第10話 流青銅の探索


 翌日から学園ではアレクサンダー先生の指導の元、剣術の授業が行われていた。それに加え、魔法の授業はナタリー先生が行うはずであったのだが、急用で中止になっていた。


 その代わり、一枚の紙を配られた。そこには、魔法の基礎が記載されていた。


【魔法】


 大気中の魔素を取り入れて、自身で変換することによって発動が可能。人それぞれ得意不得意の属性があるが、努力次第で使えるようになる。


 一方、使えない魔法も一部ある。具体例としては、無属性ユニーク魔法。種族が独自に持っている魔法や、王族のみ扱える魔法など様々。


 それ以降も、つらつらと内容が記載されていた。


(役立つ内容は、最初だけだな)


 魔法の知識は必要だけど、無属性ユニーク魔法に関しては現状必要がない。


(今は魔法と剣術の基礎を身に着けるのが大切だ)


 現状できないことをできるようにすることは難しい。だけど、できることを少しでも伸ばすことは難しくない。


 剣を振る速度や魔法を放つ速度、その他にも色々と伸ばせることは多い。なら、現状は基礎固めをするのが最優先だ。

 

 俺はそう思いながら、一日が過ぎていった。



 あっという間に流青銅の探索へ行く日になった。


 十分前に冒険者ギルドへたどり着くと、すでに三人が待っていた。


「遅れた」

「じゃあ行こっか」

「行きましょ~」

「あぁ」


 そして、俺たちは王国を後にして流青銅へと向かっていった。


 道中歩いている中、ハッと思いついたことを質問する。


「クレアにミアた。ミアさんは冒険者になる許可が出たの?」

「私は聞くことが出来ないから了承は得ていない」

「は?」


(今なんつった?)


 了承を得ていないだって。王族でありながらそれはどうなんだろう。


(まあ、俺も家族に何も言っていないけど……)


「しょうがないじゃない」

「ま、まあそうだけどさ」

「怒られるのは私だから気にしないで」


(そうもいかないだろ……)

 

 俺がきっかけでクレアも冒険者になっている。なら、少なからず俺にも問題はある。


 小さなため息を吐きながら言う。


「怒られるときは俺も一緒に怒られるよ」

「ありがと……」


 俺がクレアの隣に立っているミアたんの方を向く。


(今日も可愛いなぁ)


 まあ、いつも可愛いんだけどね‼


「私は了承を得ましたよ」

「良く得られましたね」

「勉強の一環だと言って、無理やりおし通しました」

「あ、あはは……」


(案外、ミアたんって無謀?)


 そう思いながら、四人で雑談をしながら流青銅へと歩いていく。



 王国を出て、二時間ほど歩いたところで流青銅へとたどり着く。すると、エイダンが言う。


「探索って何をすればいいんだ?」

「う~ん。マッピングとかじゃないか?」

「でも、そんなの意味ないじゃん」


 エイダンの言う通り、流青銅のマッピングなんて意味がない。歴代の冒険者が幾度となく流青銅の中へと入っているのだから。


 でも、やることに意味がある。もし、俺たちのマッピングが未開拓地であった場合、知見となりえる。


 多分だが、この可能性にかけて流青銅の探索というものがあるのだろう。


「まあ、中に入ろう。マッピングは……」


 俺が誰に頼もうか迷っていると、ミアたんが手を挙げる。


「私がやりますよ」

「あ、ありがとうございます」


 そして、四人で流青銅の中へと入って行った。


 壁には青い光が照らされており、光魔法を使わずとも内部が明るかった。


 俺たちは軽い緊張とワクワク感を持ちながら先へ進み始めると、フレッグ・フロッグが現れる。すると、合図を待たずにエイダンが攻撃を仕掛けて一瞬で倒された。


「弱いな」

「おい。俺たちのことも考えて、攻撃をするときは声をかけろよ」

「いやいや、三人とも俺が出る瞬間が分かっていたじゃん」

「……」

「まあ、次からはみんなにも譲るからさ」


 その後、何度かモンスターと出くわすが、難なく倒してしまい訓練になりもしなかった。


(こんなもんなのか……)


 思っていたよりもあっさりとしていたことに落胆していると、ミアたんが言う。


「この先は中級モンスターも出るかもしれませんし、引き返しますか?」

「そうですね」


 ラビットオールド並みのモンスターが次の階層からは存在している。そんなのを相手できるほど俺たちは実力を持ち合わせていない。


 ここで無茶をする意味もないため、引き返そうとした時、男性の悲鳴声が聞こえた。


 俺たちは一斉に走り出して次の階層へ向かっていく。すると、地面に座り込んでいる男性にデビルアントが攻撃を仕掛けようとしていた。



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