第11話 奴隷商人
デビルアントが男性へ攻撃を仕掛けようとしているのを防ごうと、走りだす。
(間に合わない……)
このままじゃこの人は死んでしまう。そう思った時、体の周りに風が現れる。
(何が起こっているんだ?)
チラッと後ろを振り向くと、クレアが補助魔法を唱えてくれていた。
先ほどより数段と移動速度が加速し、デビルアントが男性にトドメを刺そうとしているのを間一髪で防ぐが、膝をついてしまう。
(重い……)
今まで受けてきた中で一番重い。
態勢が戻る時間をくれるわけもなく、デビルアントが攻撃を仕掛けてくる。すると、後方からエイダンが援護をする。
「待たせた」
「ナイスタイミング」
俺とエイダンでデビルアントの攻撃を防いでいる間に、クレアとミアの二人が男性を安全な位置に移動させる。
それを確認したところで、俺は大声で叫ぶ。
「エイダン‼ 次の攻撃を防ぐから、そのうちにクレアとミアの元へ引いてくれ」
「あぁ」
そして、俺がデビルアントの攻撃を防いだ瞬間、エイダンが後方へ下がった。
案の定、エイダンがいなくなったことにより、デビルアントの攻撃を一人で防ぐことになる。
(ここで俺が引ききれれば……)
そう考えながらも、デビルアントの攻撃を防ぐ。そんな攻防が一分ほど続いた。
そんな時間も一つのきっかけで終わりを迎える。
反射的に手首をスナップさせた時、デビルアントの攻撃を受け流すことが出来た。そこからは先ほど感じていた重さも無くなり、デビルアントの攻撃を受け流していく。そして、一瞬の隙を見つけた瞬間、後方へと下がった。
「今だ‼」
俺が走り始めたタイミングでクレアが支援魔法を唱え、全員でこの階層から離脱した。
俺たち全員が目を見合わせると、クレアがこちらへ近寄ってきながら胸を叩いてくる。
「もう無茶はしないで」
「いやいや、今回はあの時とは違って大丈夫だよ?」
「そんなの関係ない」
「ま、まあ善処するよ」
俺がそういうと、小指をこちらに近づけてくる。
「約束」
「う、うん」
お互いの小指を合わせた。
「今度破ったらわかるよね?」
「は、はい……」
(クールキャラだったはずなんだけど、なんでこうなった?)
そう思いながら二人に視線を向けると、ミアたんは確信を得たような表情でこちらを見ていた。
「やっぱりあなただったのね」
「はい?」
「いえ、何でもないです」
「そ、そうですか……」
すると、座り込んでいた男性が口を開いた。
「助けていただきありがとうございます」
「いえいえ」
俺がそういうのに対し、エイダンは高圧的な態度をとる。
「弱い奴があんなところにいるなよ」
瞬時にエイダンの肩を叩く。
「そんなこと言うなよ。こんなところにいるんだ、この人だって何かしらの理由があるはず」
「おっしゃる通りです。私はこれが欲しくて」
こちらに見せてきたのは、小さな花。
「ラグリー草ですか」
俺たち三人はミアたんの言葉に驚きを隠し切れなかった。
ラグリー草。魔力障害を直す薬草である一方、入手が非常に難しいことで有名であある。一番簡単に得られる場所がこの流青銅。それでも、見つけること自体が無理に等しい。
「はい。子供のためにこちらがどうしても欲しくて」
「見つかってよかったですね。お子さんはおいくつ何ですか?」
「その子は七つです」
「その子?」
男性の言葉にエイダンが反応すると、お辞儀をしながら挨拶をしてくる。
「奴隷商人のラリー・ウェイトと申します」
「「「「‼」」」」
驚かずにはいられなかった。奴隷商人とは、人を無下に扱う存在で有名。そんな人が自身の身を削ってでもラグリー草を見つけるために行動をしていたのだから。
「一つ質問をしてもいいですか?」
「なんでしょう?」
「ラグリー草は奴隷の子供に使うのですか?」
「はい」
その言葉を聞いたクレアがボソッとつぶやく。
「おかしい」
「あはは、そうですよね。でも、私は奴隷の子供たちには幸せになってほしいのです。この子たちはまだ若い。なら、様々な未来があるはずです。そんな子供たちの未来を奪うのが、どれだけ愚かなことか分かっているつもりです」
「そうですね。ならすぐ帰らなくちゃですね」
「はい」
そして、俺たちはラリーさんと共に王国へと帰って行った。
★
王国に帰ると、すぐさまラリーさんが住んでいるところへ向かった。
家に中に入ると、子供たちが泣きながらラリーさんに抱き着く。
「ラリー様。ルーはどうなるの?」
「助かるよね、助かるよね⁉」
「あぁ、もう安心だ」
ラリーさんが奴隷の子供にラグリー草を飲ませると、辛そうな表情が見る見るうちに緩和されていく。
そして、俺たちに頭を下げてくる。
「本当に、本当にありがとうございます」
「いえいえ、こちらもお力になれてよかったです」
俺の言葉に三人とも頷く。
「この恩は必ず返します」
「気にしないでください」
この場にいると邪魔になると思い、俺たちが家を後にする時、ラリーさんが頭を下げながら何度も言う。
「絶対に、絶対にこの恩は忘れません……」
日も暮れてきていることから、俺たち四人は実家へ帰っていくことにした。その時、隣に立っていたミアたんが話しかけてきた。
「リアムさん、明日お時間をいただけませんか?」
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