第5話「裏切りの校外学習 1」

薄暗い洋館の中では生徒達が集められていた。


「これより特別試験を始める。

まずお前らにはクラスごとに分かれてもらっているがもう関係ない。

堕天使様の指名を果たす時はグループ行動だ。

よってこれよりグループに分ける。

言われたもの同士で固まれ」


「坂倉。青崎。間宮。林道。」


私が知っているのは坂倉だけだ。


あとの二人の間宮はギャル。

林道は物静かな男の子か。


「これよりルールを説明する。

お前らも知っている人狼ゲームだ。

グループごとに人狼が一名いる。

制服のポケットに紙で指名してある。

後で確認してみろ。

その人狼を別のグループが当てた場合、当てられたグループ全員退学だ。

意味がわかるか?退学すれば堕天使様の使命に答えれない。よってその場で死ぬ。」


まるでデスゲームか。面白い。


「ということは密告すれば道連れにできるな」


「ああ。その通りだ。

これは嫌いな奴を堕とすゲームだ。

別に人狼を当てずに一週間過ごしても良い。

何も罰はない。

グループごとの解答権は一回のみだ。

質問があるやつは...いないようだな。

部屋の割り振りは前にあるこの紙に書いてあるから確認しろ。以上」






「ちょ〜最悪。なんでこんなちっさな部屋

なわけ?二段ベットだし。」


間宮は文句を垂れ流している。だが同感だ。

小さな飼育小屋だな。ここに四人は無理がある


「で、人狼は誰なんだい?」


林道が答える。


こいつ男のなのに同じ部屋なのかよ。配慮が足りないんじゃないか?


「私だ。お前、変なことしたら殺すからな」


「はいはい。分かってるよ。」


坂倉は二段ベットの下にいる。


私が上だ。


相変わらず私以外とはコミニケーションを取らずに本を読んでいる。


食事のタイミングは朝の7時、昼の12時、夜の18時のみだ。場所は大広間で行う。


シャワーの時間は朝の5時から7時、夜は19時から21時まで。


それ以外には特にルールはない。


外に出られないことだけだろうか。まぁこんな状況じゃ出る人はいない。


脱出=退学=死だからな。


「私、ちょっと早いけど食事行ってくる〜。」


「俺もいこう。」


部屋は二人きりになる。


私はまだまだお腹は空いていないし今行ったところで料理は用意されていないだろう。


もしかしたら他のグループの偵察、あるいは私達のことを疑っているのかもしれない。


あいつらも悪魔を宿している。油断は禁物だ。


「アリスさんは食事に行かないの?」


「ああ。まだ腹は減っていない。坂倉はどう思う。あいつらのこと。」


「別に怪しいことはないと思うけど...どちらかといえば私達のほうが...」


「...一応忠告しといてやる。

変にあいつらを信用するな。

お前と私、あるいは誰かが殺される結末になる。」





大広間では既にグループごとに席が定められていた。


なるほど、変に密会はさせないということか。


席に座ると間宮は隣で既にナイフを片手に音を少し鳴らしながら食べている。


「このステーキ美味しい〜」


「なぁ、間宮。

聞きたかったんだがお前は何をしてここに?

何故悪魔と契約して魔法少女を目指してる?」


彼女はその話題を聞くや否やいきなりナイフをステーキに刺さりつける。思念が篭りすぎだなナイフに。


「その話はしないでくれるかな」


地雷を踏んだようだ。このまま問いかけても

友好的に答えてはくれないだろう。


話題を林道に移そう。


「林道、お前男だよな。魔法少女になれんの?」


「それは俺も思った、が契約してしまったもんはしょうがないだろ。なんか噂には男はそのまま悪魔、になるっていうがな」


二人とも怪しいところはあるが別段今は行動しなくても良いか。先手をうつ布石がない。


にしても、学園側は何を望んでこれをやっている?


ただの人員削減ならこんな手間をしなくていい。


殺し合いをさせれば良いのだから。



食事を終え、部屋に帰る途中キッチンに何故か入っていく林道を見つけた。


「おい、そっちはキッチンだぞ。何してんだ」


「いや、お腹がまだ空いていて。まだあるか聞きに行こうとしたんだ。」


「そうか。」


私は見逃さなかった。


彼が片手にナイフを隠していることに。








「で、間宮は何かあったか?」


「ううん。彼女は特に何も。

ずっと飾られてる絵画や装飾を漁っているだけだった。

林道くんは本当に持っていたの...?」


「あぁ。でもフルーツナイフだ。

あれで誰かを消すとかではないだろう。

ただ何かをしようとしているのは確かだ。

あのナイフが護衛用にしろ警戒しておく必要がある。」


私と坂倉は二階の奥にあるベランダで情報交換をしていた。



「聞いた?間宮さんから教えてもらったんだけど他のグループでもう退学者が出たみたい。」


「もうか?それはどうやってだ?」


「一つのグループは密告によって道連れに退学になって...


