なライトアップが、辺り一面を照らす。
よく見ると、一面ライトアップされている場所が一ヶ所だけある。きっとこれがそのダンジョンとやらだ。
だがそのダンジョンとやらは──やたら小さい。これでダンジョンなのか?
大きさと形は、成人男性ぐらいの大きさで、円柱の形をしている。
しかも、入り口がない。
代わりに、煙というかなんというか、中が見えない黒い霧に覆われた場所があった。
「あれがきっと入り口だな。バリガチ間違いねえ」
するとまた、あの不愉快な声がした。
『正解! 正解! 皆様には、あの黒い霧の中に入ってもらい、1階から最下層の地下10階まで目指してもらいます』
「最下層が10階とは随分と作りが甘いんじゃねーか?」
鏡侍郎の揶揄に、不愉快な声は応えた。
『本当は、現在地下100階までを想定して作っていますが、そちらのダンジョンは貴方たちには攻略できないでしょう。それに地下10階と言っても舐めないで下さい。5分置きにダンジョン内の地形は変化して地下への階段の場所も変わります。ではご堪能下さいませ』
5分で地形が変わるだと!?
そんなダンジョンゲーム鬼畜すぎるだろ!
ラストダンジョンでもないのに!
でもとにかく、このダンジョンをクリアして外に出ないと、前には進めないか。
ついでに僕のコートも手に入らない。
幸いこの空間は寒くないが。
鏡侍郎とリコはやる気満々な表情だが、ゲームをしてこなかったのだろう。なぜならば、5分置きに地形と地下への階段の場所が変化する鬼畜さを、全く理解していない顔だからである。
「よし。まずは俺から入るぜ」
鏡侍郎はそう言って、余裕の表情で黒い霧の中に入って行った。
その後はリコが入り、最後は僕だ。
逃げるわけには行かないよな……というかどこに逃げ場があるんだ?
あるとしたら目の前にある黒い霧の中だ。
そんじゃ、この鬼畜ゲームに挑んでみるか……。
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