第7話 主人公
翌日、クラスに全員がそろうと、アレクサンダー先生が話始める。
「今日よりみんなには剣術と魔法、座学を学んでもらうが、それはなんでだと思う?」
「なんでって、学園を卒業するためじゃないですか?」
クラスメイトの男子が回答をすると、アレクサンダー先生は呆れた表情をした。
「お前は学園を卒業するのがゴールなのか? 違うだろ。学園を卒業した後も長い人生がある。もう一回、きちんと考えて見ろ」
「……」
すると、クレアが手を挙げて答える。
「私たちがどのような人生を送るかの基盤を作るため」
「そうだ。クレアが言った通り、この学園で学んでもらう目的は、今後の人生のきっかけを見つけてもらうこと。そのために様々なことを学んでもらう」
その言葉にピンと来ているクラスメイトは数えるほどしかいなかった。
(まあ、そうだよな)
高校生が今後の人生ためって言われても分かるわけがない。俺だって、高校時代にこんなことを言われたところでよくわからなかっただろうし。
「大きく分けて、お前たちの未来は四つある。ナタリー先生みたいに魔法師として生きていく道や俺みたいに剣士として生きていくこと。それ以外にも座学を極めて学者になることだってできる」
「残り一つは?」
「今だ見つけられていない世界を探す冒険者になること」
「え……?」
呆然とするクラスメイト。
「お前たちは冒険者のことを荒くれものだと思っているだろ。だけどそれは違う。冒険者とは、人に希望を与える仕事でもあり、自身の夢を追求する仕事でもある」
(言われてみればそうだな)
困っている人の依頼をこなすこともあれば、ダンジョン攻略や未開拓地などまだ記されていないところへ行くこともある。
「まあ、今こんなことを言われたところでよくわからないだろうから、今後じっくり考えるんだ。でも、目的だけは忘れるなよ」
「「はい」」
すると、アレクサンダー先生が外にある屋敷を指さした。
「それでは、今から剣術の授業を始める。みんなついてくるように」
そして、アレクサンダー先生の後を続くように屋敷へ向かっていった。
円状になっている闘技場らしき場所へたどり着くと、一人一本木刀を渡される。
「今から剣の持ち方などを教えていくが、少しだけ待っていてくれ。座学以外の授業に参加する生徒がいる」
(あ~、やっと対面できるのか‼)
すると、百人見たら百人がイケメンという金髪美男子が走ってこちらへやってきた。
「すみません。遅れました」
「いい。みんな紹介しよう。Bクラスのエイダン・カルレイだ」
「皆さん、よろしくお願いします」
(おぉ~、これが主人公か‼)
ミアたんやクレアたちを攻略していく存在。こんな男子に優しくされたら誰だって惚れるだろ。俺なら惚れるね。
(できることなら俺は主人公に転生したかった)
まあ、しゃーないけどさ。そう思っていると、アレクサンダー先生が言う。
「今から二人一組で立ち合いをしてもらう」
その言葉に複数人のクラスメイトが拒絶反応を示した。
「怪我とかしたらどうするんですか?」
「大丈夫だ。ここは怪我もすぐに治る魔法が施されているからな」
「でも……」
すると、アレクサンダー先生は少し声を大きく荒げた。
「今後危険な目に合うかもしれない。だからその予行練習なんだ。今後のためだと思え」
そして、嫌々みんな二人一組のペアを組んでいった。
(あ~、誰と組もう……)
はっきり言って、友達と言える存在はライドくんぐらいしかいない。だけど、すでにライドくんは他の子とペアを組んじゃっているしなぁ……。
そう思いながら周りを見ていると、エイダンがクレアをペアに誘っていた。
(これが、ストーリーの始まりか‼)
ここでクレアとエイダンが戦い、お互いの力を認めあう。そこから徐々に二人の距離が縮まっていき、惹かれあっていく。
(ここに立ち会えるなんて、光栄だ‼)
だが、クレアは首を横に振ってこちらへ近寄ってきた。
「リアム、私と組まない?」
「え?」
(今なんて言った?)
俺と組まないって言ったよな……。エイダンの誘いはどうしたんだよ。
「え、え~と……」
俺はエイダンの方を向くと、呆然としながら周りを見回していた。
「ごめん。俺、エイダンくんとペアを組みたいんだ」
クレアはエイダンの方を向いて、何かを悟ったかのように言った。
「やっぱり、リアムは優しんだね」
「はい?」
「今度、私とペアを組んでね‼」
「あ、うん」
クレアはそう言って、この場を去って行った。
(何が優しいんだ?)
そう思いながら、俺は
「もしよかったら、一緒にペアを組まない?」
「あ~、まあいいよ」
(え?)
高圧的な態度を取ったエイダンに呆然としてしまった。
(こんな奴だったっけ?)
そう思っているところで、クラスメイト全員がペアを組み終え、アレクサンダー先生が合図を出す。
「では、各自十秒後に立ち合いを開始する」
主人公が俺に向かって木刀を向けた瞬間、背筋から鳥肌が立った。
(なんだ?)
「では始め‼」
その合図とともに、立ち合いが始まった。
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