コルト・ノーワードーⅣ
唐突の提案に、コルトもイルミナも驚かされる。
だがどうやらアンドロメダの独断ではなく、ノイシュテッター公爵も承知の上での提案のようだった。遅れてやって来た公爵が、自分の立場もあるだろうに、コルトへと深々と頭を下げる。
「この通りです! お手合わせして頂いてわかったと思いますが、娘は戦いの才を持つが故に、天狗になっておりました! 今後も先輩、教員、多くの皆様に迷惑をかけると思います! なのでどうか、彼女の面倒を見てやってはくれませんか?!」
「父上! 何を頭など下げている! 私がやられたとはいえ、自分の立場を――」
「娘の将来のためならば、私の立場などどうでもいいわ!」
いつ以来かの、父からの恫喝。
思わず竦んでしまったイルミナは、もう言葉を挟めない。
父は他の誰でもなく、自分のために頭を下げているのだから。
「お願いします! 歳は同じながら桁違いの実力を持つあなたの言う事ならば、娘も少しは言う事を聞いてくれるはず! 謝礼はいくらでもお支払い致しますので、どうか……どうか!」
「私からもお願いします。あなたの力は、周囲の生徒にも影響を与える事でしょう。更なる魔法の発展のため、そして彼女の将来のため、力をお貸し頂けませんでしょうか」
アンドロメダにまで頭を下げられてしまい、コルトは困る。
共に魔王討伐に向かった戦友であり、恩師。今でも世界魔法使い序列五位として尽力する恩人に頭を下げられてしまっては、コルトも断る術が無かった。
(わかりました。お引き受け致します。ただ、僕もやりたい事があります。そのための施設は、確保させて頂きたいのですが)
「やりたい事、ですか……差し支えなければ、お伺いしても?」
(無詠唱魔法の開発。もしくは、今存在する魔法の無詠唱化の研究です)
「なるほど……」
コルトを学園に入れる決断はやはり正しいと、アンドロメダはこの時確信した。
ノイシュテッター公爵令嬢編入の話があってから、ずっと考えていたのだ。中途半端な時期の編入性は、何かしらのトラブルに巻き込まれかねない、と。
そして誰か護衛をと思った時、真っ先にコルトを思い付いた。
彼ならば確実に令嬢を守れるうえ、令嬢の躾も出来る。
更に彼の実力を真に見せる事で、彼に対する周囲の評価も変わっていくだろう。
学園は何かと外と交流を持つ機会が多いため、コルトの存在を改めて認知させるにも丁度いい。彼の本当の力を、もう一度周囲に認めさせる。
そして彼自身、魔王を倒して隠居など考えていなかった。
未だ研究を進め、己を鍛え、前に進もうとし続けていた。
もしも彼が隠居を決めて、もう表に出ないと決めていたら元も子もない計画だったが、彼が真の魔法使いであると同時、信じていた事を悔いずに済んだ事に安堵した。
「わかりました。あなたにも満足頂ける施設を建設致しましょう。ノイシュテッター公爵」
「
こうして、イルミナ・ノイシュテッター公爵令嬢の編入と、コルト・ノーワードの付き添いが決定したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます