第12話 勇者
巡回兵をかわし、門の見える位置まで来る。予想通り兵がごまんと待ち伏せをしている。
「抜けるのは大変だな……」
一人、全く装備の違うやつがいる。装備のレベル、弓、短剣、剣、周りの人たちも壮美が違う。武器は黄金で光っている。
兵ではない。冒険者とかその辺か? ただ、強いなアイツは。
「アセナ、何人か強いやつが……」
さっきまで横で尻尾を振っていたアセナがいない。武器を構える合図がして攻撃準備をする兵たち。アセナが先走った。
「──後で怒らなきゃいけないな。」
無策で突撃するが、アセナは強い。その能力の高さから大体の特攻はうまく行く。
しかし、誤算があるとすれば、敵がアセナより強かったということだ。
「ここに突っ込んでくるとは、なかなかの度胸があるね。それともただのおバカかな?」
アセナの一撃。それをいとも簡単に盾ではじく。空いた胴に刃が迫る。
「……一人で突っ込むなよ。」
すれすれのところでアセナを回収。
「使徒様アイツ強い……です!」
「そりゃそうさ、僕こそが近ごろ噂の勇者、あらゆる武器を使いこなし、その太刀筋は千変万化、まさに天才の勇者。その名も
……こいつ転生してきたな。名前が物語っている。
「お前日本から来ただろ?」
目を大きく見開き驚いている。
「お前も転生したジャパニーズピーポーか!?」
なんだこいつ……
「その恰好……制服じゃん! 学校帰りに死んだのか?血まみれだぞ?」
「そんなもんだ。それより同じ日本生まれの仲だ。ここは穏便に済まそうじゃないか。争いはやめよう!」
通じないだろうが、バカみたいなやつだしワンチャンあるかもな。
「そもそも、お前は何してるんだよ。転生して、強い力を手に入れたなら世界救えよ! なんでダークサイドに立ってるんだよ!?」
こいつ嫌いだ。なりたくて使徒になったんじゃない。
お前はめでたく勇者名のって可愛い子をパーティーに加入させてウハウハ人生送ってんだろうけどよ。こちとら、まともな家もないんだぞ!? こいつは潰してやる!
コイツには腹が立つ。
「俺は、生まれながらにしてダークサイドに堕ちている。天命に従って、邪魔をするなら、容赦なく潰すぞ?」
それっぽくカッコつけて言ってみたらいいものの恥ずかしくなってくる。
「やってみなよ。闇に堕ちた同類がよ。」
勢いよく今まで通りに突っ込む。しかし、早さが出ない。それもそのはず能力によるバフが掛かっていないためである。《復習者》は目的が果たされ効果は消える。あと二つもピンチにならなければ使えない。
──能力が雑魚すぎた! 弱くはないが、条件性。……ここで瀕死の一撃を食らうか? 無策で突っ込みすぎた。これじゃアセナと変わらないじゃねーかよ!
そんなことを考えている横を颯爽と駆け抜ける。敵に向かい一直線に走るアセナ。周りの兵はアセナに意識が行く。こちらの様子を窺うのは、勇者ただ一人だけだ。狙いは定まった。
相手も自分をよう的とし、前に出る。相手の武器は盾と短剣。短剣一本では難しい。いや、相手も転生者であり、武器に慣れていないのでは? 一つの憶測が負けるという判断をかき消していく。
──いける。
前に突き出した短剣を盾で上にはね上げられる。
反動で体制が崩れ、がら空きの胴に盾での突進。ダメージは少ない。
まだまだ《起死回生》が起こる条件値までいかない。しかし、鉄の盾で突進されるなど今まで経験もしたことの無いことだ。経験のない衝撃がやけに痛く感じさせる。
──分が悪い。
「アセナ! こいつとやっていいぞ!」
少し「げ……」のような表情を見せるも、強者との力比べ。すぐに切り替え、突って行く。
雑魚兵ならバフなしの俺でも行ける。
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