第肆章  腑狂輪音  肆之怪

第84話 腑狂輪音


 耳を塞げ、耳を塞げ。


 風は落ちて星は逃げ。


 濁った月は雲に隠れたがる。


 魔女の合唱ざわめき渡り。


 金属音の合唱ざわめき渡り。


 火花が幾千となく飛んで散る。


 こりゃ怨霊かい?


 いや音量だい。


 フォルティッシモは人を狂わす。


 オマエさんの腹太鼓。


 臓物までも響くじゃないか。


 くるりと回って踊りで絵を描こうか。


 歌の音頭を取っておくれ。


 こりゃ金属音だねえ。


 こりゃ燃えてる音だねえ。


 あの綺麗な音色が曲者さね。


 ほら廻って廻って輪になって。


 金属の中から獣が唸る。


 こんな楽器はみたことない。


 火が点くよ。


 火花が翔ぶよ。


 暗いカーテン引き裂いて。


 盛んな埋み火幾百と。


 繋がり繋がり燃えている。


 篝火が、踊ったり、しゃべったり、煮たり、飲んだり、抱き合ったりだ。


 さあさあお立ちあい。


 そんなケダモノ2匹が駆けずり回るなんてもの、一生に一度、見れるか見れないかだ。


 ケダモノ2匹が古い粉挽車を回しているように────



 あちらさんも、こちらさんも、ただグルグル輪を描いて廻っていればいいのさ。



 第肆章・腑狂輪音ふきょうわおん

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