第3話 どうすんの


「今日も楽しかったな。」

「そうだな。」

「ねえ。2人とも。」

「どうしたんだ?」

「私たちこれからも一緒にいようね。」

「どうしたんだよ。急に改まって。」

「でもいいでしょ。そうやって感じたんだし。」

「ふっ。そうだな。一緒にいような。」


 ――――――――――――――


「で。どうすんの。」


 優希が口を開く。


 しかし誰も口を開かない。

 それもそうだろう。

 意味のわからないゲームに突然参加させられてしまっているのだから。


 まあ。楽にやっていればいいだろう。

 そのうち出れるだろうから。


 そうやって楽観的に考えていると、今にも泣きそうな顔で真衣が抱きついてきた。


「こわいよ…。」

「大丈夫だよ。俺が一緒にいるから。」

「でも…。こういうのって殺されちゃうやつじゃないの…。」

「それはわからないけれど、俺が絶対に守るから…。信じて。」


 真衣が小さく頷いた。


 俺は周りをもう一度見渡す。


 しかし、誰も話だそうとはしない。

 

 人狼ゲームなんだとしたら、無理に口を開いてしまったら怪しまれてしまうかもしれない。

 そんな気持ちがみんなの頭の中にはあるのだろう。


 ただ、何もしないと始まらない。

 何か言い出さないと。


 1人で格闘しているともう一度優希が口を開いた。


「みんな黙っていても解決しないんだよ。」

「そんなことはわかってるのよ!」

 そう叫んだのは春乃だった。


 普段は穏やかな春乃がこんなに怒鳴っている姿は初めてみた。


「みんなわかっているのよ。でも混乱してるんだし、吊られた時に何されるのか怖くて仕方ないんだって…。」


 春乃が泣きそうになっている。

 珍しい姿に俺はびっくりした。


 そんな中ココネが口を開いた。


「なんでそんな1人だけ冷静にいられるのかしら。」

「いやいや。別に冷静じゃないさ。俺だって動揺してるんだよ。」

「じゃあなんでそんな堂々とハキハキとしてるのよ。」

「どうせ誰も言い出さないだろ。俺が何かいうしかないじゃないか。」

「そんなことないわよ。もしかして…人狼?」

「はあ?」


 やばい。喧嘩になっちゃった。


 言い合いになっている2人を必死に大和が静止する。


 確かに今何も手掛かりがない上であるが、堂々としているだけで人狼と決めつけるのはやり過ぎだ。

 それは流石にありえない。


 でも、この状況どうするんだ。

 2人はいまだに言い合いをしている。


 どうしようと悩んでいる時に華奈が口を開く。


「優希くんはきっと人狼じゃないよ。」

「どうしてそう思うのかしら。」

「スパイなら話を始めるメリットはない。まともに会議もせずに最初の会議が終わってしまえば確実に1人を追放できる。」

「確かに。」


 みんな納得したようだった。


 俺はもう一度真衣をぎゅっと抱きしめる。

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