第59話 捕食者の目論見
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ポニー・シンガーが数瞬とはいえ、守りの体勢に入り、ローザ・リー・ストライクの能力を観察しなくてはいけない時も──先に放たれた幾千万のポニーの凶弾は過たず、今まさに飢えた狼が獲物を喰い裂かんが如くローザに向かって一斉に向かっている。
「いいもん見せてやんよサグフェイス!『ウィンドミル』ッ!」
再び繰り出されたローザの
しかし、その技は先ほどよりも、少し様相が違った。
先に放たれた同じ大技ではあるが、中天を大旋回はしているものの、無秩序な動作ではない。
過たずローザに向かった凶弾は、本来なら、『ウィンドミル』で粉微塵に出来よう。
しかしながら、流石のローザも幾千万のポニーの凶弾を捌くことは能わない。
ましてや、狙いがはきとしているならば、なおさらだ。
そして、凶弾はローザを蜂の巣に──しなかった。
厳密に言えば出来なかったのである。
ローザの『ウィンドミル』の凶刃は、どこからローザを襲ってくるのか、最初から予測していたかのように、真夜中の中天で閃きながら、過たずに全てを切り裂いた。
果たして、この一連の流れは偶然だったのか必然だったのか……ポニーは歯噛みしながら思案した。
そのポニーの焦燥感を煽り立てるように、やおらローザが人を小馬鹿にする笑みを湛えて嘯く。
「いくら鉛のバーガーを安売りしたって無駄だぜ。所詮オメーは弾ぁブッ放すだけのワックなジャンク能力なんだからよぉ。ちゃんと身の程を弁えろよな、このサグフェイスが」
その
が、すぐに一呼吸を入れると、再度ローザの一連の流れを考察し──ようとしたところで、またもローザが嘯く。
それは煽り文句ではなく、ローザの
「なぁサグフェイス。一つ提案何だが、こんな一目につく場所で大暴れするよりも、一目につかない場所で
思いもよらないローザの提案に、青天の霹靂もさることながらポニーは思案する。
確かに、自分は懸賞金がかけられたお尋ね者である。
尚且つ第二の命を与えてくれた日本のヤクザの大元締め、
このローザの提案はポニーにとっても都合が良い。
さらに付け加えるなら、ローザ自身も、その気性の荒い性格から、『
つまり、この時、驚くことに二人の凶者の考えが合致したのである。
ポニーはそのローザの提案に対し、一言も発さず、やおら肯定の意味で頷いた。
これには流石のローザも肚裡で、げに驚愕を隠せなかった。
ローザにとってはポニーが承諾しなくても、無理矢理『ピース・アニマ』である『ロックス』を使用して、ローザが向かおうとしていた場所に引き
斯くしてローザとポニーは
そしてローザは『リリース』という言を発すると、今まであった半径200メートルの深紅の帷が突如として消滅したのだ。
ポニーがこの現象について思案を巡らす前に、すでにローザは新たなる激戦地に向かうための準備をしていた。
ローザはやおらホットパンツのジーンズのポケットから、野球ボール大の半透明の球体である『ロックス』を取り出すと、それを地面に放り投げ、眼球から視力を奪うほどの閃光が当たり一面を呑み込む。
その閃光の先にはローザの目論見であった、自身に都合の良い場所が待ち構えている。
そして、ローザは『ロックス』で
何故、九条鏡佑だけではなく黒宮愛も連れて行ったのかは判然としないが、『ロックス』の閃光の中でローザは静かに、自身の焦燥をこれでもかと言わんばかりにポニーにぶつけ、絶命させることが出来ると思い、静かにほくそ笑んでいた。
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