第88話 宣戦布告は、突然に
*4
つーか、うるせえええええええ!!
鼓膜が破けるううううう!!
しかも超絶音痴だあああああ!!
僕は早々にこの大騒音の亜空間から逃れ、外に出た。
なんか──クラブの中の方が暑かったので、勘違いだが、少しだけ外気が涼しく感じる。
にしても、ドンキーか、酷い奴らだ。
リザレのやつ大丈夫かな?
「おい。お前にロイヤル質問がある」
急に声をかけられた。
その声の主は、リザレでもないし、木陰理でもない。
ましてや倉鷹でもない。
アイツは今、地下アイドルのアザミとか言うのに熱中して、それどころじゃないだろ。
だとしたら、初めてのやつだ。
僕が声のする方を見ると、中年の小太りの背の低い、カエルのようにギョロっとした目が印象的な、大きなクロブチの丸メガネをかけている男がいた。
よく見ると、黒髪のドレッドヘアーとビーバーみたいな出っ歯も印象的だ。
「俺の名はDJバービー。aka鯉炭ヨシオだ。特別にヨシオさんってロイヤル呼ばせやる」
バービー……ねぇ。
どちらかと言えば、出っ歯だからビーバーじゃないのか?
「特別にロイヤル教えてやる。鯉は錦鯉の鯉に、炭は炭火焼きの炭、ヨシオはカタカナだ」
そう言って、自分の名前が入った名刺を渡してきた。
初めから名刺を見れば解るのに……こいつ、バカなんだな。
「お前は、九条鏡佑でいいんだな?」
「え? はあ……そうですけど、あの──どちら様ですか?」
「俺はジェイトとスペイドにロイヤル頼まれて、お前を倒しにきた刺客とでも言うところか」
いやいや、普通に考えて、刺客が自分のことを刺客だなんて言わないだろ。
それよりも、コイツ今、ジェイトの名前とスペイドの名前を出したってことは──
「お、お前も『Nox・Fang』のメンバーの一人なのか?」
「ノックスファング? 違う違う。そんなの知らねーよ。とにかくお前をロイヤル殺せと命令されてきたんだ。ちなみにお前と同じピース能力者だ。ロイヤル驚いたか?」
普通、ロイヤルは、確か王室とか貴族的な意味で使うのに、コイツは使い方を間違ってる。
僕はそこに驚いてる。
しかも、見る限り凄そうな──
「今、スペイドが街中で人を狂化させる音を、爆音でロイヤル流してる。その止め方には条件がある。俺が提示する条件を承諾して、その条件をクリアすれば、爆音は消えるってことだ。ほらよ、受け取れ」
そう言って、バイクの鍵を僕に投げてきた。
「その鍵のバイクは、警察の白バイもおったまげる、ロイヤルモンスターマシンの大型バイクの鍵だ白バイよりも200cc多い、なんと1800ccの大型バイクだ。元は警察の白バイを盗んで改造したから、見た目は白バイだが、中身がロイヤル違うってことだぜ」
なぜか悦に浸りながら、話すヨシオであった。
「俺はなあ、日本一、いや、世界一のロイヤルDJになる男だ。そこに、偶然、ジェイトとスペイドが現れて、俺の手助けをする代わりに、お前をロイヤル抹殺しろと言われたんだ」
あ〜なるほど。
はいはい、なんか見えてきた。
つまり、コイツがあまりにバカだから、そこにつけ込まれたってことね。
把握しました。
「んで。どうなんだ? ロイヤルやるのか?」
「お前の条件を飲めば、スペイドは妙な実験をやめるって言ってんだろ?」
「おうよ。ロイヤル正解だ」
「解ったやるよ。でも嘘をついたら、お前を殺しはしないが、相当痛めつけるぞ」
「生意気言ってくれるじゃねーか、このロイヤル小僧が」
ロイヤル小僧って……むしろ褒め言葉になってない?
でも、今、街中でスペイドを探して、アイツを倒すのが早いと思うが、木陰理の思念気の残滓を追って、リザレの安否を確認するのが優先だ。
それに、今回は前回と違い、スペイドは悪目立ちすぎるから警察が──ダメだ。
あの音を聴くと、誰でも、狂化して暴走状態になってしまうから、実質スペイドを捕まえることは無理か。
だったら、ヨシオとの勝負に勝って──ああああ!!
僕、まだ未成年だから、大型バイクの免許持って無い。
と言うか、中型も原チャリも乗ったこと無い。
どうしよう──でも、やるっきゃ無いんだよな。
まあ、なんとかなるさ。
最悪、大型バイクを背負って、僕が走っても良いわけだし。
絵面的には最悪だがな……。
「それじゃあ、今すぐ勝負だ!」
「お〜っと、ロイヤル待ちな。これから、俺はDJライブがあるから、今日の夜9時に、
言って、変人DJは消えた。
今日の夜9時か。
それよりも、木陰理の思念気の残滓を──解った。
忠野公園の方に向かっているな、よし、夜限定って言ったけど、背に腹はなんとやらだから──「『波動脚煌』」
♢ ♢ ♢ ♢
────いよっと。着地成功!
えっと、リザレとアホの木陰理は──いた!
それと行仁包の武蔵坊弁慶みたいな奴もいるんだけど。
「むむ。 お主、鏡佑か!」
「え? なんで、この爺さん、僕の名前を……それよりもリザレだ」
「よ、よう。キョースケ。カッコ悪いもん見せちまったな」
「それよりも、大丈夫なのかよ?」
「無論だ。仙豪様が
木陰理が割って入ってきた。
「ではな、木陰理! 儂は鎖の女妖怪を探さなくてはならぬので、もう行くぞ! 『
言うなり、行仁包の爺さんが、左手の掌を天に翳すと──
その翳した掌から、真っ直ぐに伸びた分厚い氷の道が空中に出現し、行仁包の爺さんは、まるでスノーボードでもするかのように、氷の上を猛スピードで滑って行った。
「今の何かすごい! おい木陰理! 僕にも今の出来る?」
「何で野良の陰陽師が『呪氷道』を扱えるんだ。それにお前からは水の流派の気配は感じないぞ」
「じゃ、じゃあ漢字だけでも教えてくれ!」
僕が木陰理に懇願すると、漢字だけ教えてくれた。
呪氷道か。
何か、氷でできた、虹の上を滑っているみたいだった。
これはロマンだな。
そして僕は内心感じていた。
この技──僕も出来るんじゃね? と。
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