第3話 襲撃

「──で、気づいたらここに居たのか。なんか信じらんねーな。マコトは死んでも生き返られるんだな」


道中長々と壮絶な一瞬の出来事を聞かせたのにも関わらず、あまりしっかりと伝わってない。


正直まだ理解しがたい。いや、理解はしている。信じがたいと言おうか。まだどこかでここは夢の世界だ。と、思いたい自分がいる。死んだなど考えたくもない。


「……そろそろ中心街だ!」


歩いて行くにつれ人の声が大きくなっていきだんだん活気の溢れる街並みとなってくる。


街には機械的なものは少ない。やはり異世界だ。元の世界では炎を自分の力で生み出すことなどできないが、この世界ではやはりそういうことが出来るようだ。適性があればの話らしいが……


当たり前のように見たことのない生き物に乗って移動する人たちを見るに文明は全く違う。


「着いた、ここが大都の中心街だ!」


先ほどよりも道幅が大きくなり、横には商店が立ち並び客引きをしている。


行き交う人たちは人間だけではなく獣人など亜人種も多々見られる。


道をまっすぐ行ったところに目をやると、大層立派なお城が聳え立っている。


「スゲー……何か異世界って感じするわ」


「なんかお前たまによくわからんこと言うよな。」


一瞬だけ居た、あの場所も城みたいなところだったな……もしかするとあそこに手掛かりがあるかもしれないな。


「あの城にはどうやって行くんだ?」


「お前本気か!?」


目を見開いて驚いているクエイを見てどこか地雷でも踏んだのかと焦る。


「アタシらみたいな奴じゃ、近づけないよ。アタシはあそこ周辺が嫌いなんだ。最悪殺されちまうぞ?」


それは困るが、その他の道がない。ここでさっきのヒロインに合えれば困ることもないだろう。


「じゃあこっそり近づこうぜ? 何があるかは知らないが、バレなきゃ大丈夫だろ。」


「これは、高くつくからな!」


***


──確かに来たくないのも分かる……


路地にはなんか強そうなやつらが待ち構えており、子供と、格闘系をやったことのない俺たちだけではまず、通れないだろう。


だからといって大道りを歩けばゴミを見る目で見ながら通り過ぎる人々。当たっても謝りもしない。確かに居心地は最悪だ。ここに始めて来たが、もうあんまり通りたくない。


「悪いな。ここまで案内してもらって。」


「いいさ。案内料にプラスしておくだけだからな!」


──お金とるのか!? 無いぞ? どうすりゃいいんだよ!


「ほら、行けるのはここまでだ。この先に行きたいなら、塀を超えて行きな。捕まっても知らないけどな!」


「捕まりたくはないから、入らないよ。」


でも困ったな。これじゃこの中に居るであろうヒロインに会えないぞ。


「で、この後はどうするんだ? 名前とか服装からして、この辺りの人間じゃなさそうだから何か起こるのかと思ってたけど、何も起こらないしな。帰るか?」


収穫はゼロか。まったくこの世界はどうなってるんだよ。ヒロインに合わさてくれよ。


……もしかしてこいつなのか? 運命のヒロイン? 無しじゃないが。


「おい。そこで何をしている?」


城の警備の人に声を掛けられる。確かに格好からして怪しい人と間違われても仕方ない。ここは穏便に、


「いや~何でもありません。失礼しました~」


急いで城を離れようとした時、鐘の音が響く。鐘が聞こえた瞬間、街があわただしくなっていく。段々と人通りが少なくなっていき、城から金属音が聞こえる。門が開き鎧を身にまとった兵士が外に出てくる。


「一体何があったんだよ?」


「分かるだろ? 魔物が来たんだよ!」

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