第2話 学園での再会


 ミアたんを助けてから数日が経ち、学園の入学日になった。


(絶対に平穏な生活を送るんだ‼)


 ゲーム世界のリアムは、学園中からの嫌われ者であった。だけど、そんな生活は絶対に嫌だ。


 もう一度、学園生活を謳歌できるのなら、順風満帆にしたい。でも、リアムというキャラ状、そんなことが出来るとは思っていない。


 だから、馬鹿出来る友達が一人でいいからほしい。それだけで、学園生活がグッと楽しくなるはず。


 そう思いながら、この家を後にしようとした時、兄が話しかけてくる。


「リアム。お前はフレード家なんだから、周りに威厳を見せろよな」

「う、う~ん。まあ出来たらね‼」


(そんなことするわけないだろ‼)


 俺は学園を謳歌するために、平穏に送るんだ。


 兄の言葉を片隅に置きながら、学園へと向かっていった。



 学園にたどり着くと、目を見開いて驚いてしまった。


(なんだ、このキラキラしている建物は‼)


 前世では見たことも無いような建物。しいて言えば、イギリス発祥のゴシック・リバイバル様式がより派手になった感じ。


(俺も今日からここに通うのか)


 そう思いながら正門をくぐると、教師たちがぎょっとした表情でこちらを見てきた。


(あ~。やっぱりそういう反応をするよね……)


 悪名高い噂を持ちながらも公爵家という立場であるため、強く指摘をすることが出来ない。はっきり言って、扱いづらい生徒である。


 もし俺が教師の立場なら、関わらないようにしようと思う。そんな存在。だけど、こんなところで諦めるわけにはいかない。


 近くに立っていた女教師に頭を下げて挨拶をする。


「おはようございます。本日より入学をいたしました。フレード・リアムと申します‼ お手数をおかけしてしまうことも多々あるとは思いますが、よろしくお願いいたします」

「あ、うん。よろしくお願いします?」


 その後も、近くにいる教師へ挨拶する。


 俺の挨拶に対し、教師たちは複数のパターンを示してきた。


 一つ目は最初の女教師みたいにあっけらかんとしてしまうパターン。

 二つ目は猫を被ってんだろという目でこちらを見てくるパターン。

 三つ目は関わって来るんじゃねーぞって目で見てくるパターン。

 そして最後に無表情であしらうパターンだ。


(まあ、最初にしては上出来か)


 一つ目と二つ目のパターンに関しては、今後改善できる余地がある。それだけでも大きな収穫だ。


 俺は教師たちに頭を下げてクラスに入っていく。


(確か、Aクラスだったよな)


 普通は入学前にクラスの通知をする書類を持ってくるのだけど、うっかりしていて忘れてしまった。


 だから、前世の記憶を元にAクラスまで歩いていく。その際、教師陣同様に同学年の生徒や先輩方も嫌な表情をしながらこちらに視線を送って来る。


(これが三年続くかもと考えたら憂鬱になるな……)


 その時、薄っすらと俺のことを会話している生徒の声が聞こえた。


「あいつ、アビの弟だぜ。絶対横柄な態度を取って来るに違いない」

「だな。関わらないのが一番だ」


 俺は下を向きながら心の中でぼやく。


(聞こえてるよ~)


 大丈夫‼ そんな態度絶対に取らないから。何なら下手に出ますよ。だって、前世では平社員であったことから、下手に出るのは得意だ。


 そう思いながら、クラスに入ると、ざわつき始めた。


 聞こえてくる言葉は先ほどとほぼ同じような内容ばかり。


(新しい出会いって思ってはいたけど、ここまで最初の印象が悪いとは思わなかった……)


 黒板に貼られている座席表を見て、自席へ座る。すると、隣に座っている銀髪の女の子と目が合う。


(確か、エルフの第一王女でヒロイン……)


 俺が思い出していると、軽く睨みつけてきながら言われる。


「私、爵位とか気にしてないから無駄」

「う、うん。俺も爵位とか無しにお話しできたらうれしいな」

「え?」

「あ、自己紹介がまだでしたね。フレード・リアムです。よろしくね」


 自己紹介に対し、あっけらかんとした第一王女。それと同様に周りでも軽いざわつきが起こった。


「クレア。よろしく」

「うん。よろしくね‼」


 俺はクレアに対して頭を下げる。その時、後ろから視線を感じた。

 

(誰だ?)


 そう思い、後ろを振り向くと、そこにはミアたんがこちらを見つめていた。


(え、なんで⁉)


 あの時は仮面をしていてバレていないはず。なのになんで俺のことを見ているんだ。


(あ‼)


 俺が悪役キャラだから、監視しているってことか……


(大丈夫、俺はみんなのことを見守るだけだからさ)


 そう決意を固めた時、教室の扉が開き、担任と思われる存在が入ってきた。


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