第117話 四位一体、【インフェルノ・カルテット】
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ビビの能力を改めて説明するなら、『変幻型』のマグマの大虎である。
絶えず流動する肉体に加えて、恐ろしいことに、ナノマシン群体でもある。
これが意味するところは──早い話が、この程度の地獄を模したものなど、ビビにとっては単なるウォーミングアップでしかないということだ。
『条件型』のルーバ4兄弟は『抽象型』に見えるが、肉体は流動はしていない。
その肉体を嵐や雷に変えているだけに過ぎない。つまり、容易に触れられれば、すぐに倒せる相手なのだ。
「いくビビよ! 『バースト・ブレス』!」
ビビの『ゲイン』の奔流が瑠璃色に輝き、天まで届きそうになっている。
さらにビビは、当たれば焦熱の爆発を起こすブレスを、その牙を剥き出しにして大口を開き、吐き出した。
だが、嵐と炎獄と氷柱のトリプルコンボに邪魔をされ相殺されてしまった。
「今度は本気で行くビビよ! 『ヘル・ボルケーノ』!」
ビビがいうなり、悪魔的な破壊の熱量が放出され、嵐を包み込むような地獄の炎は光輝燦然。まさに円蓋となり火、火、火、炎炎が茫々となり、たちまち焦熱地獄が嵐を呑み込む。
黒き雷などビビの前では風に舞う雛鳥の羽毛に近い。
ビビに雷が直撃しても、その焦熱が飲み込んでしまう。
地獄、地獄、地獄!
灼熱よりも尚──いと高き翔炎が雷を呑み込む、嵐を削る、氷柱を溶かす、炎獄を取り込む。
地獄の四重奏も、ビビの前では口笛に過ぎないことを知った。
だが、ここで諦めるわけにはいかない。
彼ら4人の意地の一撃、この四重奏が1つになり、ビビを襲ったのだ。
燃え盛る炎を纏った、大嵐が一本の水の槍のようになり、そこに黒き雷の雷撃が加わり、大嵐の先は大氷柱となった。
つまり、雷と嵐と氷と炎の4つの属性を持つ、巨大な槍が、ビビを襲った。
しかし、ビビの『ヘル・ボルケーノ』の前では、座興に過ぎない。
それだけの力量の差があったのだ。
怒涛の如く押し寄せる作られた地獄は、真なる地獄に到底及ばない。
大災禍。それがビビの2つ名なのであれば、まさにそれである。
ビビの肉体のマグマの肉体に鎖をつけて呑み込む。そして跡形もなく消滅させる。
それを可能としたのはナノマシン群体であるビビだけに許された大技。
そして、襲い来る四位一体の大槍は、ビビのマグマの肉体から、ナノマシンが鎖を作り、その鎖が大槍を巻き込む。
と、同時に、鎖に巻き込まれた大槍がビビのマグマの肉体に引きずり込まれ、その焦熱地獄の中で、消滅した。
つまり、4人揃って放たれる『条件型』の【インフェルノ・カルテット】は完全に消滅し、そのピース能力者4名も消滅したことになる。
そのまま、4人組が消滅するのを確認すると、ビビはまた猫の姿に戻り、遥か上空から、鏡佑の頭に上手く着地した。
「おいビビ。何もあれほど大暴れすることなかったんじゃないか?」
鏡佑の言葉にビビは胸を張って応えた。
「やっぱり、いざという時に、ウォーミングアップは大事だビビ!」
「お前のそのウォーミングアップで、あのバカ4人組は消滅したんだぞ?」
鏡佑の言葉に対して、ビビは鏡佑を眇め見て語った。
「でも、ジェイトの刺客ビビ! 俺たちを殺そうとしてきた悪の軍勢は最後、大爆発して終わるんだビビ!」
「大爆発って……お前が自分の体を溶鉱炉にして溶かして消滅させたようにしか、見えなかったけど」
(というか、悪の軍勢は大爆発って、完全に臥龍の店で、なんちゃらライダーのDVDでも鑑賞していやがったな。しかし、僕が言うのもなんだが、ビビを怒らせると怖いだろうな)
ビビの強さに驚愕の念を隠しきれなかったのは、鏡侍郎とリコも同じだった。
まさかただの猫だと思っていたのが、マグマの大虎に変貌するや否や、あの大気が絶叫する破壊の象徴を、丸呑みにして消滅させるだなんて。
あの4兄弟が破壊の象徴ならば、ビビは災禍の象徴だ。
地獄のあらゆる責苦よりもなお厳しい、阿鼻獄の支配者。
それがこの猫なのだと、2人は思わずにはいられなかった。
そして2人は誓った。
この猫だけは、敵に回してはダメだと。
そして、先ほどまでの暗澹たる空は一片の雲もない蒼穹となり清々しい陽射しが差し込んでいる。
だが、虚空を震え上がらせ、壊滅に壊滅を重ねた天はビビに畏怖しているようだった。
茫々漠々と広がる上空には冷気が渦巻いている。
日本がある北半球とは逆の南半球にあるオーストラリアは、現在、真冬なのだ。
ビビの戦闘に寒気を感じるのと同時に、外気もまた寒冷と寒風を運んでいた。
第2章・了 デッドデイまで残り、40日と10時間。
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