第6章 不還生書
第100話 不還生書
「『
辺り一面が培養槽だらけの苔でも生えてそうな、薄暗い場所に、一人で研究レポートを書いている男に、スーツ姿の男は尋ねた。
「おお! これはファウスト大統領。こんな辺鄙な場所まで来なくとも、後でレポートは提出いたしますよ」
「いや、人造生命兵器が造られている場所を、視察する必要があったのだ」
レポートを書いている白衣の男は、手を顎に添えて、首を傾げて言う。
「視察と申されましたか? 大統領直属護衛団員のパトリオスを一人も侍らせずに」
「いや、今はこいつらがいる」
その言葉に応じて、影から薄っすらと人のような霧が数人見えた。
「あぁ〜、なるほど。そういうことですか」
「それで、破壊できそうな生物は?」
「ええ……あの男からの連絡待ちですが、やはりイグラスの能力でしか……何せブラックホールを軽々と呑み込む力は今の化学水準では──」
「では、どれくらいの、年月なら可能だ?」
「そうですな。あと50年──いや100年です」
「では『矛盾の亀裂』が暴走するのはいつ頃だ?」
「後──短くて1年、長くても2年でしょうな」
「やはり、早急にイグラスが目醒めたか、あの男を『ミラーリング・ゲート』を使って呼び戻さなくては。この星。いやこの宇宙が消滅してしまうのだからな」
「承知しました。『ミラーリング・ゲート』の開放を急がせます」
「うむ。では私は会議に戻る。またマギア・ヘイズと四凶を相手に、大きな戦争になるやもしれないからな。しかし、まさかアースの方で転生するなんて。今までの歴史で一度もなかったことが起きたか……」
第陸章・
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