第13話 デート?


 ミアたんから言われたことが理解できず、呆然と立ち尽くしてしまう。


「き、聞こえませんでしたか?」

「い、いや……」


 そんな簡単に付き合うとか言っていいのか。まず、ミアたんは王女であり、俺は公爵家。付き合うとかそういうのを個人で決めていいことなのか。


 そう思っていると、第一王子のラルフ・クロニクルがこちらへやってきた。


「ミア、何を話しているんだ?」

「あ、お兄さま……」

「それと、そっちにいるのはリアムくんだね」

「お初にお目にかかります」


 俺は頭を下げて挨拶をする。


「初めてじゃないさ。君とは何度か会っているよ」

「すみません。ちょっとここ最近物覚えが悪くてですね」

「しょうがないさ。君と会ったのは幼少期の頃なんだから」

「そういっていただけると助かります」


(でも、リアムってラルフ王子と会ったことあったっけ?)


 アルクロをやっていたころ、リアムとラルフ王子が関わっていたのを見たことがない。


「それで、ミアとリアムくんは何をしていたんだい?」

「えっと……」


 俺が答えようとした時、ミアたんが俺の言葉を遮ってきた。


「学友であることから、親睦を深めようと思っていたのです」


 その言葉を聞いたラルフさんは満面の笑みになった。


「それは良いことだ。フレード家とは今後も良い形で付き合っていきたいしな」

「はい」

「それで、もう一つ聞きたいのだが、さっきお付き合いとか言っていたのは何なんだい?」


 先ほどまでの柔らかい雰囲気とは一変し、あたりから冷めきった空気が流れる。


「えっとですね……」

「まさか、リアムくんとお付き合いする気ではないよね?」

「もちろんですよ……。国を繁栄するために、城下町に出て探索でもしないって誘おうと思っていたのです」


 その言葉を聞いて、ホッとした半面、残念な気持ちも出ていた。


「なんで今なんだ?」

「まだ学生になったばかりということもあり、国民からも怪しまれず動けると思ったからです」

「まあ、そうだな。楽しんで来いよ」

「はい」


 そして、俺はミアたんに手を引かれながら王宮を後にしようとした時、ラルフさんに言われる。


「リアムくん、お兄さんにもよろしく伝えておいてくれ」

「はい」


 俺はお辞儀をして、この場を後にした。



 城下町に出て、人気のいない場所にたどり着くと、ミアたんが頭を下げてきた。


「ごめんなさい」

「え、何がですか?」

「兄が無礼を働きました」

「別に気にしていませんよ」


 まあ、少し高圧的な感じではあったけど、そんなの前世では日常茶飯事であったことだし。


「今日は軽く城下町でも回りましょう」

「はい」


 そこから、俺とミアたんは城下町を歩き回る。


(やっぱり、いい国だなぁ)


 みんなが笑顔でいるこの国が好きだ。


「あそこの出店、おいしいんですよ」

「そうなのですか? じゃあ食べましょう」


 二人で水飴の出店に赴き、一つずつ頼む。


「これ、甘いですね」

「はい。ですが、これがいいんですよ」

「そうですね」


 その後も、二人で他愛のない雑談をしながら歩いていると、後ろから肩を叩かれる。


「二人で何をしているの?」

「え?」


 俺とミアたんが後ろを振り向くと、そこにはクレアがムスッとした表情でこちらを見ていた。


「クーちゃん。リアムさんと遊んでいたんですよ」

「へ~」


 すると、クレアはジト目でこちらを見てくる。


(俺、何もしていないよ?)


「クーちゃんもいるなら、言ってもいいかな」


 その言葉に俺とクレアはミアたんのことを見つめる。


「ちょっとついてきてください」


 言われるがまま、俺たちはミアたんの後をついていくと、城下町の端まで連れていかれた。


 そして、ミアたんが足を止めたところで俺は目を見張った。


(なんだここは?)


 言葉が出てこない。それはクレアも同様のようであった。


「この国は腐っています」


 ミアたんが指をさしていた方には、やせ細っていた国民が道端に寝ていた。


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