第4話 探索


 私は心が躍った。


『こんなやつ死ねばいい』

『この子が可哀想だよ』

『よく堂々と学校に来ていられるな』

『ばーか』


 恨みしかないあいつがこんな目に遭っているなんて。


 最高…。


 ――――――――――――――


「で、どうすんの?」

「さあ?」


 さあって…。

 こいつ無責任すぎるだろ。

 もっと真面目に考えようとか思わないのか…?


「まあでもこんなことしていてもあれだし、この部屋から出られるなら色々探してみるのはどうだ?」

 優希が口を出す。

「そうだね。優希の言う通りにするのが一番かも。」

「じゃあ、2人1組でこの部屋の外に探索に行こう。15分後にここに戻ってこよう。」


 優希の合図で外に探索に行くことになった。


「あ…。あのさ。僕ちょっと体調が悪くてさ…。ここにいていいかな。」

 康介が体調を崩していたらしい。

 こんな意味のわからない部屋に突然連れて来られたらそりゃ体調悪くなるよな…。

「じゃあ…。ココネ。ここで看病していてくれないか。」

「おっけ。いいよ。」

「じゃあ解散。」


 俺は真衣と一緒に探索をすることに。


「夜だから怖いね…。」

「そうだな。」


 繋いでいる手から真衣が不安になっているのがわかる。

 だからいつもよりちょっと強く手を握る。


 とりあえず下の階から見て行くことになった。


「ここって何に使っていたんだろうね。」

「さあな。でもこの部屋、結構広いな。」


 一番大きそうな部屋を色々漁ってみることにした。


 しかし特に何も出て来ない。

 次の部屋に行こうとしたときだった。


「晴人くん…。これ。」


 血のついたバールがあった。


 真衣からそのバールを受け取る。


 かるぅ…。


 はあ。なるほどね。

 偽物のバールとそこら中に広がるいろんな服。

 それとカメラのレンズ。


「真衣。このバール偽物だよ。」

「え。そうなの。」

「ああ。この雰囲気は映画とかドラマのセットなんじゃない?」

「へえ。今は使われてないのかな。」

「そうだね。ここまでボロボロだと使われてないのかも。」


 この建物は全体的に何かのセットになっているらしい。

 でもなんでこの建物なんだろう。

 窓が全然ないから外の雰囲気が全然わからない。


 どうしようかな…。

 ここまで収穫なしだと怪しまれないかな…。


 色々考えながら元の部屋に戻ってきた。


「まだ時間あるし、さっき建物の地図見たら屋上あるっぽかったから行ってみよっか。」

「そうだね…ってあれ?」

「どうした?」

「康介とココネがいないよ。」


 たしかに…。


「まあ体調良くなったんじゃない?」

「そっか。いこっか。」


 屋上に行く途中に裕太と雄一郎に会ったが普段とは違う雰囲気が出ていた気がした。


 そして屋上に出て下を見た時真衣が腰を抜かし立てなくなっていた。


 下には2人で抱きしめ合いながら血を流して死んでいる男女がいた。


「康介と…。ココネ…。」


 俺は真衣を背負いみんなを探しに行く。


 でも俺はあの光景に妙に見覚えがあった。

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