前世ルーレットの罠
きょうじゅ
本文
「ばばーん! マチカネフクキタルの占いの館へようこそ!」
「誰がマチカネフクキタルだよ、お前は文芸部の
「まあそうなんですけど」
「競走馬のマチカネフクキタルと占いになんの関係があるんだ」
「いえ、そのへんは気にしないでください。二次創作ではない建前なんで」
「あっそう。で、ここはなんなんだ? たかが中学の文化祭の催しで、校庭にどでかいテントなんか建ておってからに」
「だから占いの館ですってば。占っていきませんか?」
「まあ……それはいいが。何を占えるんだ? 金運か?」
「それがですねー。ずばり『ルーレット前世占い』です」
「というと?」
「ルーレットを回してダーツを投げて、刺さったところに書いてあったのがあなたの前世です」
「雑すぎないか? ダーツの旅でもあるまいし」
「いーんですよ、所詮当たるも八卦当たらぬも八卦なんですから」
「テキトーすぎる。まあいい。じゃあ、やってみよう。100円でいいのか」
「二本買ってください」
「なんで?」
「一本わたしが先に投げます」
「なんで占い師が客の金で自分の前世を占うんだよ」
「そういう企画なんです」
「意味がわからねえ。まあいい。どうせ押し問答しても無駄なんだろう、さっさとやれ」
「はーい」
「……江戸の元禄期に浪人者と相対死をした町娘『おみつ』、か。どうでもよさそうな趣向の割には重たい結果が出たな」
「次は先輩ですよ!」
「うむ」
「はい、結果出ました!」
「……『元禄期に、町娘おみつと相対死をした浪人者』……?」
「なんとびっくり! 先輩とわたしは、前世で来世を誓い合った同士の仲だったんですね!」
「……話がうますぎるだろ、いくらなんでも」
「あっちょっと! 二回も三回も同じ矢を投げてはダメです! ダメですってば!」
「何度投げても同じところにしか当たらない。これ、強力な磁石かなんか仕込んであるだろ」
「ぱーひゃらぴー♪」
「バレないとでも思ったのか? こんな見え見えの細工をして」
「いいんですよ」
「なにが」
「だって、これ結局のところ結果を示すのが目的じゃなくて、占い師役の子が、客役の子に『ワタシハアナタニコウイヲモッテイマス』と伝えるためだけの段取りに過ぎないわけですから。どうでしょう?」
「どうって……」
「つまり、わたし、どうですかね? 先輩から見て」
「……」
「……」
「……ダチが。軽音部で。これからライヴだけど、一緒に行くか」
「はいっ!」
「……手、つなぐか?」
「わーい! ちなみに曲は何ですか?」
「『前前前世』」
前世ルーレットの罠 きょうじゅ @Fake_Proffesor
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