スクラムハーフ

6-1

「あああ」

 道田マネージャーの声が大きく響いた。駆け抜けるかと思われた今岡さんだったが、ゴールラインまであと少しというところで捕まった。

 時間がない。

 無情にもホイッスルが鳴って、試合は終了した。


7人制ラグビー 県予選リーグ6回戦

総合先端未来創世17-21宮理


 最後は、全勝同士の対決だった。これで負けて4勝1敗。宮理高校は5戦全勝。きっちり昨年のリベンジを果たされた格好だ。

 点差は4点だけれど、それ以上に力の差を感じた。宮理は、バランスよく全てがいいチームに見えた。7人制に対する対策もしっかりしているとも感じた。昨年負けたことがそれほど悔しかったのか。

「はあ、今年はだめか」

 そう吐き出したのはテイラーさんだった。そう、テイラーさんは僕らとベンチ外で応援していたのだ。

 正スクラムハーフが不在ということも、もちろんチームにとっては大きかった。

「惜しかったすねー」

 弥生は呑気に言った。

「……そうだな」

 テイラーさんは答えた。



「あんまり肩がよくないんだよね」

 帰りのバス。僕の前の席には、テイラーさんと金田さんが座っていた。

「痛むのか?」

「しっくりこない感じ?」

「無理するなよ」

「いやまあ、焦るよ。今日も負けたし」

 テイラーさんの焦り、その原因にはきっと、荒山さんの存在もある。テイラーさんが一年生のとき、荒山さんは三年生だった。スクラムハーフとして超一流と言われた荒山さん。そんな先輩の姿を知っていれば、当然頭の中で比較してしまうだろう。とまあ、これは僕の妄想なのだけれど。

「里も成長してる」

「当然。だから安心、じゃないでしょ。控えは嫌だよ」

「肩が治ればお前で間違いないだろ」

「だといいけど」

 テイラーさんの声が、いつになく低いのが気になった。

 

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