5-2

「おっ、沐阳ムウヤン

「あ、E組コンビ」

 同じ学年でも、クラスが違うとあまり会わなかったりする。僕と弥生は、わざわざB組まで沐阳を迎えに来たのだ。

「ちょっと寮に寄ってかない?」

「え、どうしよう。図書館で勉強する予定だったんだけど」

「図書館はみんな勉強しに行ってるじゃん? 岸谷の部屋は三人で使えるぜえ」

「静かならいいけど」

 それは保証できない。

 弥生と話したのだが、合宿でいなくて一番困るのは沐阳である。そして、学力が一番謎なのも。何せ入試を受けていないのだ。



「むっちゃキレイ!」

 弥生の目が輝いている。

 確かに沐阳のノートはきれいだった。きれいな字で丁寧に書いてある。

「まじめなんだなあ」

「推薦で成績悪いとかっこ悪いじゃない」

 僕と弥生は目配せをした。「推薦だから成績悪いかも」「やる気ないかも」と言っていたのが恥ずかしい。沐阳はちゃんとしている。おそらくテストも大丈夫だろう。

「なんかさ、テストに名前書いたら合格のとこもあるらしいじゃん」

「ああ、聞くね」

「本当に沐阳はなんでうちに来たの?」

 弥生の質問に、沐阳はしばらく天井を向いていた。

「やっぱりさ、あの試合観たから」

「あの試合?」

「花園二回戦」

「おお!」

 僕は思わず立ち上がってしまった。

「どうした岸谷」

「あれ、良かったよね」

 沐阳が言っているのは、二年前の全国大会、総合先端未来創世対東博多の試合のことだ。負けはしたものの、うちはかなり善戦した。ように見えた。

「なんか、このチームいいなって思ったから。誘われたら入ろうって」

 沐阳の目が輝いていた。あの試合のことを思い出しているのだろう。

「はあ。俺は見てないんだよなあ」

「ネットでまだ観れるよ。……観る?」

 僕は、ついそんなことを言ってしまった。二人は頷いている。また、勉強が遠のく。

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