もう二つのグループは人狼を当てられて...」


「本当に死ぬ時は内部からひっくり返って死ぬんだな。血痕一つ見なかった」


おかしい速度だ。初日にしてすでに三グループが死んでいる。


一グループは気が狂ったやつが密告したにしろ人狼を当てたグループはどうもおかしい。


これは接触するしかないようだ。


「明日は林道を追跡しろ。私は間宮にいく。

どちらかが警戒されている場合に困るからな」


「分かったよ。またこの時間にね」


坂倉が人狼かそうでないかはハッキリと知っている。


だから坂倉はいい。


問題は外にある。


今のところおかしな点は二人にあるがどれも私達を狙う理由にはならない。


あるとしたら気が狂うぐらいだろう。


頭のおかしい奴はここにうんざりとするほどいる。かく言う私達もそうなのだろうけど。



やはり警戒するのを二人に絞るのは軽率か。



ベランダから外を見ているとなにやら担任と

誰かが話している。


角度のせいでその誰かが分からない。


急いで二人がいた場所へ向かうが既にいなかった。


まるで何もなかったかのように何もない。


辺りに何か証拠がないか探してみたが何も見つからなかった。


もしも担任が黒幕と組んでいるとしたら、いや担任が黒幕だとしたら何が目的か。


あの担任のことだ。もし嫌いなやつを排除するための私利私欲だとしたら真っ先に狙われるのは私だろう。あいつの立場なら私が真っ先にそうしている。


だがそうではない。


次に排除することに快楽を得ている、だがどうなのだろうか。


断定的に判断するのには情報が少なすぎる。


後ろから足音が聞こえてくる。


這いずるようなゆっくりとした足取りで身長はそこそこのハイヒールを履いた人だろうか。


「青崎、そこで何をしている。」


担任か。


先ほどまでここに居たくせして誤魔化そうとしている。


「お前こそ何をしていた?」


「食事を済まして帰ろうとしたところ、気配を感じたから来たまでだ。ここには何もないぞ。嫌いな人の部屋も」


「はっ。嫌いなやつにそんな回りくどいことしねぇよ。分かってんだろ。あんた」


「来るなら来い。いつでものってやるぞ」


「今はお前以上に嫌いな奴を見つける方が上だ。お前もあのお調子者じじいもクソ喰らえ」


「クソ喰らって目が見えてないのはお前だ。

誰にそんなこと言っているのか理解しろ。脳みそが腐ってるならしょうがないがな」


これではっきりした。こいつは黒幕じゃない。黒幕ならここで私を消すからだ。


誰もいない、来ない状況で消さないのは勿体無い。私が逃げたところで協力するやつはいないだろう。


流石にここの生徒でもコイツには顔が上がらないようだし。


それにあえて私は黒幕を探していることを

告げた。


そして彼女は私と同じくらい、いや少し上くらいの力を持っているのに襲ってこない。


つまり消す必要がない。


黒幕は探されていることに良い気分はしないどころか排除しようと狙ってくるはずだ。


次にまた新たな疑問が思い浮かぶ。


あの時に話していたもう一人は誰だ。


考えられるのは人狼を見つけた人が報告しにいったか。


それとも黒幕があえて正体を告げた可能性もある。


正体を告げることである意味口封じができる。


"嫌いなやつを消すことができる"とルール説明の時に言われていたからこそ黒幕の邪魔は担任でさえしないだろう。


まぁ、黒幕の正体を知っているとしてもこいつは言わないだろう。


なぜなら私の考えと同じでそっちの方が面白いから


「おい、話がある」


「なんだ。手短に済ませろ。私は眠たいんだ」


私はある保険を払っておく。これさえあれば

最悪なルートは回避できる。


私の実力以外のところで。


があればもしもの時は大丈夫なはずだ。


「ああ。それなら--」



驚いた、一本取られたようだ。

面白いやつだ。気に入った。




明日は人狼を当てたグループに接触して聞き出すとしよう。


どんな手段を使ってでも。






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