第4話「自由な鳥には羽が必要かしら?」

昨日、夜中に目が覚めた私は学園内を散歩したがまさか本当にどこへでもトイレを...歩き回る人を見た。


流石の私でも近寄りたくない


鏡の前でいやいや支給された制服を眺める。


これが制服とはセンスが腐ってる。


いつの時代のドレスか分からないようなものだ。


製作者は時代に取り残されているらしい。


特にこのスカートのひらひらが気に入らない。邪魔なものをつけてくれたな。


うまく回転したら飛んでいけそうだ。




身支度を済ませ寮を後にする。


同居人の坂倉は既にクラスに向かっている。


今日から一週間、ここから京都へ向かいそこで過ごす校外学習の日がやってきていた。



そもそも今いるナイトメア学園が日本のどこにあるのか分からない。


関東なのは間違いないが自然に囲まれていることから田舎だろう。


バスで京都へ向かうことから大体6〜8時間か?



クラスに入るとようやくここが地獄と揶揄される理由を知った。


担任がいないこのクラスは各々が自由に暴れ回っている。


お互いに髪の毛をつかみ合っているもの。


チェスをやっているかと思えばネズミの死骸を置いて遊んでいるもの。


集団で誰かを囲っているもの。


なんの種類かは分からないが生肉を食べているもの。


おそらく人生でなかなか見れない光景だろう。


私はそいつらを横目に自分の席に座る。


坂倉はこのクラスのことなんか既に気にしていないようだ。


ふと私の机に落書きされているのを見つける。


私にやるなんていい度胸だ、思い知らせてやる。


私は目の前の机をベランダは放り投げる。


三階からなの机の衝突音はさぞでかいだろう。


皆が一斉に私の方向を見る。


「落書きしたやつ出てこい。」


その言葉を聞くや否や人々の反応は綺麗別れた


元通りに過ごすもの。


静かになるもの。


そして襲いかかってくるものたちだ。


6人がかりで襲ってくる。


男女関係なくだ。


動きが鈍く張り合いがない。これまでの場数の差だろうな。



私は片手で全員のお腹に殴り込む。


「や、やめなよ!担任の先生にバレたら特別指導だよ!」


「特別指導?ここは地獄。好きにやらせてもらう」



「さっそくか。青崎。坂倉も止めなかったようだな」


担任がいつのまにか黒板にもたれかかるように教壇に立っていた。


そして私と坂倉は彼女に腹を殴り蹴られる。


坂倉は既に泡を吹いて気絶していた。


私はまだ耐えれている。だが油断した。


この女意外と速い。


「気絶したお荷物を持っていく必要はないが...何されるか分からないからコイツも持っていこう。」


髪の毛を捕まれ引きずられる。


「離せよ。あばずれ。」


「なぜこの学校に特別指導があるか知っているか?」


まさかだと思うが...


いやこの学園だ。理由は


「ここは地獄だからだ。」






微かな物音と共に目が覚める。


そして少し床がある一定のリズムで揺れているようだ。


真っ暗で何も見えない。


あの後気絶させられどこかに連れてこられたか


ここはどこだ。


「目が覚めたか?」


担任の声が暗闇に響き渡る。


「最悪な環境だな」


彼女はその言葉をきくとゆっくりと話し出す


「最悪な環境、か。

自分の人生に詰まっている人間が口にする言葉だ。自らそれを発するのか。お前は。」


「残念なことに私はここを楽しんでいるがな」


「ああ。それでいい。たとい環境や出生が酷いとしても変わる方法はある。」


「死か?」


「いいや。お前自分自身だ。

変われば気づくだろう。

チャンスが渋滞していることに。」


「何が言いたい?」


「今どこにいるか教えてやる。」


前方向の暗闇がどんどんと消えていく。


いや降りていく。


そしてその全貌が明らかになった時思わず腹から笑ってしまう。


私達は貨物機の中にいたようだ。


そして前に見えるのは


「ほら。高く飛び上がらせてやったぞ。

そのまま笑え。さぁ。いけ。

自由になるんだな」


私は背後に何かを挟んで坂倉がいることに気づく。


そして二人とも縄で縛られた状態でいることにも。


彼女は笑いながら私と坂倉を蹴り落とす。


空はデカすぎる!!!


「自由な鳥さんバイバイ〜」


「くそが!」


身体がここまで引き込まれたことはない。


風を全身に感じながら海の上にいるようだ。


真上から声が聞こえる。


「お前らだけはずるいだろう。私も楽しませてもらおう」


「あんた馬鹿か?」


「いや自由なだ。

さっき嘘をいった。

お前らは自由じゃない。

このまま京都方面に着地しろ」


背後で坂倉が目を覚ましたようだ。


「ん??!?!ってええ?!ど、どういうこと!、!これ夢じゃないの?!」


私は笑いが止まらない。


どこにパラシュートがあるんだこれ。


「さかくらああ!!パラシュート探せ!!このままじゃとべねぇ!チキンになる!ー」


「意味がわからないのだけどおお!!」


担任は少し上で楽しそうにこちらをみている。


マジでなんなんだよ。この展開。


腹が立つがこの状況が面白くてたまらない。


いつ死ぬのか分からない瀬戸際。


この学園は楽しくなりそうだ。


「う、うしろ!!何か挟まってる!」


「どうやって取ればいいんだぁ!!?」


「わ、私が屈むからはやくとっ、てえ!え」


後ろ向きになりながら手探りで空いた隙間に手を伸ばす。


何かを掴めた。


「掴めた!!」


「な、なら!はやくとってよおお!!」


「無理だ。このまま落ちるか」


彼女はそれ以来何も言わなくなった。


気絶したか?


パラシュートの横にご丁寧にナイフがある。


それで縄をゆっくりと切ろうとする。


「....!まってそれ切ったらパラシュート持ってない私ししんじゃあゔ!」


「勝手に捕まってろ!!!」


私は縄を切り終えパラシュートを後ろに背負う。


前にある坂倉が邪魔すぎる。


「顔近づけんな!!」


「無理無理無理」







パラシュートを引きなんとか森林に着陸する。


「あのくそ担任はどこへ行った?」


辺りを見渡しても木々しかない。


坂倉は吐いてて役に立たない。


後ろからの足音に警戒する。


「...誰だ」


「お前らと堕ちたことを忘れてくれるな、

坂倉はどこにいった?」


坂倉は木陰から顔を出す。


「ここです...」


「わかった。3人揃ったな。今からお前らに

魔法少女の"武器"を見せてやる」


彼女はそういうと空中で四角を書くように空を手で切る。


すると真っ暗な液体がどことなく溢れだし

ドア状へと変化する。


「さぁ。ここを通れ。目的地はすぐそこだ。

これが"魔法だ"。覚えておくんだな」




私はドアを開ける。




目の前にはカラスの鳴き声と薄暗い洋館が私達を待っているかのように広がっていた。









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