第6話 追放
そして現在目が覚めたと思ったら──
「強欲の魔女の使徒など今すぐ処刑だ!」
「何を言っているのですか? こいつがいなければ今頃二乗の魔女によって国は莫大な被害を受けていたんですよ? 国の恩人を死刑にはできません。」
「お前らは魔女の使徒の肩を持つというのか!? さてはお前らも魔女の手先なのだろうな!」
「何を言っておられるのですか?恩を仇で返すなどありえてはいけない。死刑にはできません。」
傷がまだ完全に癒えてない中、僕の運命を握る裁判と言うか、ただの言い争いが起きている。
「──そもそも強欲の魔女に使徒を死刑にしたとなったら、強欲の魔女がこの国を終わらせに来るかもだろうが!」
「貧民は黙っていろ! なんだその身なりは汚らしい。部外者はさっさと帰れ!」
「アタシも魔女倒すのに協力したんだけど?部外者じゃねーし!」
なんかノリノリでクエイも口論してる。貴族への日頃の鬱憤を晴らしているのが分かる。
「そもそもこいつが簡単に死刑にできると思ってるのか?魔女を倒す力を持ってるんだぞ!」
色々検査されて俺の強さはこの国では英雄級の力があることが分かった。さらに強欲の力もある。
そう、俺は世に言う異世界でチート無双して最高の人生を送ります状態と言うわけだ。
あとはハーレムパーティーを作るだけだ。すべてがうまく行っている
「──ならば、国外追放だ!! こんな奴が国に居たら夜も眠れん。」
***
……そうだな、うまく行ってない事というと魔女がめっちゃ嫌われていて、国外追放になったことだな。
「さてどうするものか……」
行くあてもないし、そもそもこの世界の事なんて全く分からない。何が起こってもおかしくないし……
「やっぱり困ってるだろうと思ってたよ」
「なんでここにいるんだ?」
いや、分からないこともない。この展開はきっと俺に着いて来るんだろうな。
「何でって、そりゃ勿論一緒に行くためだろ?」
……正直言ってありがたい。だが、クエイにはきついだろう。
人から嫌われ、何故か魔女からも恨まれている。絶対に助けられる自信は無い。俺に着いて来たらまずまともな生活にはならない。
「──ごめん。連れては行けない。危なすぎる。」
「アタシだって役には立つだろ? 確かに魔女とかには全く歯が立たないけど……お前はこの世界の事全く分からないだろ? ほかの街に行ってもボッタクられたりして終わるだけだ!」
……その通り過ぎる。何も言えない。痛い所をついてくる。
「それでも、連れては行けない。クエイ、君はここに残っててくれ。確かにここに居ても裕福には暮らせないかもしれない。それでもここの中なら安全だ。せっかく一回守った人が死ぬのは嫌なんだ。だからクエイはここに居てくれ。」
「──でも、」
「それに、クエイは強欲が嫌いだろ? 過去に何があったかは知らないけど、間違いなく何かはあったんだろ?」
クエイの言葉が詰まる。
「クエイはここに居てくれ。いつか勝手に門をくぐって会いに来るから。」
「──そんな事したら捕まっちまうぞ?」
決心したのだろう。クエイは少し笑いながら答えてくれた。
「また、会いに来いよ! アタシはここに居る。絶対に死ぬなよ?」
「俺は意外と強いんだぜ!? また会いに来るからな。元気でいろよ?」
そして2人は別れた。行くあてもないまま馬車の通った跡を沿って歩き出す。
***
「……疲れた。ただ平地を歩くだけとかつまらなすぎる。」
これならクエイについて来てもらった方が良かった気がする。たまに魔物が出てくるけど弱すぎる。なんの能力も手に入らない。
感動的な分けれなどやらなければ良かったと後悔している。
ただただ歩き続け、腹が減ってくるが、周りには道の駅もない。
「イノシシでも狩って食べるか」
森に入ると魔物に会う回数が増えたが、問題無いレベルだった。そしてついに、
「あれは!? イノシシ! ……なのか?」
なんかめっちゃデカイな。あんなにデカイのは食いきれないかもな。
倒すことは容易であろう。そう思い近づいた時、遠方から猛スピードで突撃してくる奴がいる。見事にイノシシに体当し、吹っ飛ばす。
──また敵かよ。どんだけ強欲嫌われてんだよ!?
「──強欲の使徒様! ただいまです! 黒狼族のアセナです!」
「……え?」
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