第14話 闇
「クレア、リアムさん。目の前の光景を見て、どう思いますか?」
俺たち二人は声を出すことが出来なかった。すると、ミアは悲しそうな表情をしながら言う。
「貧富の差があるのは仕方がないことだと思います。ですが、目の前にいる人たちは能力云々の問題ではなく、差別で起きています」
「差別?」
「はい。クレアの国は移民を受け入れていないと思いますが、この国は他国から来た移民に優しくない」
(初めて知った……)
ゲーム内でこのような闇があるなんて記されていなかった。
「それに加えて、この現状を隠している。だから、私はこの国が嫌いです。ですが、兄やリアムのお兄さんはそうではない」
「……」
「最初はリアムさんも同じような人なのだと思っていました。ですが、ここ最近一緒に居て、考えを改めました」
ミアは俺の方を向いて、手を差し伸べてくる。
「王族である私と公爵家であるリアム、二人の力を合わせたらこの国を変えられるのではないかと」
「それで、現状を見せるために今日、俺を呼んだのか」
「はい。それにあまり時間がありません」
その言葉に俺たちは首を傾げる。
「リアムさん、私を助けてくれたことを覚えていますか?」
「あ、あぁ」
「あの時いた人たちは、この国の闇と関わっている人。私という存在を邪魔だと思っているのでしょう。だから、私の命を狙ってきた」
「それならラルフさんも危ないんじゃ?」
あの時、王族がなめ切っているとかなんとか言っていたし。
「下っ端の人たちは兄さんのことを嫌っているでしょうね。ですが、上層部の人たちは兄さんやリアムのお兄さんと関わっている。だから手を出してくることはないでしょう」
「……」
「そこでお願いです。私とこの国を変えませんか?」
真剣な眼差しでこちらを見てくる。
「すぐに答えが欲しいわけではありません。ですが、頭の片隅に覚えていてください」
「分かった」
「多分ですが、次のクラス対抗戦が一つの区切りになるでしょう」
「‼」
(そう言うことなのか)
確か、ゲーム世界でも事件が起きる未遂が起きていた。結局は未遂で終わったことから、大きくストーリーに関わっていなかったはずだけど。
「私はAクラスの代表に選ばれるでしょう。それはクレアとリアムさんも同じ」
「は、なんで俺も?」
「実力的にリアムさんが選ばれるのは明白。それに加えて、私からアレクサンダーとナタリーにはお願いしましたから」
(マジ?)
「この国の現状に不満を持っている人は少なからずいます。その中にアレクサンダーやナタリーも含まれています」
「じゃあ、今ナタリー先生がいないのって」
「はい。裏の情報を探ってくれています」
驚きを隠し切れなかった。前世の知識があることから、ストーリー通りに動くと思っていた。だけど、ここまでストーリーとは外れていたなんて。
「クレア、リアムさん。新たな国のために、クラス対抗戦で戦いませんか?」
「私は良いよ。クラス対抗戦に出るつもりではあったから」
「リアムさんは?」
「……。分かった」
この状況で断ることなんてできない。それに、ミアがここまで覚悟を決めているなら、俺もそれにこたえる義務があるとも思った。
「良かった。では、これから三週間頑張りましょう」
その後、俺たちは空気が重い中、屋敷へと帰って行った。
自宅へ帰ると、兄であるアビが睨みつけてくる。
「リアム。変なことを考えてはいないよな?」
「え?」
「今日、王宮へと行ったんだってな。弟であろうと、俺に害を与えてくる存在に容赦はしない」
冷めきった声で警告をしてくる。
「分かっているよ。それに俺は何もできないから」
「そうだ。お前は俺や父さんの命令を聞いていればいいんだから」
「……」
不気味な笑みを浮かべていた兄に背を向けて、自室へと戻って就寝をした。
★
翌日から、俺たち三人とエイダンを加えた四人で訓練を始めた。
接近戦で一番強いのは、間違いなくエイダンだ。なら、こいつと互角に戦うことが出来るようにならなければいけない。
そうでなくちゃ、目的を達成することはできないのだから。そう思いながら、日々の訓練を続けていった。
そしてクラス対抗戦の三日前になった時、アレクサンダー先生よりクラス対抗戦のメンバーが知らされる。
案の定、Aクラスでは俺たち三人。Bクラスではエイダンが選ばれていた。
「クラス対抗戦の内容も説明をする。一つのエリアである場所の物を取ってきてもらう。それが一番早いクラスが勝ち。それがルールだ」
(え……)
アルクロで行ったストーリーとはかけ離れていて、驚きを隠し切れなかった。
「では三日後に備えて準備をしておくこと」
呆然としている俺にクレアとミアたんが近寄って来ると、エイダンが話しかけてくる。
「クラス対抗戦ではライバル。手加減はしない」
「あぁ」
「楽しみにしているよ」
そう言って、エイダンはこの場を去って行った。その後、俺たちもクラス対抗戦の打ち合わせに時間を割くようになった。
そして、とうとうクラス対抗戦当日になる。
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