第15話 クラス対抗戦
半径百メートルはある模擬戦の場所に三人で入っていくと、大きな歓声が起きる。
「Aクラス、今年も優勝頼んだぞ‼」
「お前たちが一番だからな」
「Aクラスの意地を見せてくれよ」
俺たち三人は歓声に驚きながらも、平然を装って淡々と歩いていく。すると、クレアが尋ねてくる。
「リアム、緊張している?」
「まあ少しはね」
「私は今までで一番しているよ」
クレアのことを見ると、体が少しだけど震えていた。
「クレア。俺たちはなんでここにいるの?」
「ミーちゃんの……」
「うん、それもあるね。だけどね、ミアさんのためにいるだけじゃない。クラス対抗戦で優勝するために俺たちはここに立っているんだ。それを忘れてはいけない」
「それを言われると、もっと緊張するよ」
「じゃあ考えを変えよう。ここでミスをしたところで死ぬわけじゃない。楽しもうよ」
「……」
そう。クラス対抗戦で失敗をしたところで死ぬわけじゃない。それに加えて、ミアの依頼でもあったことが起きたところで、アレクサンダー先生たちやナタリー先生がいる。
そんなところで、俺たちが死ぬ可能性は限りなく少ない。だからこそ、まずはこのお祭りを楽しむことが一番だ。
「大丈夫。クレアのミスは俺たちのミスでもある。一人で背負う必要はないよ」
「あ、ありがと」
俺たちは観客のことを見回していると、次々と他クラスの生徒が入って来る。そして、アレクサンダー先生がクラス対抗戦の説明を始める。
「これよりクラス対抗戦を始めてもらう。内容はこの前も説明したとおりだが、ある場所にある物を取ってきてもらう。それが一番早いクラスが勝ち。大丈夫だな?」
アレクサンダー先生の問いに対して、俺たちは頷く。
「今回取ってきてもらうのは、豊熟の果実。まあ簡単に言えば、リンゴだ」
俺たち全員がアレクサンダー先生のことを見ていると、ナタリー先生がこちらへやって来る。
「では、これよりクラス対抗戦を始める」
「皆さん、これより疑似空間に入ってもらいます。各クラス一定の距離を保たれて転移させますので、ご安心ください」
ナタリー先生がそう言った瞬間、あたりがゆがんでいき、先ほどまでいた場所とは一変し、森の中へと移動された。
★
近くにはクレアとミアたんが驚いた表情であたりを見回していた。
「すごい。こんなことが出来るなんて……」
クレアの言う通り、目の前で起きていることは目を見張るものであった。
ここはナタリー先生の魔法の中である。いわゆる現実と幻術のはざま。ナタリーが作り出した世界の中に俺たちは入らされている。
この世界を脱出するためには、一定の条件を満たして自力で脱出するか、術者が解くかの二択。
(あれ、これってストーリーの後半に……)
記憶があいまいで何とも言えないが、確かアルクロの中ボスである奴もこんな魔法を使っていたような気がする。
(まあ、ナタリー先生に限ってそんなことはないか。確か中ボスは男だったはずだし)
そう思いながら、クレアとミアたんの二人と先へ進み始めていった。
あたり一帯が森になっていて、方向感覚が狂う。
「ミアさん、マッピングをお願いします」
「はい」
道筋を間違えないようにマッピングをしながら先へ進んでいくと、後方より
俺たちはすぐさま魔法を避けてアイコンタクトを送る。そして、俺が魔法の放たれた方へ距離を詰めていくのに対し、クレアが補助魔法で援護をしてくれる。
そして、目の前にいるDクラスの生徒を一人気絶させた。すると、Dクラスの生徒が二人姿を現した。
(奇襲をかければいいのに……)
そう思いながらも、もう一人の生徒と距離を詰めて鍔迫り合いになる。その時、ミアたんが光魔法で対面している生徒の視界を奪い、難なく戦闘不能にさせる。
(後一人……?)
俺がそう思った時にはクレアが気絶をさせていた。
「もう終わっていたんだね」
「うん。なんか、拍子抜けだった」
「あはは……」
(そういうなよな……)
すると、目の前で寝ているDクラスの生徒たちが消え去り、現実世界へと戻って行った。
「実際、本当の相手はエイダン達だから頑張ろう」
「えぇ」
俺たちは気を緩まず目的の豊熟の果実を探しを再開した。
三十分ほど探索をしていたが、豊熟の果実らしきものは見当たらなく、少し休憩を挟む。
「流石に他クラスもこんなに早く見つかるわけないし、休憩しよう」
「うん」
「えぇ」
軽い警戒をしながら、三人で軽い雑談をしながら休憩を取る。
(それにしても、どこにあるんだろう?)
そう思っていると、ミアたんの後方よりものすごい殺気を感じた。そして、数秒も経たないうちに殺傷性の高い
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