4-7

 沐阳の体が伸びた。しなやかに。

 相手のペナルティの後、犬伏さんはごく簡単にキックを蹴った。すぐ近くで、ボールは外に出た。初めて見るぐらい、意外な「軽いキック」だった。

 こちらのマイボールラインアウト。蛍川が、目を見開きながらサインを聞き、ボールを投げ入れた。高い。

 普通は、失敗だ。

 だが、僕と江里口に支えられた沐阳の体は、驚くほどに長くなった。そこから右手がぐんと伸びて、ボールをはたく。

 相手もおそらく一瞬、「抜ける」と思ったのだろう。反応が遅れたのがわかる。そして、安生さんが駆け抜けた。縦のスピードは、とてつもなく速い。昨年試合を見た記憶では、ここらパスを出して得点しきれないパターンが多かった。けれども今の安生さんは走り抜けた。後ろからのタックルにも負けず、トライを決めた。

 そして、犬伏さんはゴールキックも軽く蹴った。当然のように決まる。



途中経過

総合先端未来創世41-37新口



 4点差。ペナルティゴールでは追いつけない点差。

「次とるよ」

 沐阳が言った。僕はしばらく、彼の背中を眺めていた。



 試合が終わっていく。流れるように。

 勝ち試合とは、こうして閉じていくのだと知った。

 僅かな点差でも、残り時間が少なくなるほどに苦しくなる。無理して攻めて、ミスをする。相手ボールになれば焦りは増す。先輩たちは、落ち着いて時間を使っていた。

 これが、カツということなのか。

 最後の笛が鳴った。



試合終了

総合先端未来創世44-37新口


 

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