第83話 花よりクッキー


 *11


 臥龍は、両手で大量のお菓子の袋を抱えている。


 当然、あいつの身の丈にプラスして、大量のお菓子の袋を持っていては気が付くはずもない。


 なので、ビビは臥龍のポロシャツをクイクイと、引っ張った。


 それに気がつき、臥龍は下を向くと、玉のように可愛い外人の幼女がいた。


 流石に、臥龍はロリコンではないが、女性には優しいらしい。


 「ビビの話を熱心に聞いていた」


 そして、僕の方に向かってきた。


 お叱りタイムかな……?


 「ちょっと、お菓子がダメになっちゃうから、一旦、店の中に入るぞ。鍵を開けてくれ」


 言われるがまま、鍵を開ける僕。


 途端に、店内の冷気が僕を包む。


 やはり天国だなぁ〜。


 臥龍は、ひとしきり、荷物を店内に置くと──お叱りは無かった。


 一応、予防策として、先に謝っておいたが、なんでも夏期講習なる、ちょっとした合宿をしていたみたいで、営業は今日からだったらしい。


 「悪い悪い。メールで連絡しようとしたが、忘れてしまってな。まあ怒るなよ。ほら!」


 そう言って、チョコの箱を僕に投げてきた。


 僕は上手くキャッチできず、床に落としてしまった。


 やれやれ、違うのだ。


 そう、これはチートになってもお茶目な部分は忘れない。

 つまりお茶目ポイントなのだ。


 そう考えてて恥ずかしくなってきたのは、いうまでもないが。


 「ところで、さっき聞いぞ。」


 「聞いたって何を?」


 「君は、海外に遠い親戚がいるみたいだな」


 「は、はあ!? 親戚なんて──あっ」 


 ビビのやつが、臥龍に妙な入れ知恵をしたんだな。


 あいつのことだ、綺麗な女性の言うことは、すべて真実みたいなものがあるから、上手く丸め込まれたんだ。


 きっと臥龍の前で猫を被って、話たに違いない。

 まあ元々が猫だけど。



 「だが、1つだけ問題がある」


 「問題って? アベレージな学生の君が、欲望に負けてビビ君を襲うなんてことが──」


 「んなわけねーだろ!」 


 しかも猫だぞ猫!


 なんで猫を襲うんだよ!


 「だが、もしものことを考えて──この店に居候させようと思う」


 おいおい。居候したいのは僕の方だぞ。


 だって家にエアコンがないんだもん。この猛暑の中でさ。


 「流石は、教授先生は話が解るビビね」


 「お? そうか? もっと褒めてもいいんだぞ!」


 何この会話……。


 「ところで、ビビ君。君は甘いものが好きなんだって?」


 「そうだビビ!」


 「そうか、幸い、俺は、いつも災害用に、店の中にお菓子を大量に備蓄しているから、好きなだけ食べなさい。それと2階に上がる許可をあげよう」


 なぬ2階だと?


 初耳だぞ。


 言うなり、臥龍はゴミ──ではなく骨董品をどけると、2階の階段が現れた。


 ここはいつからダンジョンになったんだよ……。


 「2階にはたくさん漫画もあるから、好きなだけ読みなさい。君はアベレージな学生の九条君と違って、英語と日本語の二か国語を話せるし、文字も読めるらしからな」


 なるほど、優秀な幼女を今のうちから飼い慣らしておいて、自分の優秀な部下にしようという腹積もりか……。


 臥龍よ、どこまでも、狡い奴。


 「ビャッホォォォイ! 嬉しいビビ!」


 全く、ビビには甘くして、お菓子食べ放題、漫画見放題。


 これじゃあ漫画喫茶じゃん。


 対して僕は、チョコの箱一個。


 臥龍よ、どこまでも、ケチなやつ。


 「ちなみにだが、九条君。君は勝手に漫画を読まないこと」


 「は? なんで?」


 「なんでって、君は俺の大事なフルプレートアーマーを壊して、代わりに夏休み中は、ちゃんと店番を頼んだだろ! 漫画を読ませるために店番を頼んだんじゃないぞ」


 「だからあれは僕じゃなくて! 心絵が──」


 「また人の所為か、君は本当にアベレージな学生だな。チャブ台があったらひっくり返したいよ」


 「どこの昭和アニメだよ。古過ぎるんだよ」


 「まあ、そういう訳だから、この子は、この店で預かる」 


 「とかなんとか言って、隠しカメラで盗撮とかしようとしてるんじゃない?」


 「俺にロリコンの趣味はない! 俺はおっぱ──いや、なんでもない」


 「なんだよ。最後まで言えよ。」


 「うるっさいんだよ! 君はいつもいつも!」


 や〜っぱりコイツはおっぱいのことばっかり考えてる、劣学者だったか。


 しっかし、ビビのやついいなぁ〜、こんな涼しい場所を独り占めにして、漫画も見放題なんて。


 いや待てよ──臥龍がいない時にこっそり読めばいいだけだ。


 それに、お菓子も大量に買い込んでんだから、少しぐらい減ったところでバレやしないだろう。


 うむ、最初は最悪な夏休みだと思ったが──考え方を変えれば案外充実した夏休みになりそうだぞ。


 これも、ビビが猫を被って臥龍に懇願したからだ。


 少しだけビビにも、感謝をしておくか。


 それと、今回の事件は解決──したのか判らない、もう同じ事件が発生しなければ、解決したと言える。


 よし、そうと決まれば街羽警察署まで行って署長さんに事件は解決したと言って、そのお礼にエアコンを買って欲しいと交渉しよう。




 第参章・紅色骸猫こうしょくがいびょう・了

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